2006年5月号
編集後記

4月号に引き続き、巻頭座談会で「産学官連携による人材育成」を取り上げています。「人材育成」をテーマにすると、今回のような「産学官連携を活用した多様な人材の育成」のほかに、「産学官連携活動そのものを担う専門人材の育成」という切り口があります。この数年、こうした専門人材として多くの人が大学の知的財産本部やTLO(技術移転機関)の門をたたきました。私自身もその一人です。専門人材としてどのような能力をどのような手法で身に付ければいいのか、どのくらいの時間がかかるのか、などについて全国各地で試行錯誤が繰り返されたのではないでしょうか。曲がりなりにも大学の産学連携体制が整い、経験も蓄積されてきました。ここに来て現場では、育成を終えて活躍中の、あるいは育成途上の専門人材が今後も働き続けられるかどうかが懸念されています。米国では大学の専門人材がベンチャー企業に転じることも多いと聞きます。専門人材が活躍する機会が継続、拡大していくための手掛かりを本ジャーナルで探っていきたいと考えています。

(伊藤委員)

ここ数カ月、全国の地域にお邪魔する機会があり、各地域での産学官連携の仕組みの紹介を受けてきた。各地域での問題点としては、「コーディネータの不在」「行政職員の定期的異動」がもっとも多いとの感じを受けた。コーディネータ不在の理由としては、採用されるコーディネータの多くが、民間、大学、行政のOBではあるが、残念ながら短期(1年ごと)契約であり、また、週2、3日勤務という状況もある。コーディネータを長期、常時雇用できるシステムが欲しい。行政職員の定期異動は仕方ない状況であるが、逆に長く産業関係に在職している職員がいる地域は、その職員が中心となり、連携事業を進めている。産学官連携も最後は人材確保かと思う。

(佐藤委員)

先月号から2回にわたり産学連携による人材育成、産学連携遂行に役立つ人材の育成について専門家の方々の座談会を掲載した。異分野も理解し、マネジメント力もある人材が大いに求められるところであるが、こういった能力開発の素地となる人間力は、全人的教育が前提であることは言うまでもない。加えて、機会や育成の環境を作ることは先人の知恵でもあり、これらの組み合わせで、特に若年層は今後ますます伸びていこう。大いに期待できると感じている。その一環として見られるのは、首都圏のみでなく地方的な展開もされつつあるMOT教育ではないだろうか。産学連携もいまや初期の時代を超え、転換期である。人材育成は今後の産学連携の成否を決める要である。ジャーナルでも種々の観点からこの主題を取り扱っていきたい。

(加藤編集長)