2005年6月号
連載3  - 実録・産学官連携
(財)大阪科学技術センターにおける産学官等連携への取り組み[1] -産学官等連携のOSTECモデル-
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八木 嘉博 Profile
(やぎ・よしひろ)

(財)大阪科学技術センター
技術・情報振興部 副部長



(財)大阪科学技術センター(OSTEC)における産学官等連携への取り組みについて、2回の連載で紹介することになった。第1回は、OSTECの紹介と産学官等連携のOSTECモデル、第2回は、個別事例の一つとしてテラ光情報基盤技術開発への取り組み事例を紹介することにしたい。

1. 産業界主導で生まれた(財)大阪科学技術センター(OSTEC)

(財)大阪科学技術センター(OSTEC:オステック)は、科学技術庁(当時)による財団法人認可を得て、1960年4月22日に設立された。今から45年前のことである。

OSTECの設立計画は、1956年に大阪商工会議所、大阪府、大阪市が設置した大阪経済振興連絡協議会で「大阪技術振興センター構想」が検討されたことにはじまる。当時の関西経済界においては、経済活性化のためには科学技術の推進が重要課題であるとの認識があり、このため、科学技術を振興する専門団体を設立する計画が検討されたわけである。

1959年に設立構想がまとまり、国への建議が行われたが、当時、東京、名古屋においても科学技術の振興を推進する財団の設立構想があり、科学技術庁の指導で3地域の財団構想が統合され、(財)日本科学技術振興財団として設立されることになった。OSTECは、同財団の関西地方本部として発足した。その後、1967年8月30日に分離独立し、関西地方本部は(財)大阪科学技術センターとして再発足した。さらに、OSTECは産業技術開発との関係性が深いため、1980年6月16日に通商産業省(当時)の認可も得ることとなった。現在は、文部科学省、経済産業省共管となっている。

OSTEC設立にあたっては、大中小企業、個人もあわせて約6億4,000万円の寄附が集まった。あわせて、科学技術庁、大阪府、大阪市から土地購入あるいはビル建設補助金を交付いただき、寄附金とあわせて、現在の地に大阪科学技術センタービルが建設された。

2. 設立当初から産学官等の連携に取り組む

OSTECは、構想段階から産業界主導で進められた背景があり、産学官等の協同による「科学技術の振興」と「関西産業発展の基盤の強化」が目的として掲げられている財団である。このため、設立当初から45年にわたり、産学官等の連携は、OSTECにとって、科学技術なり産業技術開発を推進するためのキーワードとなっている。

近年では、ライフサイエンス、ナノテクノロジー、エネルギー・環境、情報通信などの国における重点分野をはじめとする各種の委員会、研究会、フォーラム、共同研究プロジェクト等を編成し、産学官等が協力するかたちで活動を展開している。それらの諸活動の中で、年間約1,200名の学識経験者、約600社の企業群、文部科学省や経済産業省をはじめとする関係省庁、(独)科学技術振興機構や(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構などの独立行政法人等の協力・支援をいただき、OSTEC職員等が産学官等連携のコーディネートを推進している。

3. 産学官等連携によるアウトプット

産学官等の連携というのは、一つの方法論であり、その連携活動から何をアウトプット(目的、出口)するかが重要なことはいうまでもない。このアウトプットは、ケースバイケースで異なってくるものであるが、OSTECの場合、主に次のようなアウトプットを想定して事業展開を図っている。

〈産学官等連携によるアウトプット(目的・出口)〉
[1] 研究コミュニティ・人的ネットワーク形成
講演会、研究会、交流会等の諸活動を通じて、当該技術及び産業に関わる研究コミュニティと人的ネットワークの形成
[2] 情報交流
講演会、研究会等により、当該技術に関わる技術動向や社会ニーズの探索、ニーズとシーズのマッチングを促進
[3] 調査研究・提言
当該技術・産業に関わるビジョン、振興方策、拠点構想、シーズ・ニーズ探索等に関する調査研究及び提言の実施
[4] 研究開発プロジェクトの企画・運営・成果の創出
当該技術及び産業に関わる研究開発プロジェクトの企画立案、提案、研究開発成果、新技術の創出(必要に応じて知的財産権化)
[5] 新規事業(新製品・サービス等)の創出
シーズとニーズのマッチングによる新規事業(新製品・サービス等)の創出
[6] 科学教育
一般市民等に対する科学技術の理解増進、人材育成

4. 研究開発における産学官等連携のOSTECモデル

上記の中で、特に研究開発におけるOSTECの取り組みをモデル的に整理すると次のとおりとなる。

【企画段階】

この段階は、主に調査研究が中心となり、当該の技術分野や産業についての短期あるいは中長期の課題認識からはじまる。時代の流れや学界・産業界・行政機関の方向性などについて、広く産学官等からの意見を聴きながら、これからの目指すべき方向性・方針を検討し、コンセプト立案や計画づくりを進める。この段階は、OSTEC事務局レベルの取り組みとなる。実行するために何らかの推進組織を設置する必要があれば、研究会等を設置するための準備を進めることになる。

企画段階はもちろんのこと、次以降の段階でも重要なポイントとなるのは、キーパーソンの指導・助言である。

【研究会等先導的研究】

企画段階からこの段階に移行すると、産学官等のメンバー構成による研究会等を編成して活動を推進するかたちになる。キーパーソンのリーダーシップのもとに、その研究会が母体となって情報交流、調査研究、プロジェクト企画などを推進する。具体的な共同研究テーマの組み立てが進んだ場合は、プロジェクト展開へと進むことになる。

【プロジェクト展開】

共同研究プロジェクトは、主に国等の提案公募型制度の活用によって推進している。OSTECが中核機関や管理法人をつとめる制度の場合は、採択されるとプロジェクトの運営を行うとともに、次の波及的テーマの探索、実用化の促進などの取り組みを行う。プロジェクトの中から、次なるテーマ、課題が見いだされた場合は、次の企画段階へと至る。


以上は、一つのサイクルを描く進め方をモデル的に描いたもので、すべてのケースが必ずしもこのサイクルを描くと限るわけではない。ケースによっては、途中でストップするものもあれば、途中段階からスタートするものもあり、いくつかのバリエーションがある。

OSTECは、産業界が中心となって学官の協力、支援によって生み出された組織であり、産学官等の連携は、ごく自然な手法となっている。