2006年2月号
巻頭座談会
地域から日本へ、世界へ-産学連携の展開
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風間 善樹 Profile
(かざま・ぜんじゅ)

産業活性化研究所 所長



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清水 則一 Profile
(しみず・のりかず)

山口大学 地域共同研究開発
センター センター長


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吉国 信雄 Profile
(よしくに・のぶお)

金沢大学 知的財産本部長・共同
研究センター 教授/立教・金沢
大学プロジェクト 総括マネージャー


地方では、産学連携が活発に進められ、またそれが地域の活性化につながっています。本ジャーナルでは地域に焦点を当てた記事を今後も掲載していく予定です。本日のテーマは「産学連携、地域から見た産学連携の現状-今、何が欠けているか、産学連携は地域を活性化しているか」です。本日ご出席の3人の方々に現状の問題点や、今後の展望等について伺いたいと思います。本日の出席者の方々の紹介をさせていただきます。東の岩手大学、西の山口大学と言われるように地方大学として産学連携にかなり熱心に取り組んでおられる山口大学地域共同研究開発センター長の清水さん、最近は地元への貢献ということで、地域の活性化に熱心に取り組まれている金沢大学知的財産本部長の吉国さん、山梨TLOをつくって活発に活動され、また以前、東京エレクトロンが熊本に事業所を立ち上げるときに地元の企業との連携に奔走をされたことで著名な風間さんにご出席をお願いいたしました。まずは清水さんからお話しいただきます。


山口大学の地域共同研究開発センターを中心とする産学連携

山口大学の地域共同研究開発センターということで産学連携に取り組まれて、その後、TLOができ、MOTをやられたり、いろいろ産学連携をやられています。またTLOでかなりライセンスをされていると伺っていますが、そのあたりの経緯からお聞かせください。

清水 地方の大学の産学連携の取り組みは、それぞれの大学でいろいろな特徴があるかと思います。山口大学の場合は、活動に合わせて学内の組織をつくって展開しているところが特徴の一つだと思います。もう一つの特徴は、外部人材と大学の教員とが、うまくミックスして活動している点であると思います。大学に地域共同研究開発センターが設立されたのは平成3年です。その後、ベンチャービジネスラボラトリーが平成7年にできました。そのころは他大学と比べてもやや遅れての出発だったと思います。ところが、TLOを創業したのが平成11年で、これが全国の国立大学の中でも5番目の設立で、一つ前に進みました。特に前学長の広中平祐先生は、海外に長くおられたこともあり、世界のさまざまな大学をご覧になっていることから、「小さい大学であっても特徴を持てば、それが強みになって超一流を目指せる」という方針を明確に示され、それが山口大学の産学連携の原動力になったと思います。つまり、大学のトップが明確に方針を述べる、そして、構成員が共有の問題意識を持ち、さらに核となる人間がいてその人たちに権限を渡した、そういうところが非常に大きいと思います。それ以降、産学連携の組織として今では地域共同研究開発センター単独ではなく、ベンチャー・ラボやインキュベーション施設、TLOなどと連携して、産学公連携・創業支援機構という形で、全体がまとまっています。知財本部は、文部科学省の整備事業で採択されていて、組織上は産学連携機構の外にあります。しかし、共同研究も知財を最初から戦略的に考えていかないといけないし、知財の一貫したガバナンスは、知財を軸とした産学連携には必須です。現在も実質的には機構と知財本部は一体になってやっているので、組織の形としても一体化させようと現在再編中です。こんなところで当初は産学連携に多少遅れはありましたが、今はエンジンがかかってきたという状況でしょうか。

もう一つ、企業などとの包括連携と国の地域科学振興政策などを地域連携に活用していることも特徴です。例えば、民間企業では、宇部興産、トクヤマ製造所、山口銀行、自治体とは宇部市、山口市などと包括連携協定を結んで、地域連携の仕組みを作っています。また、文部科学省の知的クラスター事業では山口県とともに進めていますし、これには県内企業も多く参画しています。これらは、これまで各教員が個別にやっていた共同研究などの産学連携とは異なり、大学が組織として取り組み、学内にも学外にもより大きな効果がでてくるように進めています。その甲斐があって、例えば共同研究は、もともと県外企業とのものが多かったのですが、地域企業について一昨年に比べて昨年度は倍増し、地域との連携を飛躍的に増加させています。いよいよわれわれの活動が、これから地域の活性化に本格的につながっていくことが期待されます。

次に、吉国さんにお伺いします。金沢大学はアカデミックなポテンシャルがすごく高い一方で、今までは中央を見ていたというような印象をもっています。吉国さんが行かれたタイミングで地元とかなり熱心に共同研究ないし連携に取り組んでおられるという感じがしています。現在、実際どんな活動をされているのでしょうか。


金沢大学での産学連携

吉国 私の場合、もともと大学人ではなく平成16年の1月に特許庁から金沢大学に参りました。したがって当初は大学の先生方の基本的な考え方、マインドの理解を行うために、まずは、学内を知ることから始めました。その一つが知財キャラバンと称して、文学部、教育学部、医学部、理学部、工学部、薬学部など、どの学部であろうとこちらから出かけていって知財の説明をさせていただく出前セミナーの実施です。また、発明相談のヒアリングがあれば時間が有る限り伺うことをまず始めました。これを通じて学内でのネットワークが、次第、次第に形成できたように思います。一方、外との連携ですが、平成17年の1月から半年間、隔週で、夜の5時半から8時まで、企業人大体20人ぐらいを相手に、「ビジネスクリエイト工房」を開講しました。その目的は金沢大学の研究成果を活用して事業創造をすることです。大学の研究成果は非常に基礎的で、場合によってはすぐそのまま製品応用できづらいものもあり、また一方で、とんでもないところの事業ビジネスを掘り起こすことができるのではないかということで、立教大学と共同で始めたものです。その運営に当たっては、システム・インテグレーション社の多喜社長の力をお借りし、金沢大学の研究成果を活用して新たな事業を創造するという実戦形式のセミナーを、半年間継続して実施することができました。このセミナーの意義は、セミナー自体の持つユニークさのほかにも、受講生獲得へ向けての体外的活動を通しての大学と企業経営者とのネットワークの形成、あるいは、ビジネスクリエイト工房に参加した外部講師(東京からなど)と学内研究者とのネットワークの形成等、副次的効果にも大きなものがあり、その後の産学連携活動のバネの役割を果たしているものと感じています。

知財活動は、ドラえもんの「どこでもドア」の機能であると感じます。部局、研究室の壁を越えて、さまざまな分野の先生方を知って先生方の研究に実際に自分の肌で触れることができるからです。そこから知り得た研究成果の最大パフォーマンスをプロデュースできるという機能を持っているのではと考えています。また、そうしなければ、大学での知財活動の意義が半減するようにも感じています。こうした考え方に沿って、立教大学との間で、さらに大学の壁を越えた研究プロジェクトを立ち上げました。「超予防」という、新たなコンセプトに基づく研究プロジェクトで、金沢大学と立教大学の研究者を巻き込んだ社会発信型の研究プロジェクトです。今後、地域との連携が大いに期待されるものと考えています。こうした活動を通して、大学における知財活動の可能性を強く感じているところです。

山梨県における産学連携

風間さんは産業活性化研究所を以前の会社をリタイアされてから設立されました。山梨の産業をどうにかしようということであったと思いますが。

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「地域をよくすれば日本がよくなり、
     ひいてはアジアが、世界がよくなる
     という考え方を私は持っています」
     と風間氏

風間 そうです。山梨を中心に日本の産業を何とかしようと考えました。地域をよくすれば、日本がよくなり、ひいてはアジアが、世界がよくなるという考え方を私は持っています。それでまず、自分の立脚している山梨をよくすることは、日本やアジアと連携しなければならないところにきていますので6年前に私が東京エレクトロンを辞めたときに、産業活性化研究所を創りました。たまたまそのときに山梨大学がTLOを創ったのです。当時の文部省と通産省が認可した株式会社のTLOですが、その社長になりました。私自身の経験が生かせると思いました。大学卒業後に諏訪精工、現在のセイコーエプソンで時計の専用機の開発製造をしました。その後クオーツが開発されそれまで機械式の自動巻き腕時計の時代で、超精密加工技術が必要でした。しかしクオーツは水晶振動子と分周回路とステッピングモータと文字盤と針があれば、機械式時計よりも10倍も100倍もの精度がでます。この時代にあって精工舎は時計以外の新しい方向に進出しなければいけないと思い精工舎を辞め、次に仲間とラインプリンターの開発を始めました。ラインプリンターは、当時結構難しい技術でした。非常に強力なばねが必要なのですが、そのときに私は産学連携をやりました。世界一強いばね、耐久性のあるばねを開発したのは東北大学の当時の金属研究所長でした。先生に電話をかけました。1カ月後にすごいばねのインゴットをつくっていただけました。インゴットから世界一強いばねができ高性能ラインプリンターが実現しました。このかなり以前からの私の産学連携経験で、大学の技術を売るTLOは非常に有効であると感じていました。私は地方大学の役割と旧帝大クラスの大学の役割とは別にあると思います。地方大学ではTLOの役割というのが非常に重要だと私は思います。 いわゆる旧帝大クラスの大学は、純理論的な方向の研究をしている先生方が多い。これは実用化には、10年とか20年かかります。地方大学の先生は意外に産業寄りの研究、実用化寄りの研究をやっています。山梨大学では純理論もしていますが、実用化寄りの研究が非常に多いのです。そこで一般企業と先生方は非常に連携しなくてはならないと先生たちに話しました。つまり、企業を歩いて、企業のニーズをつかんで自分の研究がどういう位置にあるかをよく認識して自らの研究をするべきであると説いて回りました。一方、私は山梨県内の機械電子工業会会長をやったり、商工会議所の工業部会長をやったりなど、中小企業の社長さんたちとも面識が多かったので、皆さんに大学へどんどん出かけていき、先生方とフランクに付き合うべきであると話しました。

そしてTLO設立1年後にTLOの会員を募りました。現在、会員は100社以上になっています。交流会を1年に2回ぐらい開き会員間の交流や、大学の先生たちとの懇親会を開くなりしています。国立大学の先生も民間企業の取締役になれるという法律ができ、山梨大学の教授が山梨県内のある会社の役員になりました。これも地域と大学との関係を密接にしました。

昨年から山梨大学では新しい学長を迎え、産学連携が非常に積極的になっています。山梨県庁や山梨中央銀行、商工会議所と大学が包括協定を結んでいます。

4年くらい前から山梨TLOは黒字になっており、昨年の春、3月決算で利益が出たので株式の10%配当をしました。いろいろなやりとりが活発になってきています。さらに、最近ではコーディネーター的な人たちがいろいろな企業のニーズも聞きながら、連携を進めています。今年の5月から経済産業省が新事業促進法を施行します。これは中小企業2社以上が連携して新事業を起こす場合、3,000万円の補助金を出すというものです。この中小企業2社以上と同時に、大学の先生たちも加わって新事業を起こす。こういったPRもして、産学連携の交流をできるだけ促進しているわけです。

同時に、山梨大学は、山梨医科大学と日本で国立大学合併第1号をやりました。 今、山梨大学に医学工学大学院があります。医工連携の先鞭(せんべん)をつけました。医学部の先生は、発想はするが、どういう装置にしていいかわからない。ところが、工学部の先生は、装置の発想はあるのだが、医学のことはよくわからない。そこで共同するわけです。また、TLOには医学部の教授も工学部の教授も入っています。また教育学部の教授も入っていますので、種々の議論をしており、つまり分野が融合した形で動き出しており、いずれにしても産学連携は、コーディネーター役、仲人役がうまく間を取って働けばスムーズに動き出します。大学内の学部間、企業との連携いずれでもしかりです。

加えて、大学の研究が世の中に使われないことには、宝の持ちぐされになってしまいます。これは大学の先生方によく説くと同時に、民間の企業の人たちが積極的にその大学の成果を活用してほしいと説いています。

大学の技術移転について

吉国 金沢大学のTLOの活動は非常に活発ですが、そのことでも金沢大学と外との連携がより印象づけられていると思います。具体的には、北國銀行や北陸銀行など地元金融機関との連携や政策投資銀行との連携です。地元金融機関との連携による新技術説明会の開催を積極的に実施することで、金沢大学の研究成果に対する理解が広がっているといえましょう。また、最近の大きな特徴として、共同研究センターがイニシアチブをとる形で、企業との包括連携や小松市との連携が始まっています。この1、2年で、産学連携の大きな流れが出てきたのではと感じています。

山口大学のTLOでは土木関連をはじめとして、移転実績をあげておられますが、そのあたりをお話しください。

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「山口大学での産学連携の展開は
     コーディネーターの方々の手腕に
     よるところが大きいのです」と清水氏

清水 山口大学では、大学の知財の発掘、出願、管理は知財本部で行っています。技術移転や活用はTLOに委託し連携しています。大学の知財本部と外部のTLOの両輪で進めます。このあたりは、山口大学では、あらゆる産学連携の組織、地域共同研究開発センター、知財本部、ベンチャービジネスラボラトリー、ビジネス・インキュベーション施設、TLO、知的クラスターらが、すべて同じ建物にあるという利点が生かされています。

また、TLOに委託したからといっても技術移転はなかなかできるものではありません。 技術移転というと、すぐ何か特許が出て、売りに行ったらすぐ売れる、なんて思う人がいる。それは誤解で、むしろ目的を絞った共同研究の中から上がってきた成果が、そのパートナーとして一緒にやってきた共同研究先のところに移転されるほうが多いのではないかと思います。単独特許の場合は、開発者の先生の持っている情報を最大限活用します。つまり、TLOと知財本部の担当者が、開発者の先生と移転先の候補をよく相談し、移転後のサービスも含めて検討することが大切です。研究開発進行中の段階からそのような検討ができればなおよいですね。もちろん、大学として非常に期待されているのは基本特許です。物によってそれが大化けすることを期待するのですが、簡単に計画してできるものではなく、地道に技術移転もリエゾン活動の一環だという考えのもとで進めていくという発想が必要と思います。

コーディネーターの役割

そういう状況では、コーディネーションをする人材とか仕組みが特に必要になっていると思いますが。

清水 極めて重要で、山口大学での産学連携の展開はコーディネーターの方々の手腕によるところが大きいのです。本学のコーディネーターは文部科学省から2名、宇部市から1名配置していただいています。さらに、大学独自の資金で新たにコーディネーターを2名採用して、東京リエゾンオフィスに配置したり、活動内容を広げています。

包括連携にしても、協定を結ぶだけでなく、企業と大学の実質的な意思決定者を連携システムに入れ、日常的には、担当のコーディネーターを置いて密接に企業側の窓口担当者と連絡してやっています。企業の声を大学の言葉に翻訳する、また、大学の先生の声を企業の言葉に翻訳する、それが重要であると思います。山口大学では、それができる人材を擁しています。

コーディネーターとしてフィットする人材の教育、訓練を金沢大学ではどのようにされていますか。

吉国 金沢大学の場合は文部科学省から派遣していただいている産学官連携コーディネーターが2名います。さらには、共同研究センターでは地域の企業人や自治体関係者をコーディネーターとして任命し、新たな展開を図っているところです。これらの方々の役割も、大いに期待するところです。ところで、金沢大学がTLOを立ち上げるときは、山口大学から示唆や助言を受けていると伺っておりますが。

風間 山口大学のTLOは日本で5番目の設立です。山梨大学TLOは16番目です。やはり、山梨大学でも山口大学を1つの参考にしたという経緯を聞いています。

地域での中小企業の実態

地域のいろいろなところで、どうしても地元に連携できるような企業がないというような話を聞きます。実際はどんな印象を持たれていますか。

清水 決して企業がないということではないと思います。各県には世界に誇れる企業は幾つか必ずあります。確かに、包括連携を組むような大手企業を探すとなると、地方だとそれほど多くない。中小の企業が多い。今、知財の問題もそうですけれども、中小企業の皆さん方にどういう形で知財文化を浸透させていくか、その中小企業の方々とどう産学連携を組んでいくかは、地方では大きな課題の1つだと思います。地方の中小企業は現業だけでは先細りになるので、新規事業を手がけたいという意識は非常に強いです。例えば大手企業から部品調達をしようと考えたときに、その地域だけじゃなくて国外があるわけです。そうすると、今まで大手企業に依存してきた地域の中小企業は何とかして自前の事業展開をしたい。そうでないと生き残れないという意識は皆さん持っておられるわけです。生き残るからには差別化した技術や商品を持ちたいのは共通した思いです。大学としても、そういう企業に対して、一緒に共同で何かやろうという意識はあります。

しかし実際、じゃあ、そこに接点があるかというと、それは個別のケースですが、接点が難しいケースも非常にあるわけですね。例えば何かしたいけれども、何をしたいかわからないというのもあるでしょうし、それから、そういうことをしたいという志はあるけれども、人、技術、資金、時間がないということもあります。大学教員からは、事業へ結びつける研究成果はもちろんですが、なんとか研究論文につながるものをという思いもあります。ここに両者が乗り越えねばならない部分があると思います。一方で、大学の内部への説明、つまり産学連携により、大学の教員たちの研究力がアップすること、研究ニーズがわかること、いろんな情報が企業からも入るのでそれらをうまく研究に取り入れられますよ、といった利点を説明する必要があります。産学連携のそのような点は学生の教育へもよい効果を波及します。こうなると大学の教育力と研究力がアップします。そして地域も活性化するのです。地域がよくなれば大学もよくなるというモデルにしたいのです。産学連携の橋渡しはコーディネーターの方々によるところが大ですが、大学の教職員ももっともっと考えねばならないと思います。

地方で産学連携を推進する上での官の役割

清水 それと申し上げたいのは、JSTの事業や文部科学省の知的クラスターなどの公的な支援が、山口大学の医工連携や、大学と県内の地域企業との連携で地域の活性化を進める上で大きな後押しになっています。

風間 山梨県でも産学連携では、公の支援を得ます。それが核となってさらに連携が進みます。したがってこういう施策は非常に大事であると思います。

吉国 同感です。

大学と行政との連携は密接になってきているのですね。

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「地域の個性を明確にすることが、
     ある意味ではユニバーサルというか、
     普遍性を発揮できるのでは
     ないでしょうか」と吉国氏

吉国 そのとおりです。金沢大学では、バイオ、IT、それから技術全般にわたりその道のプロを客員教授ということでお迎えしています。そういう人材は、大学のみの人材として囲い込むことなく、積極的に県等にもご紹介することで、人を介しての連携が行われることを実感しています。その結果、連携がより密接、具体的になってきているかと思います。

風間 山梨で産学官連携の例はかなり前からあります。また山梨大学の教授が基本原理をつくり、これは光造形システムですが、これで立体造形をします。山梨は宝石の町ですので、指輪とかブローチの原型をこの光造形システムでつくります。これを工業技術センターが試作機をつくって事業化するというプログラムもあります。最近の例として極細繊維の量産機の開発もあります。

吉国 石川県でも、(財)石川県産業創出支援機構(ISICO)という県の機関があります。このような県の仲立ち機関は非常にありがたい存在です。

山口県でもそういったネットワーク体制がありますか。

清水 はい、県の「やまぐち産業振興財団」がそれを担っています。そのほか、宇部、下関、周南で、市や民間企業らが産学公の交流の場を設けて、新しい技術が生まれる仕組みをつくりつつあります。そのようなネットワークの中で大学はリーダーシップをとりたいですね。風間さんがおっしゃった地域を育てるとその周辺から、日本、アジア、世界につながるわけで、そのような観点からも、地方にある大学の役割は大きいと思います。

地域の個性を生かした産学連携

吉国 地域には地域が持つ個性があります。石川県の伝統文化を意識することも大事であると思います。

私の持論は、産学連携とは人の交流であり、仲間づくりであると思います。産学連携という人の交流をシルクロードで喩えるなら、大学は交差点であると思います。石川県という地域、北陸という地域、金沢大学が存在する地域の個性を明確にすることが、ある意味ではユニバーサルというか、普遍性を発揮できるのではないでしょうか。

風間 私は40年くらい前から1つの考えを持っています。地球は球であり、球の表面はどこでも中心になるのです。したがって球の表面には地域も中心も地方も外れも何もないのです。よって、自分のところが頑張って、そこのエリアをよくすれば、それが世界に広がる。ですから連携が非常にやりやすいのです。山梨も世界の中心であるから山梨に世界に通用する、世界の中心になり得る企業をつくるのが私のロマンです。今は、半導体製造装置で山梨にまさしく世界の中心ができています。半導体の装置研究所を1995年ごろにつくり、世界中の学者、企業の技術屋が今そこに来ています。共同開発をやっています。ですから吉国さんが言われるように交流をし、ネットワークを組む。地球上が全部ネットワークを組めばいいんです。それぞれの特徴を生かした連携が産学官連携の基本です。

吉国 それなりに個性を発揮しないと相手にしてもらえないところがあります。

清水 それぞれ求心力を持てば、お互いに密接な連携ができますよね。

風間 それぞれの特徴を持ったつなぎ合わせ、これがクラスターであり、また、産学官連携であるわけです。

吉国 私は知財本部におりますので、特許を仲間づくりのツールだと考えます。ツールである知財をきちんとキープするのです。大学での知財活動は知財を核とした大きな研究活動の仕掛け作りとも言えるのではないでしょうか。研究者の方々には、こうした観点で知財活動を理解してもらうことも意識しています。

私の場合、知財本部長のほかに、法科大学院での知的財産法の講義、法学部ゼミでの講義、工学部大学院生を対象としたMOT関連の講義、そして、知財キャラバンを拡大した臨時知財ゼミの開催等、学生との接触も拡大してきました。今後は、研究者のみならず学生をも巻き込んで、研究活動の中に知財活動をいかに身近に感じる仕組みを作るかが大切ではないかと考えています。

風間 意外と知財に興味がない大学の先生は多いです。したがってそれなりに知財の説明はしますし、知財本部とTLOが特許申請は協力するので、相談してほしいというようなことを、大学の先生たちにPRしています。

最後に
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司会進行/遠藤 達弥

本日のテーマは地域における産学連携でしたが、その中でも、地域でなくてもどこでも通じる普遍的な産学連携の精神が出てきたと思います。地球は球であってどこでも中心になれる。地球上の一地域の産学連携であっても、そこが中心になり、周辺地域、日本、世界へと展開し、さらに世界の中心になるという考え方、産学連携における大学は交差点であり、産学連携は結局は人のつながりであり、ネットワークであるといった話は大変に興味深く伺いました。本日は、大雪であると聞いています山口県、石川県からお越しいただいた、清水さん、吉国さん、また東京の隣県である山梨県からお越しいただきました風間さん、どうもありがとうございました。



司会進行:(財)全日本地域研究交流協会 事業部 次長 遠藤 達弥
(文責:本誌編集部)