2007年11月号
特集  - 中小企業の技術・経営をお手伝い
中小機構の中小企業向けソフト支援は経営経験のあるアドバイザーを前面に
顔写真

西澤 民夫 Profile
(にしざわ・たみお)

独立行政法人 中小企業基盤整備機構
新事業支援部 中小企業・
ベンチャー総合支援センター
本部統括プロジェクトマネージャー

中小企業基盤整備機構の「中小企業・ベンチャー総合支援センター」はヒト、モノ、カネ、技術、ネットワークの有機的結合を促す支援を行っている。経営の経験のあるアドバイザーを多用している。その背景、内容を紹介する。

日本の中小企業に対する経営支援の歴史は、戦前から社会保障の性格が強く、「弱者救済」「大企業との格差是正」「集団で自分を守るための高度化」という思想でスタートした。このため、小規模な新事業の創業はもってのほかということであった。1999年に中小企業基本法が改定され、弱者救済から「バイタルマジョリティ」という思想に大転換。これは1930年代に英国で提唱されていた考え方だった。すなわち、ファイティングポーズが取れ、やる気のある中小企業、ベンチャー企業を徹底的に支援していこうということである。

以上のような環境の下、「中小企業・ベンチャー総合支援センター」は1999年に当時の中小企業総合事業団(現、中小企業基盤整備機構)の中に設置され、全国に8カ所配置された。当時は中小企業施策上初めてのプロジェクトマネージャーが3人外部から招聘(しょうへい)され、加えて経営アドバイザーは300人程度を登録して始まった。現在はプロジェクトマネージャー34名(その他の施策によるものを入れると168名)、登録アドバイザー2,000名強(同3,000名強)と中小企業・ベンチャーの経営支援には欠かせないものとなっている。

ナショナルセンターの支援の特色は、ソフト支援と称して、いわゆるハンズオン支援を目指している。ここでいうソフト支援とは企業経営に必要な「ヒト、モノ、カネ、技術(仕組み、ビジネスモデルを含む)、ネットワーク」の有機的結合を促進することを支援することだ。

このために従来の伝統的経営支援、すなわち企業の内部改善を主としてアドバイスする中小企業支援専門家の活用は抑え気味にして、コンサルタントとしては経験が少ないものの経営上実績のある経営経験者によるアドバイザーを多用している。その例として、30年余りで創業者の片腕として最大手の外食産業の企業を築き上げ、株式公開を機に上席執行役員を最後に退職したばかりの人が、当機構の専門家として登録し、企業に派遣されている。また、浅野行蔵教授(中小企業基盤整備機構 北海道支部アドバイザー)のように、大企業で16年間研究に従事した後、北海道大学で教鞭をとっているような人にも専門家として登録していただいて、新製品開発等の支援を行っている。

写真1

写真1 中小企業を支援する側も知識の向上に
     努める

教科書に書いているようなことだけではなく、実務に裏付けられた生き生きとしたアドバイザーによる効果は大きい。株式公開をはじめ、新事業の立ち上げ、マーケティングなどの課題を抱える企業には、当初、「公の経営支援はたいしたことない」と思っていたところが少なくなかった。しかし、派遣された民間人のパワーにより、期待した以上の成果が上がり、一様に驚きの声をあげていた。

専門家派遣のほんの一例として、海産物加工業者に自動車メーカーで合理化に取り組んできたOBを派遣したときには、歩留まりが一挙に30%以上、上昇した。派遣した当方も驚いた。

株式公開についても、コストが合わず民間のコンサルタントのできない小規模・遠隔地の案件を取り上げ、地域の活性化に貢献している。

私どものサービスの特徴のひとつは、ソフト支援をするときに、原則として直接的には機構のカネは絡ませないようにしていること。お金は「天下の回りモノ」で銀行、補助金、ベンチャーキャピタル等、世の中にたくさんある。私の経験上、アドバイスする人が助成金、融資等のツールを持つと、中小企業経営者はアドバイスに納得しなくても、アドバイザーの言うことをよく聞く傾向があり、アドバイスが良い結果を生まないのが普通だからである。

ソフト支援による実績は、年間の窓口相談が3万社強、専門家派遣700社程度(OB派遣、販路支援、事業化支援を含む)となっている。支援先の株式公開はすでに11社に及んでおり、株式の時価総額が1千億円を超した企業も複数ある。

利用料金は何回ご利用いただいても「窓口相談」は無料だ。専門家派遣は1日1万6,700円、企業等OB人材派遣は1日8,000円と大変利用しやすくなっている。

課題解決のために気楽に当センターをご利用いただければ、必ずや得るものがあると確信している。