2006年9月号
連載4  - ヒューマンネットワークのつくり方
連携構築に必要な face to faceコミュニケーション
-担当者の顔写真入りメールマガジンを発行-
顔写真

大高 聰 Profile
(おおたか・さとし)

山口大学 地域共同研究開発センター
産学連携コーディネータ(客員研究員)
/文部科学省 産学官連携活動高度化
促進事業 産学官連携コーディネーター

顔の見えるネットワークづくりとして、顔写真入りコーディネータメールマガジン、顔写真入り名刺の有効性を語る。「人物相は大いなる情報を持つ」の実例か。

はじめに

筆者はこの「ヒューマンネットワークのつくり方」への寄稿を引き受け、何を書くか悩んだ末に、産学官連携担当者のネットワーク構築という、そのものずばりの内容を書くことにした。すなわち、地域(山口県)の産学官連携の担当者であるコーディネータやアドバイザー間のネットワークの構築にかかわった経験を報告する。皆さまのご参考になれば幸いである。

地域の産学官連携担当者の連携構築

平成14年は第1回の産学官連携推進会議が開催された年であり、産学官連携が全国的に広く認知され始めた年であったと思われる。

中国地方でも平成14年に産・学・官の関係48機関が参加して「中国地域発展のための産学官連携マスタープラン」が策定され、それを実施するための5つの方針・3つの数値目標が発表され、それに基づき産学官連携の活動が実施されている。

一方、山口県では、大学や高専の技術シーズの活用による新産業の創出や新事業の展開による地域経済の活性化を図るため、平成14年5月に山口県内の産業界、学術機関、行政機関の代表者からなる「産学官連携イノベーション創出推進委員会(委員長:山口大学地域共同研究開発センター長)」が設立された。

この委員会では、産学官連携の具体的な数値目標の設定、数値目標達成のための各機関のアクションプランの策定などが決定された。そして、それを具体的に推進するためには、産学官連携のコーディネート活動が重要であることが認識され、担当者であるコーディネータやアドバイザーをメンバーとする「コーディネーター・アドバイザー会議」が設立された。

同会議のメンバーは(財)やまぐち産業振興財団、学術機関、県内の中小企業支援センター等の代表者22名で、第1回の会議では各メンバーの活動を認識するとともに、山口県のイノベーション創出に向けて意見交換を行った。その中で、コーディネータやアドバイザーの所属機関、活動内容、専門分野などが大幅に異なること、また組織の枠を超えた情報交換が乏しいことが問題点として浮かび上がった。そこで、これらの産学官連携担当者のスキルアップや担当者間の横連携の構築および共通の活動の場を提供する目的としてメールマガジン「C.A.NEWS(コーディネーター・アドバイザー通信)」(図1)を発刊することになり、筆者がその事務局として発行・配信作業を行うことになった。

メールマガジン「C.A.NEWS」の発行
図1

図1 C.A.NEWS(フロントページ)

C.A.NEWSは、A4判で4~10ページとし、隔月に発行した。親しみやすくするため、カラーを多用し、誌名のロゴや記事欄のデザインは専門家にお願いし、山口県の産学官連携にふさわしいものとした。ちなみにNEWSのWの部分は3つのVを重ねたもので、産学官連携を意味する。

記事は、産学官連携に関する各種イベントの案内や報告、専門家による寄稿等で分かりやすい記述をモットーとした。最大の売りは、毎号のフロントページに掲載したコーディネーター&アドバイザー紹介であった。

コーディネーター&アドバイザー紹介は、各人に自己紹介や産学官連携に関する思い等をお願いして記述してもらったものである。

連携を構築するためには、お互いに知り合う必要があるが、実際にはその機会は少なく、この記事はコーディネータやアドバイザー間の連携構築や相互の信頼関係の醸成に有効であった。特に顔写真を入れたことは「顔」が見えると好評であった。連携の構築には、face to faceが一番であるが、「顔写真」はそれに準ずる効果があったと思われる。

連携構築の成果と地域の産学官連携の現状

「コーディネーター・アドバイザー会議」は平成14年度、15年度に各2回開催され、産学官連携に関する課題の討議、外部講師を招いての勉強会等を行い、平成16年度は「ネットワーク推進担当者会議」に名称を変え、引き続き、活動を行ってきた。

前述の「産学官連携イノベーション創出推進委員会」の目標の1つは地域企業との共同研究件数の増加であるが、山口大学の場合、平成13年度の53件が平成16年度には100件となった。山口県内の他の学術機関でもほぼ同じ傾向のようであった。この増加にコーディネータとアドバイザーの連携構築がどの程度貢献したかは、定量的には評価が難しいが、定性的には少なからず貢献したものと思われる。筆者の場合、他のコーディネータ等からの技術相談等が多数寄せられ、共同研究に結び付いたものも数件あった。

C.A.NEWSの発行には、当然のことながら経費が必要で、平成16年度までは文部科学省の山口大学地域貢献特別支援事業の一部をこれに充当できたが、平成17年度以降は休止の状態である。また、コーディネータとアドバイザーの会議も休止の状態にある。

しかし、3年間の活動で、産学官連携担当者が相互に知り合うことができ、初期の目的はほぼ達成できたと思われる。

一方、県内各地で定期的な交流会が開催されている。これには産学官連携の担当者も出席しているので、その機能を果たしているようにも思われる(写真1)。

写真1

写真1 宇部市の交流会(C-UBEサロン)

また、「コーディネーターランチ」と名付けた昼食会を山口大学地域共同研究開発センターで開催し、フランクな雰囲気で産学官連携に関する情報や意見の交換を行っている。(独)科学技術振興機構(JST)や中国経済産業局の関係者を交えて実施する場合もある。

地域産業の振興にコーディネータやアドバイザーの役割はますます大きくなっている。単なる仲介からビジネスプロデュースなど、より高度な役割への進化が求められているが、そのためにはネットワークの活用が重要であることは論をまたない。

おわりに

山口県の産学官連携の担当者のネットワーク構築のツールとしてメールマガジンを発行した。それに担当者の「顔写真」入りの自己紹介記事を掲載したことは、ネットワーク構築に極めて有効であった。

蛇足ながら、筆者の名刺は顔写真入りであり、筆者が所属する山口大学地域共同研究開発センターの全員もそうである。各種の会合での名刺交換の際、過去に名刺交換をしていてもこちらが失念していることが多々あるが、相手は記憶していることがあり、それは顔写真のおかげによることが多い。大学に配置されているわれわれ産学官連携コーディネータの使命は、大学の「知」を売ることであるが、まず「顔」を売る必要がある。そのためには「顔写真入り」の名刺等が有効と思われる。