2007年10月号
イベント・レポート
イノベーション・ジャパン2007-大学見本市
展示会、新技術説明会は大学の研究成果をビジネスにつなぐ仕組みとして定着-展示会来場者、前年比12%増の3万2,000人

“わが国最大規模の産学マッチングの機会”を旗印とする「イノベーション・ジャパン2007-大学見本市」が9月12~14の3日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された。今年が4回目で、来場者は大幅に伸びた。

イノベーション・ジャパンは、技術シーズをパネル、映像、資料、デモンストレーションなどで見せる「展示会」、技術シーズについて研究者自らが実用化を展望したプレゼンテーションを行う「新技術説明会」、産学連携、技術移転、技術経営などさまざまなテーマに関する「講演・セミナー」-の3つの部門で構成している。いずれの部門もにぎわいを増し、今回の来場者総数は前回より4,510人(11.4%)多い4万4,160人だった。初日の12日昼過ぎに安倍首相の辞任表明のニュースが流れたが、不安定な政局の影響はみられなかった。

46の都道府県から参加
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イノベーション・ジャパン 来場者数の推移

この見本市の中心である展示会展示数は391(前回は366)。このうち大学関係は研究成果が257、知財本部が70だった。展示会来場者は3万2,150人で前回より12%ほど増加した。

新技術説明会は、(独)科学技術振興機構(JST)が東京本部で継続して実施しているもの(平成18年度18回。19年度は29回開催予定)と同じスタイルで、発明者による実用を展望した説明のほか、未公開特許、説明会後の個別面談などが特徴である。JST東京本部で開催している説明会の高い知名度、人気が追い風となり、イノベーション・ジャパンでの受講者数が伸びているとみられる。

展示会、新技術説明会に出展・発表の応募のあった大学・機関について、最低1つは採用しているので、参加者の幅が広がっている。今回は、46の都道府県から参加があった。

展示会、新技術説明会では、「大学関係者は実務部隊が中心となり、気構えが変化している。年間スケジュールに組み込んでいるし、次につなげたいという意欲が強い」(JST技術移転促進部シーズ展開課)。前回に手応えのあった大学等が、展示会や新技術説明会などに周到な準備で臨み、それがさらに大きな成果に結び付くという好循環になっている。大学の研究成果をビジネスにつなげようとする仕組みが定着したといっていい。

「金沢大学の場合、いくつかの技術シーズは他の展示会でも紹介したが、これまでは手応えがあまりなかった。今回の反応は想像以上。会場が東京であること、幅広い分野の人が気楽に立ち寄れる雰囲気であることが要因か」(吉国信雄・金沢大学知的財産本部長・教授)という。

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多くの人でにぎわう展示ブース

展示のノウハウも向上しているようだ。「技術分野ではITのゾーンに通行しづらいくらい人が集まっていた。デモに長けた展示が多かったからかもしれない」(伊藤伸・農工大ティー・エル・オー株式会社代表取締役社長)という面もあるし、「各展示のタイトルが具体的でわかりやすくなってきた」(黒澤宏JSTイノベーションサテライト宮崎館長)ということもある。具体的なタイトル(研究成果の名称)をみると、ナノテク・材料では「溶射技術を利用した撥水性環境対応皮膜の開発」(北見工業大学)、医療・健康の最初は「医薬合成原料光学活性アルコールの高純度合成法の開発」(北海道大学大学院)といった具合である。

こうした大学等のプレゼンテーションの技術が向上している背景には、JSTのノウハウが活用されているという側面もある。応募様式など提出資料の作成の過程で反映されている。

また、従来の大学発ベンチャーゾーンに加え、協賛したジャスダック証券取引所やマイクロソフトが借り上げたスペースに多くのベンチャー企業が出展、大学の展示に劣らず見学者が集まった。

地域、中小企業に届く産学連携の始動か

講演・セミナー関係について、藤井堅・東京農工大大学院技術経営研究科非常勤講師は「今年の傾向は相当に変化している印象をもった。産学連携による人材の育成、地域や中小企業に届く産学連携活動の始動ではないか」と語る。

セミナー関係はテーマ、講師・出席者などに大きく左右されるが、全体として、一時の熱気のようなものが冷めてきたように感じた人が多かった。省庁、大学でこれまでの産学官連携の成果に対する評価、総括がしきりに行われているが、「産学官連携」を取り巻く環境の変化も、セミナーへの関心度に影響しているのかもしれない。

13日午後に開かれた「大学知的財産本部成果還元祭~今後の産学官連携の戦略的な展開に向けて~」は幾つかの講演とパネルディスカッションで構成されていた。今年度で知財本部事業が終了するので、来年度の予算や人材の手当ての継続などに注目が集まっていた。

JSTのシーズ展開課は今後のイノベーション・ジャパンのあり方について、「参加機関や技術の展示のさらなる拡充を図りたい。また、要望があれば、海外の大学の研究成果展示を検討し、大学発ベンチャーゾーンを活性化したい」と話しており、産学連携によるイノベーションの創出・新産業の創出を目指す「大学見本市」としてさらに盛り上げていく意向である。

(本誌編集長:登坂 和洋)

日時:平成19年9月12~14日
場所:東京国際フォーラム (東京・有楽町)
主催:(独)科学技術振興機構(独)新エネルギー・産業 技術総合開発機構
共催:文部科学省、経済産業省、 内閣府、日経BP社