2005年7月号
連載2  - 実録・産学官連携
(財)大阪科学技術センターにおける産学官等連携への取り組み[2]
-光情報技術の基盤技術の創出-
顔写真

北村 佐津木 Profile
(きたむら・さつき)

(財)大阪科学技術センター
技術・情報振興部 課長



前号では、(財)大阪科学技術センター(以下、OSTEC)における産学官連携のモデルを紹介した。本稿では、「研究会等先導的研究」から「プロジェクト展開」に至った、20年間にわたる光情報技術分野における活動の事例を紹介する。

先端技術調査研究会 —材料・デバイス調査から新システムの提案へ—

表 (財)大阪科学技術センターにおける光情
     報システム研究活動のあゆみ

表

OSTECにおける光情報技術分野の活動のあゆみを表に示す。スタートは1986年で、(財)産業研究所の委託を受けて実施した「近畿地域における共同技術開発調査」で選択された33課題の中に「オプトエレクトロニクス材料」が取り上げられており、これについて産学官連携体制の調査研究会を設置し、調査研究活動を実施することになった。当時は、光情報通信網の基幹ネットワークが整備されたばかりで、中央の動きとはやや趣を変え、関西の大学および産業界のポテンシャルを生かして、光を用いた情報処理技術に焦点をあてて調査研究を行うことになった。研究会は材料開発のニーズ探索から始まり、その後、高機能光デバイス、知的光情報システムと研究会の名称、構成メンバーおよび調査対象を少しずつ変化させながら、活動を継続した。その方法も研究者アンケートや講演会から、既存システムの共同試作実験、トップデータの収集と技術マップの作成、まったく新しい情報システムの共同提案へと独自技術の開発に向かって順に深化させていった。この間、一部日本自転車振興会の補助金を活用したが、大半の活動費は参加企業の協賛金(平均20社)で賄い、企業ニーズに基づいた活動内容を実施した。また、当初は関西の企業が中心であったが、次第に関東方面の企業も参加し、幅広い産学官の研究者ネットワークを構築することができた。この活動成果として、3つの新しい光情報システムの実現を目指す共同研究プロジェクトの提案書を作成した(1996年5月)。

地域共同研究プロジェクトの実施と技術移転活動

当時科学技術庁では、1997年からの新施策として新技術事業団と共同で、地域における研究ポテンシャルを活用した独自技術の開発により、新産業・新技術を創出し、わが国の産業構造を転換するための施策「地域結集型共同研究事業*1」の実施について準備が進められており、大阪府でも応募のための準備が開始された。OSTECの研究会においても前述の提案内容をブラッシュアップし、大阪府に提案を行った。これらをベースに申請書がまとめられ、初年度の実施地域として採択され、OSTECがその中核機関の指定を受けた(研究課題「テラ光情報基盤技術開発」)。

事業開始後も研究会活動を継続し、事業推進とともに研究者ネットワークをさらに発展させ、事業に参加できない企業研究者との恒常的な情報交流や同事業の支援を行った。同事業は、光を用いて大容量超高速の情報処理・伝送が可能となる新しいシステムを設計・試作し、光情報システムの可能性を実証し、その過程で開発された光学素子作製技術やシステム技術の要素技術を、企業に技術移転する狙いで進められた。5年間の事業終了後は、これらの要素技術や応用技術について、企業からの共同研究要望の高いテーマについて、「都市エリア産学官連携促進事業(大阪/和泉エリア)*2」や研究成果活用プラザ大阪において、技術移転と事業化を目指した共同開発を継続した。共同研究プロジェクトでは、研究成果の学会発表や光産業分野の展示会への出展など情報発信を積極的に行ったため、関心を示す企業が増加し、これらの企業と研究者の技術交流の場や試作品提供による技術移転の場として研究会活動を行った。さらにプロジェクト終了後も企業の希望により、共同研究の継続を研究会活動の一環として実施し、地域における技術移転活動の拠点となっている。

地域産業の活性化に向けて

このように、OSTECの光技術分野の研究会は、大学研究者の知恵を企業が活用する場として、また大学研究者は、企業ニーズや事業化開発の考え方を学ぶ場として、双方に活用されてきた。また、共同研究プロジェクトを契機に当該技術分野における情報発信拠点となりつつある。

現在、光情報システム分野は、デジタルカメラ、DVD、薄型ディスプレイが光産業の牽引役となっているが、光情報システムは、まだまだ大きな可能性を秘めている。また、現在の社会が必要としている高齢化社会や安全・安心な社会の実現のための新技術や個人の要求を満たす商品を開発するには、ベンチャーなどの小回りの利く企業を活用した具体的システム試作・開示による応用商品の開発や、これを支える異業種間企業ネットワークの形成が必要である。今後関西地域を中心に、今まで蓄積した光情報技術分野の研究成果や研究者ネットワークをさらに発展させ、このような企業ネットワークの形成の推進や中小企業の活性化に、OSTECの産学官の連携活動が寄与できるよう努力を続けていきたい。

*1地域結集型共同研究事業
地域(都道府県や政令指定都市)において、国が定めた8つの重点研究領域(ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー、材料、エネルギー、製造技術、社会基盤・フロンティア)の中から、地域が目指す特定の研究開発に向け地域の研究ポテンシャル(R&D型企業、大学、公設試験研究機関)が結集して共同研究を行うことにより、新技術・新産業の創出に資することを目的とするもの。
参考URL
http://www.jst.go.jp/chiiki/c-r/c-rindex.htm

*2都市エリア産学官連携促進事業(大阪/和泉エリア)
平成14年度の成果育成型として採択され、(財)大阪科学技術センター(OSTEC)が中核機関となって3年にわたり行われた文部科学省系の共同研究開発の事業。堺市、和泉市地域を中心に、 ナノテク・材料、情報通信(ナノ構造フォトニクス)について行われた。
http://www.ostec.or.jp/tec/area/index2.html
都市エリア産学官連携促進事業については、文部科学省のサイトを参照。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/15/06/03060502/001.htm