2005年7月号
巻頭対談
地域クラスターの創出へ -進む府省間の政策
連携-
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田口 康 Profile
(たぐち・やすし)

文部科学省 科学技術・学術政策局
地域科学技術振興室長


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塚本 芳昭 Profile
(つかもと・よしあき)

経済産業省 地域経済産業グループ
産業クラスター計画推進室長



なぜ今、クラスター政策なのか

2001年に経済産業省の「産業クラスター計画」が、2002年に文部科学省から「知的クラスター創成事業」が開始され、つい最近、両政策の中間的な報告書が発表されました*1。まず始めに,21世紀の初頭に相次いでこの2つの政策が導入されたことの経緯と意義について、改めてポイントを整理していただけますか。

塚本 産業クラスター計画の狙いをひとことで言えば、産・学・官の連携をベースとして、地方に新しい事業、新しい産業が生まれるような環境づくり、イノベーションのための環境づくりを支援し、新たな産業集積を起こしていこうということです。

戦後高度経済成長以降の地域産業政策を振り返れば、1970年代から1990年代半ばまでは一貫して「3大都市圏から地方圏への産業の分散化」という観点で、さまざまな施策を展開してきました。ところが1990年代に入って、製造業の海外展開による産業の空洞化が深刻化し、産業集積の新たな活性化策が必要とされるようになりました。すでに一部の地域では1980年代後半から模索されていた「地域経済の内発的発展」を重視した産業振興支援へと、中央の政策も抜本的な路線転換が図られてきました。従来の都市圏から工業を持ってくるという発想から、地域の資源を生かすために産学官にわたるネットワークを形成し、イノベーション環境を整備するという考え方へ変わってきたわけです。

この新たな流れの延長線上に、産業クラスター計画が登場してきたわけです(図1参照)。現在、経済産業省の全国9ブロックの経済産業局のもとで、19のプロジェクトが推進されています。19プロジェクトのほとんどが、地域ブロック全体にまたがる広域でのネットワーク形成を進めています。

別の視点からみれば、1970年代、80年代は、生活者ニーズの充足のために、より良いものをより安く作るというのが、工業化への時代的要請でした。しかし、生活者のニーズが多様化し高度化するなかで、むしろプロダクト・イノベーションによって、今までにないものを創出するということが、産業の競争力を高めるうえでより重要になっています。そこで求められるインフラも、大学や研究機関、人材など、よりソフト的なものが重視されます。やはり21世紀のいわゆる知識社会に対応するための、新しい社会的インフラの再構築というのが日本の大きな課題であり、それを担っているのが、まさに文部科学省の知的クラスター創成事業と、我々経済産業省の産業クラスター計画だといえるのではないでしょうか。

図1

図1 国内産業政策の変遷

田口 おっしゃる通りだと思います。

我々文部科学省の知的クラスター創成事業は、研究成果の社会への還元に対する要請が高まるなかで、科学技術政策として何ができるかという議論の中から生まれてきました。そもそもは平成12年に、旧科学技術庁の「研究成果の社会還元施策検討会」の中で、初めて“クラスター”という言葉が出てきました。米国のシリコンバレーをはじめ、研究開発の成果が波及して、地域の産業集積や雇用創出に大きく貢献しているという事例が世界的に注目を集めており、我々もいろいろ勉強しながら、施策を固めました。平成13年いっぱいかけて下準備をし、平成14年からスタートさせたという経緯です。全国の55地域の研究拠点の中から、何段階かの可能性調査を重ねて選定した18 地域のプロジェクトに、1件あたり年間5億円という大きな研究資金を集中投下しています。優れた科学技術のシーズを育てることを主眼としながら、その一方で、研究開発プロセスでの地域産業への波及効果を強く意識しています(図2参照)。

知的クラスター創成事業は、第2期科学技術基本計画*2の地域科学技術振興施策として位置づけられていますが、地域科学技術振興は、第1期基本計画に比べ、第2期基本計画では、「国際競争力の強化」と「産学官連携による新事業創出」というコンセプトが、強く打ち出されています。平成13年度からの第2期基本計画の検討にあたって、バブル崩壊後の日本の産業競争力に科学技術をいかに結びつけていくかということが、大きな課題として浮上してきたからです。第1期と第2期を読み比べていただければ、この違いはかなりクリアに出ていると思います。

同じ文部科学省の21世紀COEプログラム*3などとは違って、大学に直接お金を出しているわけではないという点が、一番の特徴でしょう。大学がやりたいことというよりは、地域として大学にやってほしいことにお金が出るというスキームになっています。

図2

図2 知的クラスター創成事業 地域選定の評価基準

府省間アライアンスで地域クラスターを全面支援する

知的クラスター創成事業の構想が出てきた当初から、両省間の協力体制を取っていこうという話がありました。担当部局間の連絡体制といったレベルの話だけでなく、具体的な政策レベルの連携であるとか、各地域での連携などはどのように進められてきているのでしょうか。

田口 そもそも産業クラスター計画と知的クラスター創成事業とでは、クラスター形成へのアプローチの方向性がまったく逆なんです。知的クラスターは、特定の研究拠点で密度の濃い連携の部分を創出して、それを徐々に周囲に広げていくというやり方です。産業クラスターの方は、先ほど塚本さんが言われたように、むしろ広い地域圏でのネットワーク形成に主眼を置いて競争的資金を投入し、ネットワークのあちらこちらで、次第に密度の濃い部分が創出されていくというアプローチですよね。

この両政策の基本的な違いを互いに補完しあう、活用しあうという面で、アライアンスを取ることの意義と必要性があります。例えば、知的クラスターの研究が進んでいくプロセスで、市場に何かを出していこうという機会が折々にあるわけです。そこに、産業クラスターのネットワークが大変に役立つわけです。

塚本 クラスターを形成しようという点では、両者の意図は完全に重なっています。産業クラスターの側からの期待としては、大学を中心に良いシーズが生まれてこないと、いくらネットワーク形成だけを一生懸命やってもだめで、やはり良い芽を育てることが必要です。これまで何年か一緒にやってみて、やはり知的クラスターから活発に研究成果が出ることが、産業クラスターで良い成果を生んでいくうえでは不可欠だと強く感じています。

そこでよく認識しておきたいのは、クラスター形成というのは並大抵の取り組みではない、そう簡単なことではないということです。1省庁の施策だけでどうなるという話では到底ありません。経済産業省、文部科学省だけではなくて、農林水産省、厚生労働省へと、政府全体の連携へ、国を挙げた取り組みへと広げていこうという流れが出てきています。一種のクラスター・ムーブメントですね。その意味で、現在の我々の産業クラスターと知的クラスターの連携というのは、府省連携のモデル・ケースだと捉えています。こうした取り組みが、他の省庁にもどんどん広がっていくことが、日本の高度な変革を成し遂げるうえでは、非常に重要です。

写真1

「壁があったらそれを壊しにいく。それが仕事か
     な、とこの1年間くらいは考えています」

田口 そう、日本全体として何が必要かという大きなスキームの中で、我々ができるところから始めているということですね。関係省庁の連絡会議もできましたし、5月には徳島で、関係各省庁の共催による地域科学技術振興会議という全国会議がありました。

塚本 最初は、連携だ、ネットワークだといっても、反応があまりなかったような地域でも、マクロな方向はこっちだと旗を揚げてやることで、それなりに進んできたなという感触はあります。

田口 ただし、今も塚本さんが言われたように、クラスター形成については、中央政府のマクロな政策がどれほど効果的なアクションが取れるかというと、これは難しいところだと感じています。例えば、東京で経済産業省と文部科学省が手を組んで何かやろうと言ったところで、地域におけるクラスターの形成というのは、それぞれの地域ごとでまったく異なるアプローチが必要とされてくる。こっちの地域でうまくいったことが、あっちの地域でも通用するかというと、そうはいかない。これがクラスターの難しいところです。

そもそもマクロでは動かないところをミクロで何とかしようというところで、クラスターの施策が出てきたわけですから、マクロな政策の枠組みの中だけでああだこうだ言っても始まらない。今までの中央省庁の施策の感覚で、クラスターを見てはいけないんです。クラスターにしても産学官連携にしても、マクロな施策はおおかた出揃ったし、しかもこれらの施策の枠組みというのは、最初からかなりふわっとした柔軟な作り込みがしてある。だからマクロはもう動かさないで、ミクロを細かに見ていって、ケースバイケースの活用策をどんどん試行して、実践から政策を動かしていくような積み重ねをしていくことが大事です。ミクロが抱えている障壁を、マクロの側で取り払ってやること、これが今、マクロの政策に求められている姿勢だと思うんですね。「壁があったらそれを壊しにいく」。それが仕事かな、とこの1年間くらいは考えています。

塚本 地域の側で必要とされるものを察知して、必要な施策を整えておくことが、政府の役割でしょう。あとは、地域がそれぞれの創意工夫で、中央の施策をいかにうまく組み合わせて活用していってくれるかがポイントです。

地域の側での政策コーディネートが求められている

地域の現場では、具体的にどのような政策連携が取られていくべきなのでしょうか。

田口 例えば、関西圏では地域をあげてバイオに取り組んでいますが、さまざまな取り組みがだんだん一体化して絡み合ってきていますね。近畿バイオ会議(NPO法人近畿バイオインダストリー振興会議*4)の理事長、清水當尚さんのような、産業クラスターも知的クラスターも、すべてまとめてコーディネートできるようなキーパーソンもおられる。そうした地域では中央がどうしたとか関係なく、地域の側で勝手にくっついてくれていっています。関西地域などは、科学技術政策的にみても、また産業という面からみても、国際競争力を持った、世界に冠たるバイオ・クラスター地域になれる可能性がある。というか、なってもらわないと困るわけです。

塚本 浜松地域も、知的クラスター創成事業の「浜松地域オプトロニクスクラスター構想」、産業クラスター事業の「三遠南信バイタライゼーション」など、柴田義文さん*5が、全部まとめてコーディネート役を担っている。地域の方で勝手に動いていくということ、動ける力をつけていくこと、それがとても大事ですね。

田口 浜松もいろいろな施策を活用して、自分たちなりにうまく使いこなしていますよね。

先ほども言いましたように、そもそもの施策の枠組みとして、知的クラスターと地方公共団体との結びつきというのはとても強いんです。知的クラスターの場合、基本的には地方公共団体の首長を代表者として提案を出してもらっています。地方公共団体としてのさまざまな施策のスキームできちんとサポートしてもらうことが、とても重要になります。研究のテーマ、参加企業、研究成果をどう経済や産業に繋げていくかの見通しなどを念頭において、きっちり事業計画を出してもらっています。

これに対して産業クラスターの方は、経済産業省の地方局の主導で動いている分、個別の地方公共団体との連携というのが、知的クラスターに比べると弱いところがある。だから、産業クラスター計画と地方公共団体との連携がうまく進むと、産業クラスターと知的クラスターとの連携も自ずとうまく進むという、そういう側面があると思います。知的クラスターが媒介役となって、経済産業局と地方公共団体の連携を進めていくということも、積極的に取り組んでいかないといけないということで、地域クラスター推進協議会を発足して、合同成果発表会などを行う地域も増えてきました(図3参照)。

図2

図3 知的クラスター創成事業と産業クラスター計画との連携一覧表

塚本 確かに、産業クラスター計画と地方自治体との連動をどうとっていくかは、現在の課題です。今まさに、地方自治体が主導してきた地域プラットフォーム事業と、地方の経済産業局の産業クラスター計画との連動化のための資金も予算化し、平成17年度には本格的にそこに取り組んでいきたいと思っています。

田口 我々の課題としては、塚本さんに先ほど「知的クラスターで強いシーズが出てきてくれないと……」と言われましたが、それはもちろん知的クラスターだけではなくて、科学研究費補助金*6、21世紀COEなど、文部科学省が大学に投入しているさまざまな施策・資金が「強いシーズ」へ結びついていく可能性を持っている。現段階では、大学の中に眠っていて、使えるか使えないかもわからないような資源を、とにもかくにも外に引っ張り出すことも大切です。

産学官連携の促進という意味では、産業クラスターも知的クラスターも、大学が積極的に地域貢献、産学官連携に入っていく動機づけになっていることにとても意義があるわけです。岩手大学のように、大学の先生が率先して地域連携やネットワーク形成の旗振り役を果たしている地域は、本当に例外中の例外です。大学の先生も、お金が来て動くという側面もありますからね。そこの動機づけをうまく図っていくことが課題としてあります。

国立大学は昨年から法人化して、対外的な活動の仕組みが大きく変わりました。知的クラスターは、大学がそこの仕組みをどう変えていくべきか、特許や共同研究の契約関係はどうしたらいいのかという議論と実践の試金石の役割も果たしています。もっと有り体にいえば、外との付き合い方の訓練の場になっていると思います。

地域間連携によるグローバルな競争力を確保する

地域クラスターという場合、どうしても地域の中での話になりがちです。しかし、アカデミックなネットワークやコミュニティは地域や国を超えて形成されていますし、産業もグローバル化していることを考えると、クラスターの議論にも、地域を超えた戦略的連携の視点が欠かせないと思うのですが。

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「海外との交流を足がかかりに、グローバル市場
     に打って出ていくぞという気構えがないとだめで
     すね」

塚本 クラスター間交流というのは、非常に重要です。これも活発にやり始めています。例えば、知的クラスターのナノ関連のプロジェクトをやっている人たちが全国から集まって、ナノ・イニシアティブ*7という組織が結成されており、平成15年から毎年交流会議が開催されています。ここに産業クラスター計画の、ものづくり関連のプロジェクトの人たちも加わります。

また、TAMA産業クラスター(首都圏西部地域・地域産業活性化プロジェクト)では、イタリアのヴェネト州との提携を始めています*8。北海道と近畿のバイオが交流する、あるいは、国内の各地域が、中国や韓国、欧米の地域と連携するといったことは、これからますます活発になるでしょう。

海外との交流では、将来的にどうクラスター活動に参加している企業のビジネスを伸ばしていくかという面まで考えていかないといけません。交流のための交流で終わってしまっては意味がありません。交流を足がかりに、グローバル市場に打って出ていくぞという気構えがないとだめですね。

田口 国内でのクラスター間交流は、それがクラスターとクラスターの実質的なリンケージにまでつながるかということとは別問題として、とても大切です。

地域の国際交流について言えば、今までは仲良し交流に終わってしまったが、今は1歩進んで協力が必要だし、それができる時代です。そもそもなぜクラスターかといえば、地域が国際競争力をつけることが重要な目的なわけですから、世界に出ていくことは必然でしょう。なぜこれまで地域のグローバル化が進んでこなかったかというと、やはりそれに堪えうるシステムが地域になかったということです。この5月に発表した知的クラスター創成事業の中間評価では、例えば、ナノテクのところをみると、パフォーマンスはいいんですが、海外特許が弱い。国際化という言葉はあまり好きではないのですが、やはりこれからは、地域の科学技術政策という面からも、積極的にグローバル化しないといけないでしょう。

塚本 やはり、経済界全体を挙げて、地域の経済団体が率先して世界に目を向け、グローバル化を志向していただくことが大事でしょう。まだ地域の経済界ごとに、取り組みの温度差があると感じています。

その一方で、地域ごとのもてる資源の格差というのも、厳然としてあります。日本の場合には特に、東京一極集中で、地方の経済力はやはりドイツなどに比べて非常に弱い。資源の少ないなりに頑張っている地域が、今後どう発展していきうるのでしょうか。知的クラスターのようにお金をどこかに集中投下していく必要があるとしても、地域にはお金も乏しくリスクも取りにくい。国際競争力を取りに行くといっても、日本の地方はシビアな条件下にあると思うのですが。

塚本 確かにそういう面では、我々も迷っている面もあるんです。産業クラスター計画が4年経ったところで、一度原点に立ち戻って、地域の資源、人材、ポテンシャルなど、地域の特性をしっかりと見直そう、見きわめようということで、改めて分析に取り組んでいるところです。まだ大まかでもいいから、ここで一度、将来的な展開を議論してみる。その上で、次のクラスター計画の施策を展開していこうということです。だからこそ、田口さんにも産業クラスター研究会に入っていただき、また私も知的クラスターの方の評価委員会(地域科学技術施策推進委員会専門委員)に入れていただいて、お互いに一緒になって議論しています。地方局の方でも、地方公共団体や経済団体と一緒になって、再度議論し直しています。例えば、東北の中でも、岩手はこうで、山形はこうだろう、で、相互にどうやっていけばいいかとか、今年から来年にかけて、もう一度きっちり見直していきたい。そのための方向性を産業クラスター研究会の報告書で打ち出して、5月の終わりに発表しました。

田口 今回の検討の一環で、文部科学省だけでなく各府省の大型の研究助成資金で、いったいどこで何をやっているのかをすべて一覧表にしてみるなど、トータルに全体を見渡す作業をここできっちりやってみるつもりです。

もう1つの重要な課題は、地域にクラスター政策のマネジメントやコーディネートができる人材を育てるということです。例えば、知的クラスターで生まれた研究成果を、いかに産業クラスターにつなげるか、そこのバトンタッチをうまく運ばせるには、そういう能力を持ったコーディネータが必要です。

塚本 人の重要性は痛切に感じています。これから地域クラスターを本格的に発展させていくために、クラスター・マネジャー的な人をきっちり配置していく必要があると考えています。

田口 2004年、各自治体にアンケート調査を取ったら、やはりそういう人材がとても不足していること、さらには、仮にそういう人がいたとしても、自由に動ける環境があるかどうかという問題が危惧されていました。こっちとそっちをくっつけようと思っても、伝統的な組織の壁はものすごく厚いですからね。となれば、やはり、あっちこっちに気が利いた人が配置されていて、その人たちが相互に連携して人脈をつくって、そういう壁を崩していくことが必要です。

最後に知的クラスター施策、産業クラスター施策の中間評価について概要をご説明ください。

田口 平成14年に開始した12地域について、平成16年度に中間評価を行いました。単なるこれまでの成果に対する評価ではなく、これまでのやり方で進めてよいか、軌道修正は必要ないかという、今後の展開のための評価という位置づけです。

知的クラスターでは、当事者がセルフチェックをかけること、それができるシステムを自ら構築することを重視しています。自己評価をきちんとしないところは、お金を減らすなり、翌年以降の資源配分を変えますと宣言しています。結果からみれば、それぞれの地域では、かなりきちんとチェック&レビューをかけて、アプローチの見直し、改善を行っています。そうはいっても、どうしても自分に甘くなりがちですから、国の評価委員会の方でさらに評価を行い、それぞれの問題点や課題を指摘しました。各地域では、中間評価の結果を踏まえた事業計画や事業推進体制の見直しが行われています。

塚本 産業クラスターの方は、前述したように全体として大まかな施策ですので、中間評価についての厳密な取り決めはしていません。我々の狙いは、イノベーション環境を構築することですから、個別の事業に対する評価うんぬんという話ではないのです。ただ、計画がスタートしてこの3月で4年ですが、昨年秋に、全19プロジェクトに参加している民間企業5,800社と220大学に対し、いわば顧客満足度調査とでもいうべきアンケートを実施しました。

2,400社から回答がありました。おおまかですが、1)施策情報を得やすくなった、2)業界動向がつかみやすくなった、3)大学との交流機会が増えた、4)新事業創出につながる情報を得る機会が拡大した、5)事業のパートナーとの人脈が広がったなど、ネットワーク形成という面では、全回答者の40%から70%程度の企業が何らかの前向きな評価をしてくれています。

すべての企業が研究開発プロジェクトに参加しているわけではないですが、研究開発への取り組みが進んだという企業は35%くらい、既存企業の人脈が拡大した、必要とする技術が獲得できたが28-29%、新製品が開発できたが27%という回答を得ました。3割前後の企業が、研究開発の面で一定の効果をみていると判断しています。

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司会進行・構成/田柳恵美子(本誌編集委員)

このほか、商社や金融機関との交流機会が増えたという企業が全体の20%弱です。人材を得やすくなったが15%程度と事業化に密接に関係する事項については、相対的に低い回答でした。事業化に対する取り組みがまだ不十分だということを示しており、これがまさにこれからの課題だと認識しております。

これらの数字は19プロジェクト全体をならした結果ですが、個別のプロジェクトごとの評価に落としたものも、5月に公表しています。初期の成果としてはまあまあかなと考えています。また、クラスター参加企業の当期利益と従業員数を見てみますと、他企業に比べてはるかに高い。言い換えると相対的に強い企業、ポテンシャルの高い企業が、自発的に参加しているのだろうと思います。

これからの展開に期待しています。ありがとうございました。

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図4 クラスター政策の連携促進に向けた取り組み

*1平成16年度知的クラスター創成事業中間評価報告書(平成17年3月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/03/05032408.htm
産業クラスター研究会報告書(平成17年5月)
http://www.meti.go.jp/policy /local_economy/downloadfiles /
Business_environment_prom_div/CLUSTER.html

*2科学技術基本計画(第1期、第2期)
http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/kihon/main5_a4.htm

*321世紀COEプログラム
http://www.jsps.go.jp/j-21coe/

*4NPO法人近畿バイオインダストリー振興会議
http://kinkibio.com/

*5柴田 義文氏
浜松地域知的クラスター本部 事業総括、産業クラスター計画産業活性化プロジェクト(三遠南信地域)三遠南信バイタライゼーション協議会会長/本誌発行推進委員

*6科学研究費補助金(科研費)
http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/index.html

*7ナノ・イニシアティブ交流会議
http://www.nanonet.go.jp/japanese/mailmag/2003/002d.html

*8
産学官連携ジャーナル2005年5月号、古川勇二氏へのインタビュー記事参照。