2007年10月号
連載  - 産学連携で世界に挑む
プレファクト株式会社(旧・株式会社白田製作所) 世界初の潤滑油を使わない直線運動軸受を開発
顔写真

西山 英作 Profile
(にしやま・えいさく)

社団法人 東経連事業化センター
副センター長/本誌編集委員


山形県東根市のプレファクト(株)は、東北大学堀切川一男教授との共同で米ぬかセラミックスを用いて、世界初の潤滑油を使わない直線運動軸受を開発。開発を通じて身につけたノウハウで世界企業を目指す。

堀切川教授との出会いが転機

プレファクト(株)(2006年4月設立)の前身の株式会社白田製作所は、1974年に下請け企業として山形県天童市に創業した。プレファクト(株)が技術開発型ベンチャー企業へと転換を図るきっかけとなったのは、東北大学堀切川一男教授との出会いであった。

1996年に白田良晴社長が当時山形大学助教授であった堀切川研究室を訪れると、米ぬかを原料とする炭素材料が置いてあった。早速、白田社長は自社の主力製品である軸受に使えないかと検討した。米ぬかを焼き固めた炭素材料(RBセラミックス)は軽く、硬く、耐摩耗性に優れ摩擦係数が低いという特性を持っていることがわかった。こうして(株)白田製作所と堀切川教授との共同研究がスタートした。

JSTの助成事業で開発に弾み

1996年当時、中小企業が国立大学と共同研究をすることは非常に少なかった。このため、研究開発の申請の相談をしても中小企業はほとんど相手にしてもらえなかった。(株)白田製作所が山形県の主催した首都圏での展示会に出展したところ、科学技術振興機構(JST)のアドバイザーが関心を示し、1997年の独創的成果研究育成への申請を持ちかけられた。早速申請し、見事採択され、RBセラミックスの基礎がここで作られることになる。

1998年には、(株)白田製作所はRBセラミックスを用いて世界初の潤滑油を必要としない直線運動軸受の開発に成功し、現在、食品・薬品製造の機械への導入や、半導体・液晶関連分野の洗浄工程等に活用された。2001年には国立天文台ハワイ観測所「すばる望遠鏡」の赤外線分析装置の稼動部にRBセラミックスを利用した無潤滑直線運動軸受に採用された。また、長野オリンピック(1998年)でボブスレー日本代表チームが採用した低摩擦のランナー(氷と接触する刃)もRBセラミックス直動軸受の摩擦理論の応用製品である。

山形県庁から助手として山形大学地域共同研究センターに出向していた小野浩幸副センター長のコーディネートもあって、三和油脂(株)(山形県天童市)が1996年にRBセラミックスの量産工場を立ち上げる等、事業化に向けた体制が本格化していった。ご存知の通り、白田社長は、2007年度の産学官連携功労者表彰で堀切川一男東北大学教授、三和油脂(株)とともに科学技術政策担当大臣賞を受賞している。

RBセラミックスで身につけた高精密加工技術が企業再生のエンジン

1999年に親会社の業績不振から(株)白田製作所は和議申請に追い込まれた。再生できる企業は極めて少ないと言われる中、(株)白田製作所は見事な再生を遂げた。その原動力は、RBセラミックスの開発を通じて身につけたさまざまな超精密加工技術であったという。

RBセラミックス直動軸受は加工が難しい素材である。このため、RBセラミックスを用いた直線運動軸受の開発を通じて、さまざまな素材を超精密加工できる技術を身につけていった。この特徴ある超精密加工技術を用いて、市場は小さくても、付加価値が高い製品開発の受注が可能になり、企業再生のエンジンになった。

また、東北経済連合会が主導した東北ベンチャーランド推進センター(2001年度~2005年度)の支援対象企業となったことで、(株)白田製作所は単なる下請け企業ではなく、技術開発力が高いベンチャー企業であるという認知も高まったことも大きかったという。

スイス シュネーベルガー社とパートナー契約

スイスは人件費が高く、資源の少ない国だが、一人当たりの所得は高く質の高い豊かな経済力を誇っている。このスイスの経済力を支えているのが技術力の高い中小企業である。これらの企業は高い技術力で市場規模は小さくても付加価値の高い分野を切り開いている。

その代表的な企業である、スイスのシュネーベルガー社と(株)白田製作所は、パートナー契約を2001年に結んだ。シュネーベルガー社は、直線運動軸受の草分けで、高精度ガイドの規模とシェアでは、世界ナンバーワンと言われている。世界に冠たるシュネーベルガー社とのアライアンスは、高精密加工技術が世界に認められた証と言えよう。白田社長は、スイスの企業をモデルとし、高い技術力で市場規模は小さくても付加価値の高い製品群を次々と生み出したいと意欲的だ。

さらなるイノベーションの創出に向けて

2002年度に仙台市にJST研究成果活用プラザ宮城(現・イノベーションプラザ宮城)が設立され、第1期(2003年2月~2005年9月)の育成研究として高木敏行東北大学流体科学研究所教授と共同で「鏡面ダイヤモンドによる新しい滑りの創出」に取り組んだ。

本事業では、ダイヤモンドの硬さを利用することにより無潤滑で摩擦の少ない滑りを実現し、次世代半導体製造に必要とされるクリーンルームや油の使用不可な高純度な分野への応用を目指している。既にプロトタイプもできており、現在は量産技術の確立に取り組んでいる。プレファクト(Prefact)とは、precision(精密)、factory(工場)を略した造語である。つまり、超精密加工技術を誇る工場という意味だ。プレファクト(株)は米ぬか、ダイヤモンドを用いた新しい滑りの開発を通じて、技術ノウハウをさらに蓄積し、世界的な技術開発型企業に向けて着実に前進している。

プレファクト(株)の概要(所在地:山形県東根市 URL:http://www.prefact.co.jp/
代表取締役:白田良晴氏 設立:2006年4月
資本金:4,720万円 従業員数:35名