2007年9月号
編集後記

ある経済誌に「イノベーション=ハイテク この認識は間違いです」と題した米国識者のインタビューが掲載されていた。産学官連携もハイテクやビジネスと直接等式で結ばれるものではなく、技術とサービス、営利と非営利を含む非常に多様な形態が存在しうる概念と認識すべきだろう。実際に大学側でも理工系分野ばかりでなく、人文系分野での活動が盛んになってきている。そもそも理系、文系という区分け自体が陳腐化しているのかもしれないし、最近では教員養成系大学と金融機関の連携も見られる。一段と裾野を広げていく産学官連携の事例を盛り込んでいくのが「旬の素材を使った幕の内弁当」である本ジャーナルの真骨頂だと考えている。

(伊藤委員)

「市場を視野に入れた製品開発」へと産学連携がシフトをはじめたといわれている。ビジネスの世界から見れば当然の発想で、市場を前提としない製品開発などありえない。世界レベルで競争している企業では、アイデア段階から市場・顧客を視野に入れた製品開発を行うことが常識である。これは、価値創造(製品開発)プロセスにおける「価値の選択・提供・伝達」のシークエンスとして、すでに20年前に、多くの論者により指摘されている。わが国の産学連携でも、ようやく「学の意識」が変わりつつあるということであろうか。しかしながら、学をあげて産学連携に邁進することになったら異常であると思う。おそらく、数パーセントの研究者が産学連携に熱意をもってくだされば、経済的には十分な成果が上がるのではあるまいか。

(川村委員)

東海クラスター特集でお話を伺った豊田中央研究所の技術移転ノウハウは面白かった。「トヨタさんは変わりましたね、と中小企業がびっくりしています」と、推進役である加藤隆幸さん。同グループの影響力なのか、異業種の有名企業も相次いでこの「産産連携」を学びにきているという。眠っている保有特許を活用したいという意識は産業界に広がっているようだ。大手企業から中小企業への新タイプの技術移転を生かしたビジネスモデルが定着するかもしれない。この連携が、クラスター事業の牽引車になっているところが興味深い。こうした記事をもっと取り上げていきたいと思う。

さて、8月号の編集後記でお出ししたクイズ(?)の答えです。文中に隠れていた阿久悠作詞の曲名は12曲でした。

(登坂編集長)