単発記事
産・学・官の連携をまちなかで進める
―からつ大学交流連携センター―
地域振興に大学の知的資源を活用する目的で平成21年9月に設立された佐賀県唐津市の「からつ大学交流連携センター」。産業振興、人材育成、まちづくりでどんな大学連携の取り組みを行っているのか。
従来より唐津市は大学の知的資源、人材の活用が単に教育にとどまらず、地域の産業に創造力と活力をもたらすものと考え、大学の研究施設、専門学校などの誘致を進めてきた。 こうした高等教育機関の誘致に加え、大学の知的資源を唐津市の地域振興、人材育成などに活用するため、佐賀大学、九州大学、早稲田大学大学院公共経営研究科などとそれぞれ相互協力協定を締結し、大学との連携を深めてきた。その結果、唐津市の大学連携事業は年間20件前後を数えるまでになった。
このような唐津市の大学連携の取り組みの中で、市民、地元企業・団体が、自らの課題を解決するためにもっと大学を利用できるように、平成21年9月に唐津市の中心市街地の一角に「からつ大学交流連携センター」が誕生した(図1)。大学の研究者らが、もっと唐津市のまちなかや農漁村地域に入り、研究・教育活動を進めるようになってほしいと考えており、市民などによる大学の活用のほか、本センターにその窓口、言い換えると、大学と地域との橋渡しの役割も期待した。 本センターは、佐賀県の「ふるさと雇用再生特別基金事業」を活用して唐津市が立ち上げた「大学連携地域活力創出事業」の業務を「株式会社産学連携機構九州」(九州大学の産学連携機関)が受託し、これを遂行するために同社の唐津オフィス部門として設立された。現在、センターの運営は、企画コーディネーター4名、広報・事務スタッフ2名の合計6名の体制で行っている(写真1)。
「からつ大学交流連携センター」は、「大学連携地域活力創出事業」の目的である「大学等高等教育機関の保有する知的財産および人材を積極的に活用することにより、唐津市の地場産業の活性化、地域課題の解決、生涯学習活動の振興等への支援業務を行い、地域活力の創出を図ること」を実現するために、主に次の5つの業務を展開している。
1.地域と大学を結ぶ相談窓口
本センターが、大学の知的資源の活用をベースとしてどのような取り組みをしてきたか、地域の産業振興、地域の人材育成、地域のまちづくり・地域振興の3つの観点から、主な事業を紹介する。 ●地域の産業振興……産学連携をテーマとしたセミナーの開催、九州大学伊都キャンパスの水素技術開発関連施設などの見学会の開催、大学と地場企業が共同開発した焼酎など産学連携で生み出された新製品開発の事例紹介など。 ●地域の人材育成……地元の商業高校の生徒を対象にしたインターネットによるセミナーの開催、シニアの方々を対象にしたファシリテータ養成講座、国が委託して実施する社会起業家養成講座などの唐津サテライトなど。 ●地域のまちづくり・地域振興……商店街活性化の方策を見いだすために、地元の高校生、九州大学大学院の学生、商店街住民がチームをつくり聞き取り調査などを実施。また、離島振興に取り組む島民グループに対し特産品開発などで大学や行政機関への相談、計画策定などの支援。 また、まちなかで学生の姿を見掛ける機会が少なかった唐津市で、学会、研究合宿が毎年開催されるようになった。大規模な学会としては、平成22年3月に開催された第1回のAIJ国際建築都市デザインワークショップ(写真2)が挙げられる。この学会の報告会は多くの市民も聴講し、歴史的景観を活かした居住環境モデルの提案などが行われた。
からつ大学交流連携センターの活動を通じて、地域によるまちづくり、生涯学習などの分野で、大学を活用するという意識が芽生えたのではないかと思う。 本センターに寄せられた窓口相談の件数は、平成21年度が52件、平成22年度は46件と年間50件近くあるが、相談の内容は研修会の講師の選定、地場企業の製品研究に関する事案、中学校の課外授業の講師の選定、商店街のイベントへの出演サークルのあっせんなど、多岐に及んでいる。
地域企業による技術開発、市民自らの手による効果的なまちづくりなどを進める中で、中立、公正な立場で、時には当事者の立場で、大学の先生や研究室に地域活性化、まちづくりへの参加を求める状況は、今後、増えてくるものと考える。協力協定を結んだ大学などの協力を仰ぎながら、試行錯誤し、大学、地域、行政にとって最適な産学官連携のかたちを探っていきたいと思う。 |