2006年8月号
連載4  - 産学官連携事例
沖縄県におけるエコベジタブルシステム(少水量型養液栽培)栽培事業の提案
-琉球大学のシーズ技術と荏原製作所の事業化に向けた産学連携-
顔写真

黒田 哲生 Profile
(くろだ・てつお)

(株)荏原製作所 環境事業カン
パニー 環境ソリューション事業
統括部 プロジェクト計画室 副
参事/技術士(農業部門/施設
園芸)

亜熱帯のような高温かつ、雨の少ない地域では葉物の栽培が難しい。水は少なくても野菜の栽培ができる栽培方法の産学連携。多孔質培地を利用し、水および肥料を通常栽培の半分にできる方法を述べる。

はじめに

21世紀は、大量生産・大量消費・大量廃棄型社会から、地球環境に対し負荷低減を目指す循環型社会に移行する大切な世紀である。資源に乏しい日本は、諸外国からの輸入資源が約7億トン/年もあり、総廃棄物発生量およびエネルギー消費が高水準な状況にある。日本は、農業に関して食料自給率向上のみならず、持続可能な循環型農業技術を構築し、循環型農業への発展を目指すべきである。

日本農業を循環型農業に移行させるには、以下の目標を確実に実行することである。

[1] 農産物を増産すること(米と野菜は、100%供給できる)
[2] 有機系廃棄物から、肥料成分、工業原料、エネルギーの回収を行うこと
[3] 汚染物質(農薬、畜産廃棄物由来の硝酸態窒素等)の使用や排出を極力減らすこと
[4] 自然エネルギーおよび未利用エネルギーを利用し、活用すること(石油依存を低減させる)

エコベジタブルシステム(少水量型養液栽培)について

1998年12月より、循環型農業生産システムの研究開発を開始した。手始めとして、養液栽培(施設園芸)での野菜栽培に取り組んだ。土耕栽培に比べて養液栽培(施設栽培)は、収量が多く高品質であること、工業的手法を活用しやすいこと、水および肥料の投入量をコントロールしやすいこと、農薬の使用量が少ないことなどが特徴である。

写真1

写真1 コマツナの栽培風景



図1

図1 エコベジタブルシステム構成図

ベースとなる養液栽培は、琉球大学米盛助教授の多孔質培地養液栽培(固形培地耕)を採用した。従来の代表的な養液栽培は水耕およびロックウール耕であるが、米盛助教授の多孔質培地(天然鉱物由来)による養液栽培は従来の代表的な養液栽培に比べて、水および肥料の使用量が少ない。しかしながら、多孔質培地に、ただ単に点滴潅(かん)水するだけでは最適な潅水ができない。そこで、荏原製作所において工業的手法を用い、使用水(培養液)の量および質を最適にコントロールできる自動潅水システムを開発した。従来、多孔質培地と水の結合力を調べる方法がなかったが、多孔質培地中のマイクロ波の伝達速度を利用した計測方法を研究開発し実用化した。荏原製作所が開発した養液栽培を「エコベジタブルシステム(少水量型養液栽培)」と呼ぶ。多孔質培地については、物理性(透水係数、通気係数)、化学性(陽イオン交換容量)、生物性(微生物)について分析を行い、仕様を決定した。工学的処理も行っている。培地名称は機能性培地(エコポラス)とした。エコベジタブルシステムは、従来の多孔質培地での養液栽培に比べても、葉菜類栽培において、水および肥料を半分にすることができ、収量については逆に20~40%増加させることができた。従来の養液栽培では、培養液の排液や廃ロックウールが多量に出てくるが、エコベジタブルシステムでは、培養液の排液がほとんど出ない。機能性培地は、10年以上使用することができ、連作障害がほとんど出ないので極めて差別化された培地といえる。また、使用水(培養液)の量および質をコントロールすることができるので、高品位な作物を栽培することができる。具体的には、トマトおよびパイナップルの糖度を上げることができた。このエコベジタブルシステムでは、多くの品目を栽培することができる。葉菜類では、サラダナ、ホウレンソウ、コマツナ等15品目。果菜類では、トマト、キュウリ、ナス等14品目。果実類では、パイナップル、パッションフルーツ等4品目。花卉(かき)類では、カーネーション、キク等9品目について実際に利用している(写真1)。

エコベジタブルシステムの納入実績は、公的研究機関の実証試験用に2件、栽培農家に3件である。各栽培現場において順調に稼動しており、栽培データの構築が行われている(図1)。

沖縄県におけるエコベジタブルシステム栽培事業の提案

エコベジタブルシステムのベースが、琉球大学米盛助教授の多孔質培地での養液栽培であることから、沖縄県由来の栽培システムであるといえる(沖縄県での栽培実績が豊富である)。

また、沖縄県特有の農業環境(野菜生産に限る)は以下のとおりである。

[1] 台風等、自然環境が厳しい(強風、大雨、土砂崩れ等)。
[2] 農業に適した耕地が限られている。
[3] 亜熱帯であるので、夏期は栽培できる野菜が限られる。
[4] 深層水やLNG発電冷熱の利用等が可能である。

図2

図2 LNG冷熱活用アグリコンプレックスのイメージ

[1]に関しては、対応策として施設園芸での栽培が好ましい。[2]に関しては、施設園芸のうちでも養液栽培が好ましい。[3]および[4]に関しては、具体的には深層水やLNG発電冷熱を利用しての培地冷却栽培が考えられる。エコベジタブルシステムにおいて、培地冷却の栽培実験はすでに行われていて、沖縄県でのイチゴ栽培や、通年でのホウレンソウ栽培が可能になることは確実であると思われる。農業振興および地域振興まで貢献できる事例を図2で示す。

まとめ

エコベジタブルシステムは、全国展開が可能な養液栽培である。特に、亜熱帯である沖縄県での利用価値が極めて高い。ただし、養液栽培は露地栽培に比べ費用がかかるので、装置提供のみならず栽培事業提案までを行うことによって、沖縄県の農業振興および地域振興に貢献できるよう産学連携で協力していく所存である。

◯関連論文・特許等

(1) 黒田哲生.エコベジタブルシステム(少水量型養液栽培).荏原時報.200号記念特集号,2003, p.73-75.
(2) 黒田哲生,他.栽培用培地.特願2001-530918. 2000-10-18.
(3) 黒田哲生,他.土壌のpF値の測定方法、並びに潅水制御方法及び潅水制御装置.特願2001-547538. 2000-12-21.

その他、論文および特許多数。