2007年12月号
特集2  - 八尾のものづくり
工業用刃物大手の塚谷刃物製作所が産学官連携で「光学シート材打ち抜き用の金型」開発に取り
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工業用特殊刃物メーカーの株式会社塚谷刃物製作所は、関西大学を管理法人とするコンソーシアムを組み、研究に取り組み始めた。テーマは「液晶用特殊シート材高精度打ち抜き用次世代被膜コーテッド金型の開発」。同社はこれまで刃物の打ち抜き負荷や金属疲労などについて大学との共同研究を続けてきたが、コンソーシアムに参加することで研究の幅を広げ、これまでとは違ったモデルの刃物事業に結び付ける狙いだ。

顔写真

   塚谷俊哉 社長

工業用特殊刃物メーカーの株式会社塚谷刃物製作所(本社・大阪府八尾市)は経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」の認定を受け、本年度から関西大学を管理法人とするコンソーシアム(法認定事業者は同社)を組み、産学連携で研究に取り組み始めた。テーマは「液晶用特殊シート材高精度打ち抜き用次世代被膜コーテッド金型の開発」。情報家電などに使われている光学シート部材に同社の「打ち抜き」技術を生かして次世代金型を開発するのが狙いだ。同社はこれまで工業用刃物の打ち抜き負荷や金属疲労などについて大学との共同研究を続けてきたが、コンソーシアムに参加することで異業種とのネットワークを築き、研究の幅を広げ、これまでとは違ったモデルの刃物事業に結び付けたいという狙いもあるようだ。

28カ国に輸出、輸出比率は22%

同社には3つの事業の柱がある。コンピューターからプリントアウトされる帳票類(宅配便、クレジットカード、ガソリンスタンドの伝票など)にミシン目やパンチ穴をあける「ビジネスフォーム刃」、段ボールや紙器を平面展開図通りに打ち抜く「トムソン刃」、それとシール・ラベル、液晶フィルム反射板などを打ち抜く「エッチング・ダイ」(商標は「ピナクル・ダイ」)である。

国内シェア(市場占有率)はビジネスフォーム刃が90%、トムソン刃が50%。ピナクル・ダイは1995年参入という後発でありながら、すでに60%(いずれも同社推定)という。

中国、韓国、米国など主に28カ国に製品を輸出している。輸出比率は22%である。

エッチング加工の刃を立てる技術に優れる
写真1

写真1 ピナクル用マグネットシリンダ&プレート

写真1のマグネットロール部に巻き付ける鋼板製刃物がピナクル・ダイ。四角の模様が並ぶ線の部分が「刃」だ。その刃で台紙に張り合わされたラベル(シール)だけを打ち抜く。

もともとエッチング・ダイと言われている通り、この刃物は鋼板を用い、刃になる部分以外を腐食させて(エッチング加工)凹凸をつくる。腐食しない部分が尖って刃になるわけである。

写真2

写真2 エッチング断面(エッチ
     ングしただけのもの)



写真3

写真3 ピナクル断面(シャープ
     ニングを施したもの)

しかし、エッチングだけでは切れ味がいまひとつ。そこで、細いペンシル状の工具を回転させて刃部を作成して、シャープな切れ味を出す(写真2、写真3)。同社はこの刃を立てる技術に優れ、短期間に大きなシェアを獲得したようだ。「刃の部分の高さを均一にするのが難しい。高さの誤差は±3ミクロン以下」(塚谷俊哉社長)という。

加工は、一般の刃物と同様に、荒加工→仕上げ加工の手順で行う。最適な加工・管理手法をデータ化。工具も自社でつくり、ソフトも自社開発した。すべて受注生産で、納期は「約2日から」と短い。毎日400~500パターンをこなしている。

先行して新しい市場を開拓

戦略的基盤技術高度化支援事業で同社のこうした技術を最大限に生かすとともに、その技術のさらなる可能性を探る方針だ。研究テーマは、ディスプレー部品で重要な役割を果たす各種光学シート部材について、低価格でオンデマンドの供給を可能にする次世代型の金型を開発すること。

こうしたテーマの研究が求められているのは、情報家電の開発販売競争激化に伴ってモデルの寿命が短くなると同時に低価格化が進み、部品の供給面から製品メーカーをサポートする必要が出てきたため。わが国のエレクトロニクス産業の国際的競争力維持に結び付ける狙いだ。

同社がトムソン刃を製造開始したのが1957年、ビジネスフォーム分野に参入したのは1961年。そして1995年のピナクル・ダイ(エッチング・ダイ)参入となるが、塚谷社長は「いずれの分野も高いシェアを獲得し事業を拡大できたのは、それぞれの分野で事業を始めたタイミングがよかったことも大きな要因。先行して新しい市場を開拓できた」と語る。

だがこれまでと同じように、既存のビジネスの延長に未開の新市場が現れるとは限らない。産学連携をキーワードにして、これまでの流れとは違う新しい事業の芽を探っていく方針である。

(本誌編集長:登坂 和洋)

(株)塚谷刃物製作所の概要
(本社所在地:大阪府八尾市 URL:http://www.tsukatani-hamono.co.jp/index.html
代表取締役社長:塚谷 俊哉氏
設立:1960年12月12日(創立:1951年)
資本金:9,000万円
売上高:60億円(2006年度)