2005年10月号
ちょっと一言
産学共同研究と企業の社会的責任

産学共同研究において、このところ、大学側から企業に対する不満が高まってきている。

いわゆる不実施補償では、通信・電気・自動車分野の有力企業が不実施補償を頑なに拒み、共同研究契約の締結が難航している状況にあるという(Right Now 2005年10月号38頁)。その背景には、企業団体の報告書(日本知的財産協会ライセンス委員会「企業と大学の共有特許に関する契約条件についての考え方の一例」)があるようだ。京都大学の事例では、大手自動車企業から、共同研究成果について、「特許の実施料を支払うつもりはない。だめなら共同研究から一切手を引く」と言われて、結局、大学側が折れたという(日経新聞2005.7.19,1面)。大学が、外部資金の導入を優先し、大学本来の使命である「学問の自由」「研究の独立」を放棄することがあってはならない。共同研究成果ではないが、大学の大画面表示素子特許を企業が侵害して製品化しているとして、大学が弁護士と対応を検討しているという事例も報道されている(日経新聞2005.9.5,21面)。

9月に入って、千葉大学O教授が大手製薬企業A社を相手取って、臓器移植拒絶反応抑制剤FK506の発明者であることの確認を求める訴訟を提起した(朝日新聞2005.9.1、特許ニュースNo.11615)。FK506は、肝移植、心移植、肺移植、腎移植などの臓器移植に用いられ、2004年度の売上高が1千億円以上、世界各国で使用されている大型医薬であり、企業は、研究の主要部を担ったO教授を発明者とせず、企業の研究者5名を発明者として特許を取得し、臓器移植用途等について特許権の存続期間の延長登録を受けているという。O教授は、物質自体は企業が探索したものの、その臓器移植拒絶反応抑制効果を理論的に予測し、実験を行うことを提案し、自ら動物実験等を行って拒絶反応抑制効果を実証したので、拒絶反応抑制剤の発明者であると主張し、発明者であることの確認を求める訴訟を提起したものである。企業側は、出訴前の協議の中で、O教授には様々な協力をいただいたが発明の完成には関与がなかった、と反論しているという。約半年間にわたって企業と協議を続けたが、誠実な対応がみられなかったので訴訟に踏み切ったとO教授は語っている。

日本の有力企業は、これまで、共同研究のパートナーや委託研究先の国内大学を、企業の下請け、便利屋のように扱ってきたきらいがある。企業の談合や不祥事が続発し、企業のコンプライアンス(法令遵守)と社会的責任が問われているが、産学連携においても、企業は、大学を尊重し、社会的責任を誠実に果たすべきではないか。

(大学教授)