2007年1月号
特別寄稿
京都試作産業プラットフォーム
-京都における試作産業創出を目指して-
顔写真

森西 栄治 Profile
(もりにし・えいじ)

京都試作センター株式会社
第二営業部 部長


今後、日本はものづくり技術の強みを生かしつつ、世界の開発センターとしての役割を果たそう。そこで不可欠なのは試作である。オール京都の取り組みの試作プラットフォームを語る。試作、制作など大学側のニーズに試作産業が応える。

はじめに

2006年7月19日、試作産業の育成を担う京都試作産業プラットフォーム*1の中核的な組織として、京都府をはじめ、地元経済団体等により組織する京都試作産業推進会議の支援のもと、京都・関西の大手ものづくり企業を中心に27社からの出資により、京都試作センター株式会社が設立された。

この会社は、公共的な性格を保持しつつ民間企業の効率性と柔軟性を発揮する21世紀型の社会的企業(ソーシャルエンタープライズ)として、営利追求と社会的な貢献を両立させ、京都産業の発展に寄与するために、京都試作産業推進会議の各機関や大学、研究機関などと連携し、試作産業の創出を目指している。

なぜ「試作」か?

試作にこだわる理由としては、近年、ものづくりの中心が、世界の工場といわれる中国や東南アジアへシフトし、国内では製造業の空洞化問題が深刻化してきたが、これからのわが国はものづくり技術の強みを活かしつつ、世界の開発センターとしての役割を果たしていくであろうとの仮説に基づいている。開発センターでは、試作が不可欠であり、試作のニーズにしっかりと応えることができるサポートインダストリーとしての試作産業を創出することが、ものづくり中小企業が生き残り、発展できる一つの方策ではないかと考えている。

また、試作という高度なものづくりを通じて、企業にとってチャレンジすべきさまざまなテーマを見つけることができ、技術レベルの向上、人材の育成、新たなマーケットの開拓など、将来に向けた課題克服へとつながることが期待される。

試作産業創出への取り組みの経緯

試作産業創出への取り組みは、2001年7月に、京都府南部の機械金属関連の中小企業10社が試作に特化したウェブサイトを立ち上げ、京都を試作の一大産地にすることを目指した「京都試作ネット」の活動に始まる。

「京都試作ネット」の原点は、京都機械金属中小企業青年連絡会〈機青連〉(約80社の機械金属関連中小企業によるグループ)にある。今から25年ほど前、数社の下請け中小企業が情報交換の場として自主的なグループ活動を始めた。その活動は、常に自立化を目指そうとするものであった。10年余り経過して、さらに企業経営のあり方を追求しようとするメンバーが集まり、ピーター・F・ドラッカーの「現代の経営」を教科書にした勉強会を始めた。数年を経て、企業経営の基本は、マーケティングとイノベーションであり、「顧客の創造」が最も重要であることが分かり、その具体的な実践方法を模索する中で、インターネットを活用し、自らの強みを活かした新たな顧客創造の仕組みとして、試作加工に特化したソリューションサービス提供のための「京都試作ネット」を発足させるに至った。

「京都試作ネット」の活動は地域に新たなビジネスチャンスを創出し、新規取引の拡大により、地域経済の活性化に貢献するものであり、「京都試作ネット」の仕組みは、試作のニーズに応え、ソリューションを提供しようとする企業や企業グループの連携により機能するもので、新連携*2の一つのモデルにもなった。

当初からの「京都を試作の一大集積産地」にするというビジョンは、その後、京都府の試作産業推進施策へと展開されることとなり、2003年には、京都府の試作産業振興事業として、財団法人京都産業21が実施機関となり、試作に関する市場調査が行われ、2005年には、同様に試作産業創出事業として、試作産業プラットフォームシステム(試作受発注支援システム)が構築され、京都試作産業推進会議が発足した。

そのような中で、オール京都の取り組みとして、より効果的、効率的に試作産業を推進して行くためのどのような中核的な組織がふさわしいかの議論がなされた。その結果、取引を仲介し責任を負うことができる法人組織として、2006年7月に京都試作センター株式会社が設立された(図1)。

図1

図1 京都試作産業プラットフォームの仕組み

京都試作産業プラットフォーム

京都試作産業プラットフォームは、京都試作センター株式会社を中核的な運営組織として、オール京都で支援を行う京都試作産業推進会議と具体的な試作を行う試作グループ(試作パートナー企業)で構成されている。さらに、試作の発注者(顧客)との取引や折衝状況等の管理をはじめ、プラットフォームの運営や連携に試作受発注支援システムが活用されている。

当センターは、試作の依頼者からの多様な幅広いニーズと試作を受注する試作パートナー企業(主に中小企業)や大学、研究機関等の高度な技術シーズとを結び付けることを事業としており、高度な技術を持つ試作企業群の窓口として、契約、決済、機密保持などの業務が一元管理できることをメリットとしている。

また、もう一方では、試作パートナー企業の営業機能を代行し、検証された確度の高い試作案件を紹介できることと、決済を代行し、代金の回収までも行う。試作パートナー企業は、自社のオンリーワン技術に集中でき、京都試作ブランドを使用することで、品質はもとより企業イメージや信頼性が向上できることをメリットとしている。

このように当センターは、顧客に「試作を通じたものづくりのソリューション」サービスを提供することを目指しており、試作に関する専門的な相談を受ける常駐の試作アドバイザーと分野別専門アドバイザー(在宅勤務形態を含む)を組織し、充実を図っていくこととしている。

おわりに:試作と産学連携

京都試作産業プラットフォームでは、産学公の情報が集積し、コラボレーションが生まれることによる、新技術、新事業の創出が期待され、大学等の研究機関との連携も重要な課題である。従来、ものづくり中小企業にとっては、大学との連携は、敷居が高く気後れするところがあり、大学側が持っているシーズの専門性が強く、理解できる人間が少ないことから、大学のシーズと企業のニーズをマッチングさせることは非常に難しい問題となっている。

そこで、大学のシーズから接点を求めるのではなく、学内にない技術を活用した検査・分析や情報システム・ソフトウエアの開発、または研究や開発のための試作・製作など大学側のニーズに応えるところから交流を始めることが効果的だと考えられる。すでに先行して実績を上げている京都試作ネットでは、当初大学のシーズを求めて門をたたいてもミスマッチとなったが、その後、逆に研究室から試作依頼を受けて、その技術力の高さを評価され、継続的な交流が続いているケースがある。要するに自らの強みであるものづくり技術をもって、大学や研究機関にアプローチすることで、気後れすることなく、対等な産学交流が図れる。相互に理解し合える場が生まれ、人間関係が出来上がったときには、シーズを理解し、自社の技術に活用できる中小企業も多くなるのではないだろうか。京都試作産業プラットフォームを活用して、「試作」を契機とした産学連携が生まれ、相互の強みを活かしたコラボレーションにより、新たな技術や事業が創出されることが期待される。

*1京都試作センター株式会社
ウェブサイト名:京都試作プラットフォーム
http://kyoto.sisaku.com/

*2新連携
「新連携」とは、中小企業新事業活動促進法における「異分野連携新事業分野開拓」の通称であり、「その行う事業の分野を異にする事業者が有機的に連携し、その経営資源(設備、技術、個人の有する知識及び技能その他の事業活動に活用される資源をいう。以下同じ。)を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図ることを言う」(同法第2条第7項)。新連携を行う中小企業者は、主務大臣の認定を受けることによって、資金面等の支援を受けられる。
詳細は、http://www.kansai.meti.go.jp/2-1chushourenkei/shinrenkei/
index.html
または、http://www.smrj.go.jp/shinrenkei/index.html 参照。