2007年12月号
編集後記

全国的なブームで始まったわが国の産学連携は第2ラウンドに入った。今、産学連携を推進する人材の確保と品質が問われている。例えば、ベンチャー支援に対する日米の違いは、その志に共感して集まる人たちの質の違いだ。わが国では、未知の可能性に賭けるより安定した大企業を選ぶ風土がいまだに根強い。知的財産本部、TLO、大学発ベンチャー等がそのミッションを達成するための国家的な人材戦略が望まれる。民間からも声を上げなければならないが何よりも当事者である大学、なかんずく学長からの切実な声が必要だ。

(平尾委員)

科学技術政策研究所が研究者や有識者に行った意識調査(定点調査)によると産学官連携は「総じて昨年に比べ活発化している」ものの「民間から大学への課題発信も民間の技術的課題への大学の関心もあまり十分ではなく」、「日本は大学の技術課題の解決能力が米国に比べ」高くないと評価されている。

しかし、これらの課題に対しては同じ調査での「産学官連携の高まりは大学の教育・研究に良い効果をもたらし」、「産学間の情報交換や知的刺激は増加している」との評価がヒントになるだろう。産学官連携が「学」をどのように活性化し「産」への自発的な関心を高めていくのか、「産学官連携が学にもたらすもの」についても考えて行きたい。

(渡邊委員)

今朝の新聞の歌壇の一首目は「晩年は今かもしれず落ち葉降る道に色なき風浴びて佇つ」。「晩年」は本人にもわからない。科学者である選者の永田和宏氏は「ひょっとしたら今が、と思わせるまでに落ち葉の秋がさびしいのか」と評している。翻って産学官連携。多くの領域で着実に、深く浸透しつつあるにもかかわらず、関係機関のいら立ち、焦りは強い。中央省庁の施策、予算に大きく左右される側面があるからである。産学官連携をライフステージに例えると、いま、どこに立っているかが判然としないという点では、引用した短歌に通じるところがある。

変化は激しいが、今も生きているメッセージを過去3年間の記事から拾い、今月号に掲載した。産学官連携の不易と流行とは―。お屠蘇相手に考えてみようか。

(登坂編集長)