2006年3月号
特集  - 地域クラスター<大阪府・バイオ編>
産業クラスター計画「近畿バイオ関連産業プロジェクト」
中核推進機関・NPO法人近畿バイオインダストリー振興会議の取り組み
顔写真

遠山 伸次 Profile
(とおやま・しんじ)

NPO法人 近畿バイオインダス
トリー振興会議 理事・クラスタ
ーマネージャー


近畿バイオインダストリー振興会議とは
図1

図1

NPO法人近畿バイオインダストリー振興会議(以下:「近畿バイオ」)は、1985年に大阪大学総長であった故・山村雄一先生らが発起人として設立された任意団体近畿バイオインダストリー振興会議に端を発している。その目的は近畿地域に高い集積を有するバイオ分野での技術シーズを、産学官の密接な連携のもとに事業化させ産業発展に寄与することである(図1)。

「近畿バイオ」は、近畿経済産業局との密接な連携のもと、平成13年「近畿バイオ関連産業プロジェクト」の中核推進機関としての活動を展開している。近畿地域には、古くから道修町(どしょうまち)を中心とした医薬品産業をはじめ、化学・食品・精密機器等の大手企業群、大阪大学、京都大学をはじめバイオ分野の先端研究を行う大学・公的研究機関が集積しており、バイオ研究のための高いポテンシャルがある。このバックグラウンドをもとに、重点分野として、[1]医薬産業(創薬、再生医療)、[2]先端的解析産業、[3]環境産業(植物バイオ、微生物バイオ)を定め、世界に通じるバイオクラスターの形成を目指している。「近畿バイオ関連産業プロジェクト」では、この目標を、大学発ベンチャーを集中的に支援し、クラスターコアとなるバイオベンチャーを創出することと、東大阪など高い技術力を有する中堅・中小企業へのバイオ技術の移転によりクラスターの裾野を拡大することで実現させようとしている。

主要な事業
図2

図2

現在、「近畿バイオ」が最も力を入れている事業(図2)は、研究プロジェクト組成、およびバイオベンチャー創生である。バイオ技術シーズの発掘・収集のために京都大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学、神戸大学の若手ポスドク、院生を研究者コーディネータとして採用し、これにあたってもらっている。これら研究者コーディネータが収集したバイオシーズについてバイオビジネスに関係している方々にビジネス化コーディネータとして加わっていただき、産業化の可能性を検討するコーディネータ会議を開催している。本コーディネータ会議で検討された案件に対して、バイオ研究の専門家に事業化に向けた方策の検討、公開シーズの吟味をしていただくネットワーク形成委員会も開催している。そして選ばれた10~12の技術シーズを技術シーズ公開会で公開し、産業界のニーズにマッチングさせている。このマッチングで研究開発プロジェクトの組成やバイオベンチャー創生につなげていこうとしている。シーズ公開会で直接マッチングできない時には、参加者の関心が高かったシーズについて、その技術シーズのみについてフォローアップ勉強会を開催し、研究プロジェクト組成を促している。

また、異業種の中小企業からのバイオ分野への参入促進のためのセミナーは、中小企業が集中している東大阪や尼崎で大きな関心をもって迎えられている。最先端技術情報提供のためのセミナー、「組織工学・再生医学ワークショップ」、「遺伝子治療国際シンポジウム」、「コンビナトリアル・バイオエンジニアリング国際会議」などは、いずれも毎回200名を超える参加者を集め高い評価を得ている。

バイオベンチャー支援
図3

図3

こうした活動から「近畿バイオ」が創生・育成を支援したバイオベンチャーは、アンジェスMG(株)をはじめクリングルファーマ(株)、(株)ジーンデザイン、バイオ・エナジー(株)など50社近くになっている。しかしながら、これらベンチャーはまだまだ研究開発要素が多く資金的な問題を抱えている。その一助として地域新生コンソーシアム研究開発事業等の公的支援策を活用した研究プロジェクトも推進し、平成13年度から17年度までに18件の研究開発を支援している(図3)。本年度からは「近畿バイオ」が管理法人となり支援している案件もあり、それらは知的クラスター創生事業で研究された成果を事業化するという他府省連携枠の研究開発である。

一方、バイオベンチャーが産業活性につながるような企業に成長するには、大企業とのアライアンスを結べることが重要である。アンジェスMG(株)が設立後3年で上場できたのも、第一製薬(株)とのアライアンスを結べたことが、大きな要因の一つと思われる。それ故、アライアンス締結を促進するための場を提供している。また、ベンチャー成長のためにはベンチャー間の技術交流やベンチャー同士の融合も必要である。「近畿バイオ」では、地域内交流のみならず、バイオ研究の盛んな他地域間交流も重要と考え、(財)バイオインダストリー協会からの補助金「平成17年度地域バイオ産業育成事業-全国バイオ産業ネットワーク形成事業」を受託し、北海道、沖縄のバイオベンチャーとの相互交流を実施している。北海道バイオ産業振興協会とは交流協定を締結し、沖縄は(財)南西地域産業活性化センターと連携している。これら両地域と協力しながらバイオベンチャーと技術交流・販路開拓等の連携のためのフォーラムを北海道、沖縄、大阪で開催している。

海外のバイオ関連機関との交流も現在14カ国、51機関と実施している。例えばJETROの「Local to Local産業交流事業*1」を活用し、スコットランドと医薬・医療福祉機器分野で産業交流を実施したり、在阪領事館の方々とバイオベンチャーの社長あるいは「近畿バイオ関連産業プロジェクト」拠点機関のクラスターマネージャーとの交流会、また、年初には新春国際交流会を開催し、各国領事館、バイオ関連機関と近畿バイオメンバーが一堂に会し交流を深めている。今後、このような国際交流を東南アジアも含め積極的に展開して行きたいと考えている。

バイオベンチャーサポートという動きもある。日本公認会計士協会近畿会、日本弁理士会近畿支部、大阪弁護士会の3つの専門士協会が協力し合って関西のバイオビジネスを積極的に支援しようということで「バイオサポーターズ三会協議会」が平成15年に結成された。「近畿バイオ」は、これに全面的に協力している。特に、弁護士、公認会計士にはバイオの基礎知識・専門用語を習得するための勉強会、弁理士には最新の専門情報習得のための勉強会をセットアップし、年1回実施している。また、具体的なビジネスモデル作成等の事例研究会も支援している。平成16年には「バイオサポーターズ三会協議会」のバイオビジネスに関する専門家で構成した「関西バイオビジネス研究会」が発足し、創業支援、経営支援等に役立つ特許戦略、財務戦略、法務戦略等の研究も開始している。チッソ(株)と神戸大学工学部で研究開発されたシーズを基に、この研究会からのアドバイスを生かしてスピンオフベンチャー(マグナビート(株))が設立された実例もでてきている。

その他、アズワン(株)から「近畿バイオ」に無償で貸借したインキュベータ(アズワンR&Dセンター)をベンチャー9社に無償転貸借したり、彩都に設立された彩都バイオインキュベータへの入居斡旋、資金調達のためのベンチャーキャピタルの紹介まで、「近畿バイオ」ではバイオ技術シーズの発掘・収集からベンチャー創生・育成まですべての段階で支援をしている。

人的ネットワーク
図4

図4

「近畿バイオ」は、昨年設立20周年を迎えた。この間、人的ネットワークを築きつつ、近畿圏のバイオの振興とともに、バイオクラスター形成に向けた各種の活動を展開してきた。その結果「バイオは関西」と内外から認められるようになってきた。さらに今後とも関西のバイオが期待されるような活力を得て、わが国のバイオの核となるためには、発想が斬新な若い研究者と産業界の間のネットワークづくりが不可欠と考えた。「近畿バイオ」は、このため医学、工学、農学、理学など幅広い分野から、関西のバイオニューリーダーとも言える大学・公的研究機関の研究者26名を集め、「関西バイオの未来を考える会」(図4)を立ち上げた。各研究者の専門分野の最新の研究を紹介してもらうとともに、今後長期間にわたり、「近畿バイオ」の事業等への協力、支援をしていただくことになっている。

今後の活動

[1] 成功が次の成功を生むメカニズム創り:バイオベンチャーは次々と創生されるようになってきたが、成功ベンチャーというと、まだほとんど見受けられない。ベンチャーの創生と同時に、一方では創出されたベンチャーをいかに成功ベンチャーへもっていくかが、これからの大きなポイントの一つだと考えている。

[2]大企業との連携の促進:ベンチャーであるので資金的な余裕は少なく、本格的な生産・販売には限度がある。ニーズの高い優れたものを開発し、大企業との連携を組むことで大きく発展できると考えている。

[3]濃密な人材ネットワークの形成:関西には大学が集積しており、バイオ研究者は豊富に存在するが、ベンチャー企業を経営する人材が決定的に不足している。成功ベンチャーを創生することにより、企業からの経験者等がベンチャーにどんどん参入してくるような人材ネットワークの形成が不可欠である。

これらを解決し、「近畿バイオ」は日本のみならず、世界のバイオ振興に貢献したいと考えている。

*1Local to Local産業交流事業
http://www.jetro.go.jp/jetro/activities/region/