2007年10月号
巻頭言
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後藤 芳一 Profile
(ごとう・よしかず)

独立行政法人 中小企業基盤整備機構
理事



中小企業に届く産学官連携

中小企業に届く産学官連携に取り組んでいる。技術が高度・専門化し、競争がグローバル化するなかで、限られた経営資源で速い対応が求められる。産学官連携は、その有力な対応策になる。この事情は、大手・中小企業に通じる。

特に中小企業は、わが国産業の競争力を支える役割を担う。その分、技術進歩や環境変化に高度な対応を要するが、産学官連携は十分活用されていない。その理由は、これまでの連携が、大手企業向けが中心だったことにある。中小企業には、社内の研究人材が限られる、自らの真のニーズを見つけにくい、などのハンディがある。

中小企業向けには、従来の産学官連携が「大手企業」「一部の選ばれた企業」「技術分野」「研究部門」をすべて満たすものが中心だったのを、「中小企業」「ピカ一でない企業」「技術以外」「事業部門」にも広げる必要がある。

そのため、昨年から検討して次の結論を得た。第1に、中小企業向けは、大手企業向けと別のモデルが必要。第2に、中小企業向けでは、学(大学など)と産(中小企業)をつなぐ役割が鍵。連携の機能自体は、大手企業向けより高い必要がある。第3に、つなぐ役割は、支援機関や専門人材が担う。受け手企業の水準や事業に合わせ、経営診断、技術の翻訳、デザイン、生産技術などきめ細かく提供することが必要。第4に、これら支援は市場原理では難しく、「官」の役割(例:中小企業基盤整備機構(中小機構)の専門家派遣)が要る。「産学」でなく「産学官」の連携が必要。第5に、作業の過程で、助言する専門家のクラス分けを提案。第6に、「産」「学」「官」定義も、新たに提案している。

中小企業の産学官連携を見直す気運は、昨年から広がった。同6月の産学官連携推進会議(京都会議)で、「中小の連携は、大手に比べ進んでいない」と指摘があった。中小機構は、同10月に「産学官連携推進室」(本年4月「産学官連携推進課」に拡充)を設け、検討の結果は、研究・技術計画学会、産学連携学会、「中小企業産学官連携推進フォーラム」(中小機構主催、第1回は本年3月、於東京、第2回は同6月、於京都会議の会場)で議論してきた。

科学技術振興機構とも、各大学の成果を産業界とつなぐ「新技術説明会」で説明の機会をいただくなど、密接な連携関係にある。

今夏、中小企業をめぐる産学官連携の成功事例を集めた。事業として「結果」の出たもの(経営の数字につながったもの)で、全国から約650件が寄せられた。第3回のフォーラム(10月31日~11月2日、於東京・有明)で、発表大会を行う予定である。