2006年11月号
連載4  - 大学発ベンチャーの若手に聞く
インターンシップを体系的に支援する
舩川 治郎 氏(デジット株式会社)に聞く
日本初の本格サーチエンジンを中心としたビジネスを原点にIT系企業に学生をインターンシップとして派遣した。今ではインターンシップを総合的に支援するベンチャーへと、さらにはコンサルティング業務、大学側が求める就職支援事業へと拡大している。

今、大学の役割が問われている。大学が学生に課せられるミッションは果たして何だろうか。米国ではほとんどの大学が「有力企業に送り込める学生を養成すること」を中心に掲げ、「具体的な実績を見せること」をクオリティとしているところが多いと聞く。一方、わが国では、長年にわたって研究者を養成することを一義としていた嫌いがあり、大半の卒業生が企業に就職する現状で、今その在り方が問われている。

具体的な施策として「インターンシップ制度」がある。学生が在学中に企業などで一定期間自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行う教育制度のことで、学生と企業とのミスマッチを防止したり、若者の職業感や就業意識を高めることを狙っている。

インターンシップ支援事業を始めた動機
写真1

写真1
     代表取締役社長
     舩川 治郎氏

今回紹介するデジット株式会社*1は、インターンシップ教育を総合的に支援するシステムをビジネスとして確立したベンチャーだ。学生を企業に送り込んだ原型は10年前にさかのぼる。社長の舩川氏(写真1)は早稲田大学を卒業しインターネットの世界に飛び込んだ。当時では耳慣れないサーチエンジンの開発に慶應義塾大学のコンピューターを利用した。「日本を変えるインターネットの仕組みを作ろう」とパソコン通信(当時はそう言っていた)で全国のハッカーに呼びかけ集まったのが優秀な学生たちだった。わが国では初の本格サーチエンジン「NIPPON SEARCH ENGINE」が1995年11月17日にリリースした。社長の舩川氏はこれを中心としたビジネスを考えた。ITインフラや機器の普及が進んでいない当時としては、設備投資に多額の費用が必要とされたが、それを理解する投資機関もなく構想を断念せざるを得なかった。ちなみに米国ヤフーとソフトバンクがヤフージャパンを設立するのは1996年の1月で、その年の4月に日本でリリースしている。グーグルが米国でリリースしたのが1998年9月、日本では2000年9月であった。

舩川氏は高い能力を持った学生を活かすために、資金をあまり必要としないオーダーメードのシステム開発の受注へと方向転換した。半分の納期で高い品質に仕上げられた製品が、実は学生の仕事であることを知ったクライアントは、彼らを企業のプロジェクトの一員として迎え入れるようになった。これが当初IT系の企業に学生をインターンシップとして派遣する原点となった。

インターンシップ支援事業の現在

以来、業種はIT系にとどまらず今やメーカー、商社・不動産、金融、通信・マスコミ、コンサルティングと広範囲だ。

登録学生数が2万5,000人を超え、ようやく利益が出るようになってきた。現在事業の中心は有料で事業支援に学生を派遣すること。しかし、舩川氏は「インターンシップとアルバイトは違う」と言う。学生はインターンシップを経験し、企業で働くには何が足りないかを見つけ、それを大学に戻って勉強し直すことができる。ポジティブに物事を考え、目的をはっきりさせるのがインターンシップのメリットだ。

舩川氏は学生の能力、可能性はみんなが同じように持っていると言う。そしてその可能性を引き出すのは「スタンス」を磨くことだと言う。会社案内に、スタンスとは「真剣さ・積極性・チャレンジ精神・自律性・他者への配慮」と書いてある。複雑な社会で必ずしも強いとは言えない若者にも配慮し、事前の教育システムを経て企業派遣を行う。一人ひとりの特性から職種を選びそれぞれのモチベーションを上げさせ階段を昇っていく仕組みだ。特に営業に関係する分野では、モチベーションが上がり生産性も上がる。例えばコールセンターでは2倍以上の成果が上がっている実績も見られるそうだ。

企業のビジネス派遣を中心に行ってきたインターンシップ事業は新しい展開を見せ、企業側の要請するコンサルタント業務、大学側が求める就職支援事業と拡大してきた。また、経済産業省との共同事業として、地方の学生も能力を磨くことができる「フューチャーデザインスクール」をネット上に開校した。そこにはさまざまなファシリティーが学生を待っている。

筆者の感想

舩川氏の学生を語る言葉は熱い。学生が職業を選ぶとき、その具体的な情報の少なさで本当にやりたい仕事が選べない。ほんの少し、彼らを援助することで、モチベーションを高め、幸せな人生を送る可能性を引き出すことに役立つことができる。本来は大学がその役割を担っているのではないかとも思う。その意味ではビジネスモデルとして確立することの困難さが立ちはだかるが、舩川氏の情熱と豊富なアイデアに期待しよう。

●取材・構成: 平尾 敏
(野村證券株式会社 公共・公益法人サポート部 課長/本誌編集委員)

*1デジット株式会社
http://www.digit.co.jp/