2007年7月号
イベント・レポート
第6回産学官連携推進会議
参加者のすそ野広がり、にぎわう

第6回産学官連携推進会議が6月16、17の両日、国立京都国際会館で開かれた。例年通り2日間の日程だが、今回は会議を初日に集約した。このため効率的に参加でき、にぎわいが増したと受け止めた人が多かったようだ。

16日午前の全体会議は、5月にとりまとめた長期戦略指針「イノベーション25」をテーマにした高市早苗内閣府特命担当大臣の基調講演と東芝の岡村正取締役会長の特別講演などがあった。高市大臣は、今イノベーションが求められる理由、技術革新と社会システム改革を一体的に進めることを説明し、世界が知の大競争時代に入ったと熱く語った。さらに同指針が閣議決定されたことを強調、国策として取り組む新しい時代を印象づけた。

参加団体、参加者のすそ野は拡大

その後、4つのワークショップ、4つの分科会、さらに出展団体等によるプレゼンテーションが行われた。日本弁護士連合会と日本弁理士会合同のワークショップは3回目。今年のテーマは「現場で使える知財のポイント」で、参加者は昨年より70人多い約180人。こうした機会に勉強をしたいというリピーターも多かったようだ。展示のコーナーも盛況だった。地方独立行政法人の東京都立産業技術研究センターは初出展。この推進会議のすそ野は着実に広がっている。

2025年からの発想-今、何をなすべきか

夕方の全体会議では、分科会報告のあとのフロアとの意見交換が盛り上がった。「見本市的にシーズの発表はたくさんあるが、逆に、こんなことができないかという提案があってもいい」。最初の発言で会場の空気が引き締まったが、その後も迫力ある提言、質問が続いた。

「農林水産業、ライフサイエンスにつながる議論をしたい」、「企業のトップがほとんどいない。産業モデルにまで議論を深めたい」、「ポスドク問題へのアクションを起こすためのプラットホームをつくってほしい」、「目的は日本の基礎研究力が上がること。1対8という日米のファンディングの差をどうするのか」-。

議論の深化を望むのは推進会議への期待が大きいからである。司会の相澤益男総合科学技術会議議員は、東芝の岡村会長の「未来からの外挿」という言葉を援用し、「イノベーション25」の目標年の2025年から見て「今われわれは何をなすべきかを考えなければならない」と締めくくった。

(本誌編集長 登坂和洋)

分科会1「イノベーション」 
-イノベーション25の報告を受けて-

活力に満ち豊かさを実感できる社会を目指した長期戦略指針「イノベーション25」が策定された。本分科会はそこに描かれた20年後の日本を実現するためのイノベーション創出に関するもので、「科学技術」と「社会システム」イノベーションの一体的な戦略、異業種連携や異分野交流の仕組みの強化手法等について活発な討議が行われた。

国、企業、大学、個人等の立場でイノベーションを考えること、イノベーション(新規モデルへの不連続的移行)とインプルーブメント(既存モデルの洗練・磨き上げ)を使い分けること、どのような人材育成をするかが重要であること、世界に対しても貢献できるイノベーションであることなどが主な論点となった。またフロアの参加者からイノベーティブな仕事をする人を評価せよ、優秀な外国人を受け入れやすい社会に、若い人は外国に出て経験を積むべき、女性をさらに活用すべしなど多くの意見が寄せられた。

全体会議では討議結果報告に加え、従来日本人が不得意であった先が見えないイノベーションに対して果敢に取り組む姿勢が極めて大事と締めくくった。盛り上がった分科会であったが議論の対象が広すぎて総花的、次回からは焦点を絞るなどの工夫が必要と思った。

(戸田 秀夫=科学技術振興機構地域事業推進部 地域第二課 主任調査員)

分科会2「地域から世界を目指す地域クラスターの強化」
-クラスター形成の指導力が問われる-

分科会2は、各地のクラスターの研究統括、事業総括などが地域のクラスター形成の現状や課題等の報告の後、フロアからの質疑に答える形で海外との連携や知財のオープン性などに議論が発展していった。その中で特に注目されたのは、クラスターコーディネータなどのリーダーに望まれる指導力の議論である。

「テーマを絞り込む。ゴールを意識して進めると解決できる」、「人脈と情報を持ち、一緒にプラン化できるコーディネータが人を引き付ける」、「権限と責任が不明確なところが多い。どのようなクラスターにするか方向を明確にし、シナリオを描ける人がリーダーに」、「地域の発展モデル、ビジョンを明確に示す。若い人に夢を持たせる。そのようなロジックを組み立てないと、大学も企業も変わらないし、人々は付いてこない」等の意見が述べられた。

また、古川勇二主査から「日本のクラスター戦略は注目され始めたが、アジアのクラスターをリードする戦略までにはなっていない」との指摘もあった。

地域のクラスター形成は第2ステージに突入しており、地域のリーダーたちの指導力により格差が生じる段階に差し掛かっているのではないか。

(久保 善博=福岡システムLSI総合開発センター 館長)

分科会3「第2期を迎える大学の知的財産戦略」
-大学に真に求められるものは?-

平成15年度から大学知的財産本部整備事業(5カ年)が始まったが、今年度はその最終年度となった。これまでの5カ年は、知的財産の管理・活用のための基盤整備の期間であったが、次年度からの第2期の知的財産戦略として、[1]大学・TLOの知的財産戦略を科学技術政策の中でどのように位置付けるか、[2]基本特許を生み出すための大学・TLOの知財活動はどうあるべきか、[3]大学・TLOの知財活動の地域、国際展開をどう進めるか、を柱に議論がなされた。

今回の議論の中で特徴的であったことは、「大学は、totalとして何が求められているか」を基調として議論が展開されたことである。“オープンイノベーション時代”を迎えつつある中で、大学の研究成果をより広く普及させるための戦略的な活動が期待されているというものである。大学の本来的機能であるアカデミアとしての役割を最大限に発揮するために、大学の経営と一体的な知財活動が行われるべきとし、産学官連携活動が社会財としての大学価値の向上に貢献すべきものとの議論が印象的であった。

また、本分科会には松田岩夫前科学技術担当大臣も参加され、第2期を迎えた大学の知的財産戦略に向けての心温まるメッセージを頂戴したことも、本分科会の議論がよりスパイスの効いたものとなったのではないだろうか。

(吉国 信雄=金沢大学 知的財産本部長)

分科会4「求められる高度理工系人材」
-博士問題解決へ具体的方策を-

[1]博士人材に求められる資質、[2]人材育成プロセスの課題、[3]そして何をなすべきか、の3つの論点で議論が行われた。一芸に秀で多芸に通じる人材で、課題設定能力のある人材が求められるが、それを現状はなかなか満たしていない。また博士問題として、ポスト、情報、理解、能力の4つの不足を挙げるパネリストもいた。しかし、イノベーションを担う人材として博士人材への期待は大きい。現在は、博士については悪循環に陥っているがこれを好循環に変えるべく、具体的方策を取ることで意見が一致した。

奨学金の充実、大学院における教育の重視、インターンシップや博士セミナーを実施することによって博士学生が社会や企業を知る機会を充実させようという提案があった。また大学側より、東京工業大学の修士-博士一貫コースの実施スタートや大阪大学大学院機械工学専攻の「総合デザイン教育プログラム」の取り組みが紹介された。産学とも博士問題解決に第一歩を踏みだした印象である。

(府川 伊三郎=旭化成株式会社 顧問)

第6回産学官連携推進会議
日時: 平成19年6月16日(土)(会議の部、展示の部)~17日(日)(展示の部)
会場:国立京都国際会館(京都市左京区宝ヶ池)
主催:内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省、日本経済団体連合会、日本学術会議
http://www.congre.co.jp/sangakukan/
【会議の部の主なプログラム】
・全体会議1(安倍総理からのメッセージ紹介、基調講演=高市早苗内閣府特命担当大臣(科学技術政策・イノベーション)、特別講演=岡村正株式会社東芝取締役会長)
・ワークショップ([1]大学技術移転協議会、[2]中小企業基盤整備機構、[3]日本弁護士連合会・日本弁理士会、[4]工業所有権情報・研修館)
・分科会([1]イノベーション、[2]地域から世界を目指す地域クラスターの強化、[3]第2期を迎える大学の知的財産戦略、[4]求められる高度理工系人材)
・産学官連携功労者表彰
・全体会議2(分科会報告)
出展団体等によるプレゼンテーション