2010年8月号
イベント・レポート
産学連携学会 第8回大会
不透明な時代に一筋の光を求めて

公立はこだて未来大学がホスト役を務め、産学連携学会第8回大会が2010 年6 月24、25 の両日、函館市で開催された。全国から産学官連携のリーダー、現場のプレーヤー250 人以上が参加し、産学連携各分野における最前線を議論した。105 件の一般講演、16 件のポスターセッションに加え、北海道立総合研究機構の丹保憲仁理事長の「地域とグローバルの融合」と題する招待講演、「函館地域の産学官連携とグローバル化」をテーマとするシンポジウム、「大学連携リサーチ&ビジネスパークの形成に見る産学連携の発展方向-北海道地域を例に-」と題したオーガナイズドセッションが開催された。

過去最高の発表
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基調講演

明らかに世界の中での日本の立ち位置はこの数年で大きく変化し、さらに2009 年に政権交代等があり、産学官連携を取り巻く周囲の環境も大きく変わりつつある。丹保氏の講演は、こうした現状を長期的な視野と大局観を持って眺めることの必要性を示唆するものであった。今回、産学連携学会の地方大会としては過去最高の発表件数のエントリーがあったことは、この時代の中で普遍的な価値観として何を指標として考えるべきか、探し求めている人たちが増えていることを示しているのではないだろうか? 外部からの恣意(しい)が入り込むことなく発表を欲する人たちが自由に発表をして議論ができる“学会” というスタイルに改めて深い意義が感じられる。

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パネルディスカッション

本大会で発表された主だったトピックは産学連携システム(異セクター間の組織的連携の仕組み)、産業振興施策、学金連携、コーディネート手法、産学官連携における大学間連携、事業化事例、人材育成、技術移転手法等であり、極めて多岐にわたる。産学連携学会の大会は当初、コーディネートやリエゾン活動、産学官連携にかかわるイベント等の産学官連携の媒体となる活動を発表の中心に据えていたが、次第に具体的な産学官連携による事業化事例の発表が増えてきている。

この場合の発表者は、産学官連携を実務的にかかわる人たちが中心であり、単に大学のミッションとして産学官連携を通じて外部資金を得ることだけを目的としてとらえるのではなく、これを通じて実社会にどのようなインパクトを与えることができるかという意識の変化が感じられることは重要であろう。

課題は大学の中の認知

本大会での意義ある発表として幾つか挙げると、まず渡辺裕氏ら(山形大学)による「学金連携人材育成制度の評価」と加藤博良氏ら(山形大学)による「学金連携システム『米沢モデル』の構築」で山形大学の学金連携活動が紹介された。ここに1 つの持続性のある学金連携モデルとしての提案があり、その点が極めて興味深い。北村寿宏氏(島根大学)らの「産学連携による地域イノベーション創出」は、連番で島根大学、新潟大学、群馬大学における、中小企業と大学の連携プロジェクトによる事業化事例を報告するとともに、これらの事例の類型化を試みた意欲的なものであった。

また、荒磯恒久氏(北海道大学)らによる「国立大学法人内の広域TLO 機能について」は、北海道大学産学連携本部が北海道TLO 株式会社を引き継ぐ形で取り組んでいる広域TLO 活動の紹介と、国立大学法人法による活動の制限の問題について議論がなされた。大学知財の管理コストの圧縮やスケールメリットによる移転活動の効率化の観点から、しばしば大学間連携による知的財産活動の在り方の議論がなされるが、実務的には大きな法的な障壁がある実態が紹介された。

澤田芳郎氏(小樽商科大学)、金多隆氏(京都大学)による「産学連携の風俗産業モデル」では、産学官連携における各プレーヤーの階層構造を、風俗産業の仕組みに模して論じられたが、これを通じて、いまだ“産学官連携をコーディネートする立場”というものが一部の大学の中で十分に認知されていない実情が浮き彫りにされた。このことは極めて重要な問題提起であり、日本の大学で“産学官連携” が文化として根付く上で解決すべき問題であると言えよう。その一方、湯本長伯氏(九州大学)による「産学連携・知的財産学の定式化と社会的認知について」では、学問として“産学連携” が認知されることにより、大学の中で産学連携にかかわる人たちの立ち位置が明確化され、そのための教育システムだけでなく、これに従事する人たちのキャリアパスが確立されるという提案がなされた。

体系知化すべき時期
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交流会

TLO 法施行以来10 年以上の時間が経過し、産学連携学会の大会も既に8 回開催されている。大学を取り巻く環境は激変しているとは言え、そろそろ産学連携にかかわる事象の蓄積も十分に有り、その成果の評価をする上での時間的成熟もなされており、これらを、どう体系知化すべきか考慮すべき段階に入ってきたという言葉をもって本大会の総括としたい。


(伊藤 正実:特定非営利活動法人 産学連携学会長/群馬大学 教授)

産学連携学会 第8回大会
日時:2010 年6 月24 日(木)~ 25 日(金)
会場:ロワジールホテル函館( 北海道・函館市)
主催:特定非営利活動法人 産学連携学会