2007年2月号
産学官エッセイ
地方の1零細企業が産学官金連携で事業化に取り組む
顔写真

小林 栄仁 Profile
(こばやし・えいじ)

仁テック有限会社
代表取締役社長


群馬県に所在する一企業の産学官金連携による共同研究から事業化までの一連の取り組みを述べる。

はじめに

これから書くことは、地方の個人創業で始めた零細企業が、産学官金連携により「高硬度かつ高精度なアルミニウム製機構部品の加工技術の確立」のテーマで、2006年8月10日付、経済産業省の特定研究開発等計画の承認を得るまでの内容である(認定番号関東0608091)。この内容をお読みいただき、こんな小さな会社でも産学官金連携に取り組めて、これならば自分の会社も可能性があると感じてもらえる会社が1社でも多く現れてくれることを願うものである。産学官金連携を考えているが、まだ取り組んでいない会社の一歩を踏み出すチャレンジのためにお役に立てば幸いである。

今までの産学官連携の事例というのは、大企業と大学等の連携、または、中小企業でも経営基盤の確立した会社と大学等の連携が多く、創業当初から産学官連携に取り組んでいる事例は全国的にも珍しいようである。

仁テック有限会社とは

仁テックは、群馬県桐生市相生町にあり、群馬大学工学部や桐生市役所、北関東産官学研究会に非常に近い所に位置している。2000年8月1日に個人事業で精密機械部品および治具、工具を取り扱う営業代理人として妻と2人で創業している。部品開発を中心とした提案型会社として、自社および連携会社の質の高い加工技術と専門知識を生かし、各企業より、試作をはじめ量産までの受注をする一方、自社製品の販売を目指している。精密機械加工で培ったノウハウと、外部の専門家との共同研究の成果を結び付け、商品開発、製造、販売を行い、2006年1月31日に有限会社として法人化し、受賞および政策支援の認定を受けるなど、積極的に行政支援を取り入れて成長している*1

共同研究のスタート

群馬大学工学部との共同研究は、2002年に財団法人桐生地域地場産業振興センター主催の経営能力強化セミナーに参加したことがきっかけである。講義の中で、群馬大学共同研究イノベーションセンターの須齋教授と群馬大学工学部教授(当時)で北関東産官学研究会会長の根津教授が産学官連携の重要性についてお話ししており、内容に同感した。学術的な裏付けが不可欠と考えて、2003年北関東産官学研究会の研究テーマ第2種に応募し採択された。その後、須齋教授の導きにより、機械システム工学科、中澤教授研究室の荘司助教授を中心に共同研究をスタートさせた。

異業種・同業種交流および産学官連携

仁テックは、大きく分けて4つの連携を進めている(図1)。

図1

図1 公的支援を活用した経営基盤創り(連携図)

1. 異業種交流と産学官連携であるニュープラザは、超高齢社会を背景に考えて福祉機器の開発を行っている(二基産業、三立応用化工、豊栄精工、K1テクノ、群馬県立県民健康科学大学(岡部先生))。
2. 同業種交流の「点倶楽部」は、精密機械加工業者3社(カマタ、シンコウギヤー)で共同営業、共同受注、共同研究(技術の伝承等)を行っている。お互いに協力し設備・技術においての得意分野をネットワーク化し、1社では成し得ないパワーを発揮することにより、受注機会の拡大と技術の向上と蓄積を目指している。
3. 経営革新計画のテーマ「アルミニウム製硬化軽量部品のブランド化」でもある、ラジオコントロールカー世界チャンピオンメカニック「ひろさか」とタイアップし商品化を行っている。グローバルニッチを目指して海外での展開も行っている。
4. 群馬大学工学部は、知の拠点として、積極的な地域的連携を図ってきた大学である。群馬大学、信州大学両工学部との連携は、2003年からスタートし、アルミニウムの可能性について表面処理技術を利用し行っている。共同研究は、アルミニウム合金表面に数μm~50μm程度の無電解ニッケルめっきを施し、各種熱処理条件にて熱処理を行った試料に対して、ニッケルめっき層の硬度評価、アルミ/ニッケルめっき層界面のミクロ組織評価、めっき層およびめっき界面部の機械的特性評価、さらにポリアセタール樹脂との耐摩耗性試験を実施し、アルミ表面に対する、無電解ニッケルめっき処理の最適条件を調査した。また、新規めっき法の開発により、さらなる高硬度層創製の可能性があり、現在研究中である。

産学官連携からの頂きもの

仁テックが産学官連携を通して頂いたものは、アルミニウム製硬化軽量機構部品の製品化である。アルミニウム製の歯車やネジといった機構部品は、素材そのままでは摩耗が早いということで実用化が進んでいなかった。大学と共同研究を進める内で、ラジオコントロールカー用の歯車として製品化し、現在は、産業用部品(ベルトコンベア用の歯車等)としても受注を拡大している。

それと一番の頂きものは、「信用」である。創業当初は、あらゆる意味で信用力がないということで事業展開に苦労し、その「弱み」の部分を産学官連携に取り組むことにより「強み」に転換できたと考えている。これからは「創造」、「連携」、「チャレンジ」で次のステージに向かいたい。

おわりに

会社規模が小さいためか、実用化につなげるための体制整備が不十分とのことで、なかなか国の委託事業を確保できない。従って今後は、受託に向けて群馬大学、信州大学両工学部と桐生市経済部産学官推進室および財団法人群馬県産業支援機構と連携を深め、よりよい体制を考える必要がある。最後に、産学官金連携にご指導・ご協力いただいた産学官連携機関および地元の金融機関に厚く謝意を表したい。

*1
【認定】
2002年 群馬県1社1技術の選定事業者(群馬県)
2004年 1社1技術の更新(群馬県)
2005年 経営革新計画の承認事業者(群馬県)
2006年 特定研究開発等計画の承認事業者(経済産業省)
【助成金・補助金・委託事業者】
2001年9月 独立行政法人雇用・能力開発機講
中小企業雇用創出人材確保助成金
2002年12月 群馬県新製品企業化支援対策補助金
2003年4月 北関東産官学研究会 共同研究第2種
2004年6月 群馬県新製品特許権化支援対策補助金
2004年6月 群馬県新製品企画支援対策補助金
2004年7月 (財)群馬県産業支援機構「商品化・事業化可能性調査事業」
2005年9月 群馬県新製品特許権化支援対策補助金
【販路開拓支援】
2005年10月12日~14日
東京ビッグサイト
中小企業総合展2005inTokyo出展支援(群馬県産業支援機構)
【受賞】
第2回(2004年度)モノづくり部品大賞 奨励賞受賞(日刊工業新聞社主催)