2011年11月号
特集1 - 光の産業創出
宇都宮大学オプティクス教育研究センター
研究開発・人材養成と地域産業振興
顔写真

谷田貝 豊彦 Profile
(やたがい・とよひこ)

宇都宮大学 オプティクス教育研究センター長、教授



キヤノン株式会社が提案し、設立に協力した宇都宮大学・オプティクス教育研究センターは光学を担う人材育成と光学研究を行っている。栃木県は光学機械器具・レンズ製造業の集積があり、産学で組織する「とちぎ光産業振興協議会」を中心に地域産業振興も目指している。

はじめに

わが国のハイテク産業の中核的存在である光学産業において、人材枯渇と新規先端オプティクス関連技術の枯渇が深刻化している。光学産業拠点が集積している北関東の中心に位置する宇都宮大学に対するキヤノン株式会社をはじめとする光学産業界からの強い要請と援助を受けて、宇都宮大学は平成 19 年4月1日に、学部研究科から独立したわが国唯一のオプティクス教育研究センターを設置し、光学機器開発(光学設計・加工・製作・評価全てを含む)技術を有した研究グループを組織し、先端的オプティクスの研究領域創成に挑戦している。

設立の目的を要約すると以下の2つである。

1.社会的な要請に応え、オプティクスの基礎的および基盤的な分野について体系的教育を徹底し、ものづくり基盤技術についても精通した人材の育成を行う。

2.わが国が世界に誇る光技術産業への寄与を果たすべく、産業界等と協働してオプティクスの分野を十分に修得した人材の育成を行い、かつ先端的な研究領域を創成することで、センターはオプティクスにおけるわが国随一の教育研究拠点形成を目指す。

当センターは大学直轄の組織であり、工学研究科と一体となって博士課程(前期・後期)の学生を受け入れ大学院教育を行っている。また、大学院工学研究科の部局化に伴う改組(平成 20 年度実施)により新設された学際先端システム学専攻内にオプティクスコースを開設し、実践的な技術力を持った人材を育成している。

現在、光学基礎領域に関する講義(光学特論Ⅰ:受講者 100 名)と実習(実験:受講者 60 名、CAD による設計:受講者 17 名)を行っており、指定科目単位修得者にはオプティクス教育指定科目修了証を授与している。オプティクスに関する基礎的研究成果をより実用的・汎用的な技術のレベルに到達させるための学内組織、教育体制、カリキュラムの骨格造りが進んでいる。

オプティクス教育研究センターの組織

研究組織は以下の3部門からなる。

・先端領域教育研究部門=幅広い分野と融合した先端的オプティクス研究分野の教育研究

・応用領域教育研究部門=オプティクスに関する実用と密接に関係した応用分野および光学機器や情報通信等の光学基盤分野の教育研究

・基礎領域教育研究部門=オプティクスに関する分野を学ぶ上で必須の基礎分野および情報処理や画像処理等のソフト系基盤分野の教育研究

現在、3部門合わせて 20 名の教官、客員教授2名、非常勤講師4名、 研究員1名が所属している。

図1 オプティクス教育研究センターの構成

図1 オプティクス教育研究センターの構成

教育プログラム

大学院前期課程の講義と実験、演習を行っている。主要な科目 10 単位を取得した者に対してはオプティクスコース修了証を授与する予定である。以下が主な科目である。

光学特論I:幾何光学、光学特論Ⅱ:波動光学、先端光学特論、特別講義I(光学設計特論)、光学基盤技術特論、光学素子特論、光伝送工学特論、光・電磁エネルギー工学特論、色彩工学特論、色彩画像工学特論、光・荷電粒子工学特論、可視化情報工学特論

また、海外の提携校(米国・アリゾナ大学光科学部、フィンランド・東フィンランド大学)をはじめとする幾つかの大学に毎年3名の学生を短期(2、3カ月)派遣する国際研修制度も実施している。

とちぎ光産業振興協議会と
光融合技術イノベーションセンター

栃木県は地域の光産業を振興する目的で、平成 20 年度にとちぎ光産業振興協議会を設立した。栃木県は光学機械器具・レンズ製造業の事業所数が全国4位、従業員数で全国2位の集積があるうえ、関連する大学や研究施設等があり、これらの連携を図ることにより工学関連産業のさらなる振興を目指している。

宇都宮大学が会長、キヤノン、富士フイルムオプティクス株式会社などが副会長、また株式会社栃木ニコンなど光学有力企業や大学が幹事をそれぞれ務めている。現在の会員数は92 機関である。計測、加工、機能材料の3分野で講演会の開催など活発な活動を続けている。

また、大学の基礎的研究成果を活用するための共同研究、応用製品化開発・実用化研究の実施、技術移転、高度技術者の育成などを行う組織として科学技術振興機構の地域産学官共同研究拠点整備事業による「光融合技術イノベーションセンター」(図2)を宇都宮大学に設立した。センター設立の目的は、光融合技術に関する実用化研究・共同研究の推進と高度技術者の養成である。また、研究分野の位置付けと個別研究課題を図3に示す。

図2 光融合技術イノベーションセンター

図2 光融合技術イノベーションセンター概要

図3 光融合技術イノベーションセンターの位置付けと研究分野

図3 光融合技術イノベーションセンターの位置付けと研究分野

研究プロジェクト

各部門ごとにそれぞれの教官が光学のさまざまな分野の研究を展開しているほか、学内公募研究や学内共同研究を展開している。

公募研究の採択テーマは以下のように、工学系の研究プロジェクトばかりでなく、農学系の光学応用研究まで幅広い分野をカバーしている。

①高強度短パルスレーザーによる高品位な粒子ビームの創成

②シリコン系光学薄膜の機能性波長フィルタへの応用研究

③ハイブリッド励起高輝度XUVレーザー光源の開発

④光による磁気モーメントの制御
―磁性原子ドープ酸化チタンの光・磁気伝導―

⑤生物の光利用性制御および生物光デバイス開発を目的とした光受容機構の解明

⑥時間軸・空間軸を包含した四次元リアルタイム長期連続イメージングによる体内時計のシステムダイナミクスおよび機能解析

このような、工学と農学の連携から、学内に農工連携の研究会組織が誕生しつつある。

まとめ

当センターは発足してまだ間もないが、新規のカリキュラムの構築や研究体制の整備、地域連携ネットワークの構築、産学共同研究の実施など多くの事業展開を図ってきた。特に、地域連携の活動に重点を置いて活動してきた。光融合技術イノベーションセンターの活動において、研究プロジェクトの中から幾つかの共同研究も生まれつつある。光学に興味を持つ学生の数も着実に増加し、光学産業と地域産業の活性化に今後とも貢献したい。