2008年1月号
巻頭言
顔写真

小島 順彦 Profile
(こじま・よりひこ)

三菱商事株式会社
代表取締役社長



新産業イノベーションを目指して

グローバルなレベルでの業界再編や資源ナショナリズムの台頭、ファンド資金の流入など、世界の事業環境は急速なスピードと規模で変化している。また、地球環境保護と持続的な経済成長の両立といった人類にとって未経験の課題も生まれている。大きな変化の時代にあって、企業であれ、政府であれ、いかなる組織においても、常に新しい産業・ビジネス、新しいテクノロジーといったイノベーションへの取り組みが欠かせないものとなっている。今日の発想とやり方の延長線上に、明日はないのである。

とは言いながら、イノベーションを日常の中で生み出すことは容易なことではない。何よりも自由で多様な発想とこれらを融合させる環境づくりが大切である。特に固定化された組織ではイノベーションを生み出すことは難しい。常に組織の変革を行い、人材を流動化させていくことが必要である。米国のシリコンバレーにおいて盛んに新しいビジネスが起こるのは、人種、国境を越えた有能な人材が常に流入し、切磋琢磨(せっさたくま)を伴ったコミュニケーションの中から新しいイノベーションが生まれているからに他ならない。

三菱商事では、2007年4月に5つの既存事業グループに加え、新たに「イノベーション事業グループ」「新産業金融事業グループ」を設立し、社内の多様な人材を集結させた。これは出身母体が異なり、さまざまな業種で経験を積んできた人材同士のインタラクションを通じ、新しいイノベーションを生み出すことを狙ったものである。社外においては企業だけではなく、大学、研究所などとの連携を通じ、R&Dとインキュベーションを行いながら技術的イノベーションに取り組んでいる。特に40年間近く続いている米国バテル記念研究所との提携と、2004年7月以来続いている東京工業大学との包括連携契約は、製造業でない商社として特筆するべき活動であると思っている。実際にバテル記念研究所とは、IT分野における新規技術の開発により大きな成果を上げた実績がある。

日本の産業が国際的な競争力を維持していくためにも、組織間の壁を取り払い、国全体としてイノベーションを生み出しやすい環境を整えていかなければならない。特に縦割りの意識が強い日本において、産学官の連携は大きなブレークスルーになるものと思っている。