2007年9月号
単発記事
製品をフェアに評価してもらえる海外市場 産学官連携はグローバルな視点で
顔写真

中村 義一 Profile
(なかむら・よしかず)

三鷹光器株式会社 代表取締役会長



東京都三鷹市にある、従業員35人の三鷹光器(株)は、天文・宇宙科学分野の観測用機器製造からスタートし、産業機器、医療機器に手を広げ順調に成長してきた。現在、太陽エネルギーを利用した2つの国際プロジェクトにも挑戦している。創業者の中村義一会長は、成功の秘訣(ひけつ)は、「海外市場は製品をフェアに評価してくれる。産学連携はグローバルな視点で」と強調している。

当社は、およそ40年前の国産ロケットに搭載した観測用機器、南極観測隊のオーロラ観測機器、次いでスペースシャトルコロンビアに搭載する特殊カメラなど、当初は主として天文・宇宙科学分野の観測用機器を製造してきました。その後、産業機器を手掛け、最近では医療機器分野でも脳手術装置などを製造しています。

天文機器は光学機器技術に基づくもので三鷹光器の歴史の原点です。 私は、17歳の時に東京大学天文台に就職し、天体観測用望遠鏡などの光学観測機器の製作に従事しておりました。1966年5月、現在の会社を創業すると同時に、東京大学宇宙航空研究所が内之浦実験場から打ち上げた国内初の観測用ロケットに当社製のカメラや望遠鏡などを搭載してもらいました。同年7月に、東京大学天文台向けに日食観測用実験装置を設計製作、11月には同宇宙航空研究所が打ち上げたK-10ロケットに当社製X線望遠鏡が搭載されました。こうした天文機器の事業は、まさに産学官連携活動そのもので当社の成長期を支えました。

写真1

写真1 高解像度手術顕微鏡MM50 

産業機器については超精密技術を応用した非接触三次元測定装置の製造販売で、0.01ミクロンの世界で高い測定精度に挑戦しています。医療機器はわが社が培った技術を基に生命を預かる各種手術用システムを提供するものです。それまでは人工衛星から地球を観測する商品を提供していましたが、この分野では、地球を人の頭や人体に置き換えてみることを基本として高解像度手術顕微鏡(写真1)などを開発、販売しています。いずれも、市場が要求するものをいち早く察知し提供しています。その間、各分野でお客さまや関係者の信頼を獲得できました。

商品に対してフェアな評価をする海外マーケット

当社の業績がいままで順調に伸び発展してきた要因は、わが社の製品をフェアに評価してもらえる海外マーケットを対象に事業を展開してきたことにあると考えています。国内の産業構造には、中小企業が成長するためには大きな制約とリスクがあり、中小企業がなかなか安心して挑戦できない構造になっています。本来、産業政策を担当する省庁や自治体は、旺盛なアントレプレナーシップをもつ中小企業を大企業とは異なる視点で積極的に育成すべきです。しかし、現実には短期間で成果を求めることから安全サイドを指向する傾向があり、大企業側の支援に回ってしまいがちです。

また、産業界にあっては、大企業が中小企業との間でEqual Partnershipの関係を認めようとせず、力に物を言わせて下請けとしての関係を強要したり、中小企業の技術をうまく取り込んでしまいます。これでは、中小企業はリスクが大きく、安心して協調できないわけです。その点、海外の企業やマーケット・顧客は中小企業といえどもフェアに扱ってくれます。

例えば、当社が提携関係にあるライカやカールツァイスなどは双方が協力して開発した商品には三鷹光器の商標もちゃんと表示してくれますが、国内の大企業でそのような扱いをしてくれることはまずありません。よって、海外のマーケットで海外の企業と一緒になって挑戦する方がやり甲斐がありますので、どうしても海外に目を向けて事業を展開することになります。結果的にはこれが当社の業績を伸ばしています。

国内の中小企業にとっての産学官連携のあり方と伝えたいメッセージ

当社は成長過程にあり、いまだ企業として成功したとは思っておりません。現在も太陽エネルギーを利用したエネルギーソリューションワールドを実現するために、2つの国際プロジェクトを進めています。地球環境・エネルギー対策に貢献するオーストラリアとの石油代替燃料計画と、バーレーンなどとの海水の淡水化・農業計画プロジェクトです。あえて申し上げるならば、産学官連携活動は、国内に限定することなくグローバルな視点で進めていただきたいと思います。特に、国内は制約が多く何かと閉塞感があり、これを個別の企業が解決するのは並大抵ではありませんから、当初からフェアな競争ができる海外マーケットで事業展開することを考えていただきたいと思います。

聞き手・記事編集: 藤井 堅
(東京農工大学大学院 技術経営研究科 非常勤講師/本誌編集委員)

企業情報
・商号:三鷹光器株式会社
・所在地:東京都三鷹市
・URL:http://www.mitakakohki.co.jp/index.html
・代表取締役社長:中村 勝重氏
・設立:1966年5月
・売上高(平成18年度):およそ18億円
・従業員数:35人