2007年6月号
巻頭言
顔写真

清水 勇 Profile
(しみず・いさむ)

独立行政法人 工業所有権情報・研修館
理事長



第2ステージに入った産学連携

最近、20年後のわが国のあるべき姿を見据えて『「イノベーション25」中間とりまとめ』が報告された。これによれば、基礎研究の多様性を確保し、イノベーションの“種”となる思いもよらぬ新発明、新発見を生み出し、その成果を速やかに市場に届けるために、異分野の融合と大学、企業等異なるセクターの人々が協働する“場”(エコシステム)の形成が大切と述べられている。このことは、産学連携の促進がイノベーション創成にとって要の活動であることを示唆している。わが国の産学連携事業は大学技術移転促進法(TLO法)が施行された1998年以降に本格化し、2004年の国立大学の法人化を契機に、多くの研究大学が特許等の知的財産の機関管理と技術移転によるその活用に踏み出し、確実に進展している。この活動も第2ステージを迎え、これまでの事業を正しく評価し、必要があれば軌道修正する時期を迎えた。

産学連携を劇的に促進し、国の経済再生に貢献したことで知られるBayh-Dole 法が制定されて25年を経過した米国で、いま、大学の技術移転事業の見直しの議論が盛んになってきたことは注目に値する。そこで、米国の大学の技術移転事業を推進しているJ.Frazer氏(AUTM:Association of University’s Technology Managers会長)と大学の技術移転事業に辛口の意見をもつジャーナリストであるJ.Washburn女史(University Inc.)をお招きして、最近米国で噴出している問題-研究・教育機関である大学が技術移転事業において、大学の利益の追求を優先するばかりに、研究者の仕事の“質”を落とすと同時に、本来の目的であるイノベーションの創成の阻害要因を作り出している-を中心にディベートをお願いした。もちろん、米国における産学連携事業が輝かしい経済復興の原動力になったことは疑う余地はない。だからこそ、現在、産学連携事業を見直し、より社会に貢献する事業にイノベートするための建設的意見交換が大切である。このディベートは、期待通り、わが国の産学連携事業の将来を考える上で大変参考になった。

イノベーションの源泉は「信念に基づく知識の創造」(野中郁次郎)ともいわれる。われわれが目指す産学連携はその本流を担うことが期待される。同時に、その促進は国の将来への投資であり、難しい選択を迫られる場面も多々あると思われるが、高い志のもとに忍耐強く努力することによりグローバルな知識経済競争をリードする日本の姿が見えてくるのではないだろうか。