2007年11月号
特集  - 中小企業の技術・経営をお手伝い
東京都北区と板橋区が岩手大学と組んで地元中小企業向けに「ものづくり夜間大学」を開催
顔写真

河西 敏 Profile
(かさい・びん)

東京都板橋区 産業活性化推進室
産業活性化推進担当係長


健康・医療・福祉関連産業の活性化を目的に共同でプロジェクトを推進している東京都北区と板橋区。両区が岩手大学と提携して地元中小企業向けに「ものづくり夜間大学」という講義を始めた。今年のテーマは「金型」で、基盤技術の強化が狙いだ。

岩手大学との連携の経緯

東京都の北区と板橋区は、両区にある地域資源を活用して、健康・医療・福祉関連産業の活性化を図るため「KICC(キック)プロジェクト」を平成16年度から実施している。このプロジェクトの中の産学連携事業の一環として、岩手大学からシーズ情報の提供を受けるなど同大学との連携を進めてきた。岩手大学工学部は、中小企業との連携の実績があり、両区の基盤技術を強化する目的で、2007年6月13日に「ものづくり夜間大学の実施に関する協定書」を岩手大学と両区との間で締結した。今年度のものづくり夜間大学は、国内で初めて創設された大学院工学研究科「金型・鋳造工学専攻」の講師を中心として、「金型」をテーマに実施している。

「ものづくり夜間大学」の概要
写真1

写真1 ものづくり夜間大学講義の様子

講義は両区の施設を会場に7月11日から11月28日までの20回、毎週水曜日の午後6時30分から8時までである(写真1)。次の4つのコースがある。

[1] 「温度測定および金型伝熱解析の基礎と応用」
[2] 「射出成形における工程と成型技術」
[3] 「金型製造に関する各種加工技術」
[4] 「成形材料と金型表面技術」

各回の講義の翌日などに希望する受講企業に講師が訪問し、企業の抱える具体的課題について現場で話し合う機会を持ったことが大きな特徴である。

定員は各コース20名だったが、[3]のコースは42名、[1]のコースには24名の申し込みがあったので、岩手大学のご協力を得て、会場の収容人数が許す限り受け入れた。

受講者の横顔

金型の製造企業に限らず、金型を使用する企業等も参加している。受講者は、中小企業の社長など役職者、技術者、営業担当者等であるが、多くは金型製作に携わっている技術者である。なお、この技術者には、企業の若手や事業の継承者が多く見受けられる。

受講企業の状況

金型企業は次のように大きく3つに分類できる。

[1]自社製品を作るために金型も自社で製造している企業、[2]金型の試作品など少量の金型を製造している企業、[3]携帯電話など、頻繁に製品のモデルチェンジがあり、寿命が短い製品に開発段階から金型製造までかかわり、短期間に金型を製造できる企業、である。

金型製造機の高性能化と日本からの中国、韓国への技術、ノウハウの移転により、金型の90%は両国の企業で製作できるとも言われる。両国のこうした追い上げにわが国企業は危機感を強く持っている。

受講企業は、今回の講座を通じて、金型製造技術の向上、自社ノウハウの充実・強化を図ろうとしている。

岩手大学の講師に訪問してもらい、抱える具体的課題の解決に取り組む企業や、新たな企業間連携、大学との連携を模索する企業などもある。

両区の狙い

「ものづくり夜間大学」は、ものづくり中小企業の事業主や社員を対象に、一般教養講座ではなく、技術の高度化や課題解決など実務に役立つように、体系的に技術を学んでもらうのが狙いである。

複数の自治体が行政区域を超えて連携し、さらに大学と共同で事業を運営実施する取り組みは先進的な事例であり、大学の高度な技術力と知識が両区の町工場の技術力の向上につながることを期待している。

「金型」はすべての製品の元になるものであり、「ものづくり夜間大学」を契機として、生み出される多くの製品を「城北地域ブランド」として普及していきたい。そして、「ものづくりの伝統ある地域」のさらなる発展、振興を目指していきたい。

岩手大学の狙い

岩手大学は、これまでの地域中小企業との連携をさらに横展開することにより、地域企業とWIN-WINの関係を構築できる両区のものづくり企業との連携を目指している。

そのため、講義に加えて実施している技術相談や企業訪問は、首都圏企業の技術動向や課題を把握する機会として、また、企業との継続的な連携を探る場として極めて貴重である。

今後は、受講企業が学生のインターンシップ受け入れや共同研究への参加、教員の仲立ちによる受講企業と県内企業との連携、さらには受講企業の子弟等が本学に入学するなど、より緊密で永続的な連携が図られるよう取り組んでいきたいと考えている。

産業構造、製造業の特徴
【北区】
北区は、明治期から石神井川、千川用水の水資源を利用する紡績工場、製紙工場、軍需工場の火薬・火具製造所等が設けられ、関連して金属製品、機械部品などが集積した。戦後には衣服、印刷、化学、金属など多様な工業集積で特徴付けられ、都市型工業の典型として北区に根を張った。
【板橋区】
板橋区は、戦前には軍需目的とした火薬製造や光学兵器などの工場が数多く立地し、戦後には精密機械器具、化学、非鉄金属などを中心とした工業が盛んになり、昭和40年代ごろから印刷関連産業(製造品出荷額全国市区町村中第1位)が集積し、いずれも板橋区の代表的な産業として発展した。