2005年11月号
編集後記

かつての上司から「時代の波頭をとらえろ」と繰り返し言われたことを覚えています。大学にとって現行の非常に大きな産学官連携の波は、1998年の大学技術移転促進法(いわゆるTLO法)がきっかけだったと考えています。最初の承認TLOから近く丸7年が経過します。5カ年度にわたる文部科学省の知的財産本部整備事業も折り返し点に差し掛かりました。多くの大学に知的財産を取り扱う組織が設置され、産学連携ポリシーを始めとする学内規程が整備されました。大学にとっての産学官連携は「システムとルール」をつくる第1ステージから「マネジメントとガバナンス」を追求する第2ステージに入ったと受け止めています。柔軟なマネジメントと強固なガバナンスの「波頭」を本ジャーナルで発信できれば幸いです。

(伊藤委員)

「人は石垣、人は城、情けは味方、あだは敵」とは、かの武田節の一節である。戦国最強といわれた軍略家、武田信玄をもってしても、「人」がいかに重要な資源であったかを物語っていると思う。時代は変わって、今や「科学技術政策(学)」が時の脚光を浴びつつあるが、私は、「政策学(Policy Study)」とは、元来、「戦略(Strategy)」を研究するための学問であり、その意味で信玄の甲州軍学に通じるものがあると考えている。信玄の時代から変わらず「人材(Human Resource)」は戦略の要(かなめ)である。「古きよき慣習」に頑なに固執したり、逆に、「舶来(海外)」の制度・慣行を盲追するだけの策では、群雄割拠、切磋琢磨の時代は今も昔も生き残ることはできないだろう。今回触れたコーオプ型インターンシップに限らず、人材戦略は、今後ますますクリエイティブな発想が必要となるだろう。その意味で、有望な科学技術系人材をやみくもに「冷たい競争」に追い込むだけでなく、日本全体として、よりポジティブな目標に向けて「成長」させていく戦略を考えることこそが、「情けは味方、あだは敵」という信玄の極意に少しでも近づく道ではなかろうか、と思いをはせる今日この頃である。

(松澤委員)

わが国の国際競争力を高め確保する上で、産学連携を通して育成される人材には大いに期待されるものがありましょう。各研究分野や企業活動においても、イノベーションでリーダーシップを発揮できる専門性とモチベーションに富んだ中核的役割を果たす人材の育成は重要です。当ジャーナルは、今後この主題に注目した記事を随時掲載していく方針です。今月号はその第一報をお届けします。よく言われる産と学のwin-win の連携を実践するために官に期待する支援項目に関する記事を本号に掲載しています。産学連携では産と学の間のコミュニケーションは必須ですが、そのための1つの方策としたコンソーシアムの活動を述べている記事を掲載しています。スムーズで、発展的な産学官連携のためのヒントを今月号の記事に見つけることができると思います。

(加藤編集長)