2007年8月号
海外トレンド
中小企業ビジネス海外展開への架け橋
TAMA協会が仕掛ける日米学生の連携事業
顔写真

岡崎 英人 Profile
(おかざき・ひでと)

社団法人 首都圏産業活性化協会
事務局長


TAMA協会が地元中小企業の北米でのビジネスを拡大するため、英文パンフレットづくりから取り組んだ経緯を詳しくレポートしている。

TAMA協会の海外展開支援

首都圏産業活性化協会(TAMA協会)は、活動6年目を迎えた2003年6月に「TAMA新産業創出戦略計画(第二期5カ年計画)」を策定した。目標は産産・産学連携のコーディネート案件を可能な限り事業化することである。このため、従来の産学官の連携に加えて、金融と販路開拓の支援策を充実してきた。

販路開拓支援は、中小企業の海外展開にも力点を置いた。イタリア、韓国に続き、北米でTAMA企業の製品・技術等についてセールスレップ(販売代理商)を活用した販路拡大や北米企業とのマッチングを目指してきた。交流地域はTAMA協会のコーディネータであるピンポイントマーケティングジャパン社(PPMJ社、社長 大澤裕)の拠点である米国・シアトルをターゲットとした。シアトルは航空宇宙産業、ソフトウエア、計測機器等の先端産業が集積しており、TAMA企業とのマッチングが有力だと考えたからである。

ワシントン大学(UW)との出会い

2005年10月ごろから大澤氏のコーディネートにより北米セールスレップとの連携を模索してきた。しかしTAMA企業の製品紹介英語版パンフレット(以下、英語パンフ)では製品内容を十分に米国人に伝えきれていないことが判明した。2006年2月、連携パートナー探しとワシントン大学(UW)のプログラムを活用して米国人にも分かりやすいパンフをつくるため、筆者はシアトルに出張した。

写真1

        写真1 ワシントン大学で講演をする
             筒井准教授(写真左)

UWでは、工学部・科学技術日本語プログラムの主任を務める筒井通雄准教授にお会いして、英語パンフ作成への協力を得られることになった(写真1)。

このUWとの交流を企画したのは大澤氏で、同氏は筒井準教授の授業に参加した際に、学生が日本の憲法改正の是非を問う新聞記事を題材に議論しているのを見て驚いた。試しに学生にPPMJ社の取り扱っている製品の英語パンフを見せて説明したところ、授業後に「あのパンフレットはこう修正した方がよいと思う」と提案してくれた学生がいたことから、英語版製品パンフ作成支援のスキームを思い付いたのである。

UWの科学技術日本語プログラムは、工学部の学生に日本語を勉強してもらい、日本の技術を世界に広めてもらうという趣旨で1990年前半にフォード社の会長が基金を出してできたものである。

学芸大学との出会い

TAMA協会は2006年6月に中小企業庁が提案公募した「若者と中小企業のネットワーク構築事業」に採択された。この事業は、地域の中小企業へ大学生を中心とする若者が就職することを促進するのが狙いである。提案のポイントは、中小企業の魅力を十分知っていただくために、2週間程度のインターンシップではなく、研究開発やビジネスプランの作成等について、中小企業と学生の共同作業を実施することにあった。

この事業の一環としてシアトルの英語パンフ作成プロジェクトがあり、学芸大学が積極的に協力いただけることとなった。同大学で筆者が学生にプレゼンする機会を与えられ、1名の学生が名乗りを上げてくれた。

学芸大学からワシントン大学へのリレーション

2006年10月、シアトルを中心にした北米視察を計画した。セールスレップへの販路開拓が目的だ。これには7社から応募があったが、参加企業の中には英語パンフの整っていない企業もあった。学芸大学の学生には企業の事業内容を踏まえ、2社分の英語パンフの作成をお願いした。

UWとの共同作業プログラムは、1日目が企業と学生の英語パンフ作成、2日目がUW生によりセールスレップにプレゼンする計画であった。しかし、予定の飛行機が欠航となり、翌日ロサンゼルス経由で到着したことから、計画が大幅に変更になった。

写真2

写真2 TAMA企業とUWの学生ペアによる英
     語パンフ作成およびプレゼンの打合せの様子

しかし、UW生はさすがに優秀であった。1日目はTAMA企業のHPを検索し、独自にプレゼン資料を作成。その資料をベースに2日目は午前中に学生とTAMA企業が濃密な打ち合わせを行い(写真2)、午後に学生がセールスレップにプレゼンを行い、批評を受けた。この結果は上々であった。

参加した企業の中には海外販売を行うための英語パンフ、ホームページ、CD等を作成している会社もあったが、米国人ネイティブから見ておかしい点を指摘され、改善された。また学生の見事なプレゼンテーションも功を奏して、幾つかの案件はセールスレップからの販売要望もあった。

今後の展開

本年度TAMA協会はシアトルとの交流について、日本貿易振興機構(JETRO)のRIT(Regional Industry Tie-Up Program)事業に採択された。この事業は日本と海外の中小企業の優れた技術・ノウハウなどを融合することにより、新製品・サービスの開発につなげることを目的としている。

このプログラムにより2008年2月に視察団をシアトルに派遣することを予定している。TAMA-UWの日米の学生の連携により、単なる製品の販売にとどまることなく、より付加価値の高い製品製造や技術交流を目指したいと考えている。