2008年2月号
単発記事
学生の創作活動の幅を広げる
-東京芸術大学が地域のものづくり産業と交流-
顔写真

坂下 直樹 Profile
(さかした・なおき)

墨田区地域振興部商工担当
産業経済課産業振興担当 主任主事


ものづくり企業が集積する東京都の台東、荒川、墨田、葛飾4区は合同で産業活性化事業「TASK(タスク)プロジェクト」を推進している。東京芸術大学はTASK地域内の企業と共同で、商品開発や継続的な交流を目的とした事業を始めた。同大学にとっては学生の創作活動の幅を広げるのが狙いである。

大学と4区が協働

東京の東部、隅田川を挟んだ台東、荒川、墨田、葛飾の4区は、古くか ら日本のものづくりを支えてきた町として知られる。現在も東京23 区の ほぼ3分の1の工場が集積。伝統工芸職人も多く存在しているこの地域で は皮革、金属、布、紙、ゴム、木、プラスチック、ガラスなどさまざまな 素材を加工し、多種多様な製品を製造している。

上記4区は平成17 年度から合同の産業活性化事業TASK(タスク)プロ ジェクトを推進している。この地域で培われてきたものづくりの熟練技術 や高度な技能と、新しいデザイン力や協働力を集結させて東京の消費者に 生活商品を提供するのが狙いである。

図1

      図1 TASKプロジェクト・東京芸術大学
          交流事業の狙い

その一環として、TASK プロジェクトと東京芸術大学(以下、東京芸大) 社会連携センターはこのほど、東京芸大の財とTASK 地域内のものづくり 企業の財とが結び付いた商品の開発や受発注等への発展、学生等との継続 的な交流を目標とした事業を共同でスタートさせた(図1)。

120 年にわたって日本の芸術界をリードし続けている東京芸大は、この TASK 地域である台東区の上野にある。多様化する学生の創作活動の幅を 広げるには、この地域、東京芸大の周囲に存在するさまざまな素材の加工・ 製造技術は非常に有益である。一方、地域企業にとっても部品加工などの B to B から、生活用品などの自社 製品を開発・販売するB to C へ の転換や伝統工芸の新たな可能性 の模索には、高度な企画力・芸術 性・デザイン性などの付加価値が 必要となる。

そのような相互のニーズから両 者はこれまでさまざまな交流を行 ってきた。平成18 年2月と4月 には東京芸大の教員によるTASK 地域内のものづくり現場見学会を 開催。同年7月には企業側53 名 と学生・教員ら51 名が参加して、 企業による自社事業や製品のPR、 パネルディスカッション(テーマは「企画・デザインとものづくり企業との出会い」)、懇親会などを行った。

それらのかかわりの中で、TASK地域のものづくり企業と東京芸大が協働して高度なものづくりはできないか、というお互いの意識が高まり、平成19年10月から定期的な交流会を行うこととなった。

企業と学生がものづくりを語らう交流会

この交流会の目的は、両者がものづくりに関するお互いの意欲をさらに高めていくことができる環境づくりと、両者の財が結び付いた魅力あるものづくり・魅力ある商品開発を目指すことである。平成19年10月に行われた第1回目は、TASK地域の企業側31名と東京芸大の学生・教員ら41名が参加し、東京芸大美術学部などを会場に行われた。

図2

写真1 交流会の様子

今回は、TASK地域内の企業に東京芸大の活動を知ってもらおうと、東京芸大の概要説明や、彫金・鍛金・鋳金・漆芸・陶芸・染織など美術学部工芸科の工房見学が行われた。その後の懇親会は、宮田亮平・東京芸大学長も参加し、参加企業が自社製品を当日直接会場に持ち込んでその技術力を学生にPRし、同時に学生は自身の作品を展示し、お互いのものづくりについて熱心に語りあった(写真1)。

交流会の効果と期待

交流会後に参加企業・学生双方にアンケートを行ったところ、約73%の企業がこの交流会が自社の事業・新商品開発などに役立つと回答した。一方、参加した学生等については、約79%がこの交流会が日ごろの学習・創作活動等に参考になったと回答するなど、今後の発展が期待される結果となった。

実際、交流会終了後には、学生や教員から企業に対し製品開発などの相談があったり、企業の商品開発に対する東京芸大側のアドバイスや自社社屋の壁面を東京芸大の教員がアート化する計画などの交流が始まっている。

今後は企業・大学双方のニーズをさらに充足させるべく、このような交流事業を行い、それと平行して、商品の製作・販売条件、販路などについても検討していく予定である。