2007年11月号
巻頭記事
友景肇福岡大学教授は半導体企業・技術者のオープンネットワークの中からビジネス連携をコーディネート
顔写真

久保 善博 Profile
(くぼ・よしひろ)

福岡システムLSI総合開発センター
館長/財団法人 福岡県産業・
科学技術振興財団 顧問

福岡大学の友景教授は、半導体関係の企業や技術者を広範にネットワークし、その中から数多くの共同研究開発の組織化やビジネスアライアンスの橋渡しを成功させている。

福岡大学工学部電子情報工学科の友景肇教授(写真1)は、デバイス実装研究会*1を核に、九州はもとより全国の半導体関係の企業や技術者を極めてオープン型でネットワークし、新しい技術情報やビジネス情報を共有している。そのネットワークの中から企業や技術者の的確な組み合わせをプロデュースすることによって、数多くの共同研究開発やビジネスアライアンスを実現している。

デバイス実装研究会の会員は約1,600名に
写真1

写真1 デバイス実装研究会で説明を行う友景肇
     福岡大学教授

友景肇教授が「デバイス実装研究会」を立ち上げたのは、1998年4月である。そのきっかけは、(独)科学技術振興機構(JST)の地域結集型共同研究事業(1997~2002年)のデバイス実装グループの研究リーダーとして取り組む中で、シリコンアイランドと言われている九州の半導体関連の中小・中堅企業の技術が、微細加工など世界の半導体技術の高度化に対して遅れていくのではないか、との危機感を抱いたことだった。

「デバ研」と略称で呼ばれているデバイス実装研究会の当初の会員はわずか25名であった。数カ月に1度の割合で、国内の企業などから講師を招き、技術情報の講演会や技術プレゼンテーションを行った後、懇親会で情報交換を行う。こうした方式の研究会を40回以上続け、現在の会員数は、九州に600社以上ある半導体関係の企業の技術者を中心に1,600名を超えている。そのうち33%は九州地域以外のメンバーである。メールリンクによる開催通知のみで、毎回70名から100名余りが集まる。

デバ研の参加者は、技術課題や問題意識を共有、メンバー同士で話が通じる関係ができている。また個別のビジネスアライアンスが進んでいる。

国際ワークショップMAPやNPO法人STMの組織化

友景教授は2000年からアジアを回る中で、急速に伸びている東アジア、東南アジアの半導体関係企業と九州・日本の半導体関係企業は相互に切磋琢磨(せっさたくま)する必要性を痛感し、2001年から「半導体実装国際ワークショップMAP」(International Workshop on Microelectronics Assembling & Packaging)*2を福岡県内で開催している。今年で7回目になる。日本のほか韓国、中国・香港、台湾、タイ、マレーシア、シンガポール等の企業が技術プレゼンテーションと展示会を行う。また、MAPは、九州とアジアの半導体実装企業のデータベースを作成。毎回印刷物にして配布している。MAPにおける商談成功率は非常に高い。

MAPは毎年実行委員会を組織して運営されていたが、2006年にはASTSA(Asia Semiconductor Trading Support Association)*3を結成し、MAPの運営母体とするとともに、各国の半導体産業組織と経済協力促進のためのMOU(戦略的提携覚書)締結などを行っている。

さらに、投資家や銀行などに九州や全国の半導体企業の正当な評価を行ってもらうことが重要と考え、デバ研やMAPの中核メンバーに呼び掛け、2004年に友景教授を理事長とする「NPO法人半導体目利きボードSTM(Semiconductor Technology Marketing)」*4を設立。銀行等からの融資等のための企業の技術評価レポートの作成や九州外のユニークな企業とのビジネスワークショップなどを開催している。

共同研究開発の組織化とビジネスアライアンスの実現

友景教授は、デバ研の中から企業や技術者の的確な組み合わせを仕掛け、1997年から5年間の地域結集型事業に続き、2002年から5年間の知的クラスター創成事業(第1期)での「SiPモジュール設計技術の確立」、2006年から2年間の地域新生コンソーシアムでの「ワイヤレス装置開発」、2007年から知的クラスター創成事業(第2期)での「半導体実装プラットフォームの研究開発」に取り組むほか、全国の企業を対象にSiP(System in Package)基板設計の標準化を進めるSIPOS(System Integration Platform Organization Standards)委員会やDFM(Design for Manufacturability) 研究会に取り組んでいる。

これらの研究の中から実用化された製品やビジネス化されたものも多い。新しいベンチャー企業も創出されている。

図1

図1 友景教授のデバイス実装研究会を核とするネットワーク活動、研究活動

さらに、デバ研やMAPなどの交流の中から、友景教授による紹介で大企業や海外企業と地元の中小・中堅企業、ベンチャー企業との間でビジネスが成立した事例は数知れない。

これらの共同研究開発やビジネスアライアンスは、技術課題に対する洞察力と技術や企業に対する目利き能力をバックに発揮される友景教授のプロデュース力によって実現されている。

「情報と人が集まる接点にいることが面白い」

一般的に、オープン型でネットワークを広げていかないと、相互にマッチングする企業と出会えるチャンスは少なくなる。一方、オープン型で集めていくと相互に競合する相手も入ってきて、マッチングを進めることが困難となる。

オープンネットワークには前述のような特徴があるにもかかわらず、友景教授がその中から共同研究開発の組織化やビジネスアライアンスの橋渡しに成功している原因は何であろうか。

友景教授は語る。「大学という中立的な立場にある者として、人を紹介することが使命と思っている。日本人は結構シャイで、名刺交換すらできない人が多い。また、九州などの半導体企業の優秀なエンジニアが楽しく働ける場を作りたい。そのため仕事をうまく回す仕組みづくりを作りたいという気持ちが、デバ研などのネットワークづくりに力を入れている私のモチベーションである」

すなわち、現場の半導体技術の課題等を積極的に吸収し、課題解決をしていく研究者・大学人としての役割を果たしているわけだが、彼は一言でそれを「情報と人が集まる接点にいることが面白い」と言う。

また、気をつけていることとして「さまざまな情報を聞いた時、他にも流してよい情報は積極的に周りに流していく。漏らしてはならない情報は決して漏らさない。その切り分けがないと信頼を失うし、いったん信頼を失うと、情報は入らなくなる」と述べている。

ネットワークの拡大に必要なオープン性と、共同開発や個別企業の技術課題あるいはビジネスマッチングなどの情報についての徹底したクローズド性とを瞬時に切り分けることで核心の情報が集まる信頼性を構築してきたといえよう。その信頼性の構築には、彼の研究者としての技術に対する高い目利き能力がバックにあることはもちろんである。

さらに友景教授は、「少しでも技術やビジネスが面白いと感じると、即断即決ですぐに会社を訪問してみるなどスピードが大事である」「ボランティア的なことばかりやっているように見えるが、高度な技術を持っていながらマネージメントが悪くて日本の企業は海外に負けている状態を、戦略的に何とかしたい、ということで次から次に仕掛けをしている」とも語る。

友景教授の、現場の技術やビジネスに対するあくなき探求心と、アジア、そして世界まで見据えた戦略的なプロデュースの努力が、単なる“コーディネーター”に終わらない成果を実現しているといえる。

*1デバイス実装研究会
http://www.tl.fukuoka-u.ac.jp/~tomokage/MAPO/framepage1.htm

*2半導体実装国際ワークショップMAP
http://map-and-rts.com/blog

*3ASTSA(Asia Semiconductor Trading Support Association)
http://www.astsa.jp/

*4NPO法人半導体目利きボードSTM
http://www.npo-stm.com/