2006年11月号
巻頭言
顔写真

橋本 大二郎 Profile
(はしもと・だいじろう)

高知県知事




高知県は製造業が少なく、経済基盤が脆弱(ぜいじゃく)なため、全国的な景気回復の波は、まだ遠く及ばない状態が続いています。併せて魅力ある就業機会や都市機能の不足などにより、若い方々を中心とした人口減少が依然として続き、非常に厳しい状況にあります。

このような背景の中で若者の定着を図り、ゆとりと豊かさを備えた個性ある地域文化・産業を形成するため、本県では地域が自立できる経済構造の確立を目指して、企業の持つ技術力や大学などの知的資源を核とした新しい産業の創出に力を入れてきました。

地域の技術力の向上や工学系の人材の育成を目指し、公設民営方式で設立した高知工科大学は、今年で開学10周年を迎え、産学官の連携によるプロジェクトも活発に行われています。

特に、高知工科大学やカシオ計算機株式会社を中心に平成15年1月から実施している地域結集型共同研究事業は、酸化亜鉛(ZnO)を使って次世代ディスプレイに関連する技術の開発を行うもので、この研究成果からディスプレイ関連の新しい産業を高知県に興し、地域経済を活性化させたいとの思いで取り組んでいます。昨年の成果発表会では、ZnO-TFTを使って6万画素の液晶ディスプレイを製作し、画像の表示に成功しました。さらに、この事業で研究してきたナノダイヤモンド薄膜を用いた高効率、省エネ、水銀レス(水銀less)で環境に優しい光源の開発については、ディスプレイのバックライトの研究から農業用の特殊ランプや自動車のブレーキランプなどへ、応用の可能性の範囲も広がっています。すでに事業化に向けた動きも始まり、この8月には県内企業を中心として、このナノダイヤモンド薄膜を製造する企業が設立されました。

また、平成16年4月に分譲開始した高知テクノパークは、高知工科大学の隣接地という立地条件から、大学との共同研究や優秀な人材の確保を目的とした企業の進出が進んでいます。

さらに、昨年、JSTサテライト高知が開設され、今年4月には県内の産学官連携の推進や研究成果の事業化を支援していく高知COE推進本部が財団法人高知県産業振興センターに設置されるなど、ソフト、ハード面ともに県内における産学連携を推進する体制が整ってきました。これら関係機関と十分に連携をとりながら、各プロジェクトから生まれたシーズを生かし、付加価値の高い新技術、新商品の開発を通じて、地域産業の活性化を進めていきたいと考えています。