2008年2月増刊号
特集  - 地域のイノベーションを支援する各省の新年度予算
科学技術振興機構
「シーズ発掘試験」を拡充、また、地域企業のニーズに即応する研究開発支援制度を新設

水野 充 Profile
(みずの・みつる)

独立行政法人 科学技術振興機構
産学連携事業本部 地域事業推進部
業務調整課長


図1

図1 地域イノベーション創出総合支援事業

独立行政法人 科学技術振興機構(JST)の地域事業は図1 の「傘の絵」にあるように、JST イノベーションプラザおよびサテライトを拠点として、シーズの発掘から企業化開発までの総合的かつシームレスな支援を行っている。これが「地域イノベーション創出総合支援事業」である。


平成20 年度は、イノベーション創出のためのシームレスな支援を強化 すべく、

1. シーズ発掘試験の拡充(「発展型」の新設)
2. 「地域ニーズ即応型」の創設を重点に実施する。
1. シーズ発掘試験

「 シーズ発掘試験」は、研究者に1 件あたり200 万円の研究費を提供 する。特徴は以下の3 つになる。

簡略な申請書類
使い勝手の良い研究費
研究者とコーディネータの連名による応募→コーディネータが以降の実用化をサポート

この事業は、大学などの研究者に応募が簡単で使い勝手の良い研究資金 を提供すると同時に、コーディネータが大学の先生にコンタクトしやすく することを狙いにしている。コーディネータの活発な活動や、大学一丸 となっての応募などのおかげもあり、立ち上げから3 年間の応募件数は 3,752 件、5,621 件、6,018 件と伸び、研究者の間では「使える制度」と して定着しつつある。

平成20 年度は前年度と同じ1,250 件を採択する予定だ。また、シーズ 発掘試験で文字通り掘り起こされたシーズを発展させるため、シーズ発掘 試験「発展型」を新設する(このため、従来型を「発掘型」と呼ぶ)。

「 発展型」は過去にシーズ発掘試験に採択され試験研究を実施した課題を さらに発展させ実用化につなげるために、1 課題あたり500 万円の規模で 次のステップの研究を実施する。平成20 年度は36 件採択の予定である。

発掘型・発展型ともに、3 月14 日(金)締め切りで、平成20 年度課題 を募集中である。応募は以下のURL から簡単に行える。

http://www.jst.go.jp/chiiki/seeds/index.html


2. 地域ニーズ即応型
図2

図2 地域ニーズ即応型

現在、地域においては地元の中堅・中小企業を支援するために多くの機関が協力してさまざまな取り組みが行われている。「地域ニーズ即応型」は、このように地域企業のニーズに密着した支援活動を展開している機関(公設試等)を中核として地域企業の新商品・サービスの開発等に役立つ研究開発を実施する。必要であればプラザ・サテライトが、これまでに蓄積したシーズ情報などを活用しながら、全国の大学等から最適なシーズ、研究者を紹介する(図2)。

募集は平成20年度上期開始、1課題あたり300~500万円、60~100課題程度採択する予定である。


地域イノベーション創出総合支援事業のこれ以外のプログラムは、平成19年度とほぼ同規模で実施する。

育成研究(平成20年夏募集開始予定:1課題あたり2,600万円/年、2~3年)

大学と企業が連名で応募し、実験室レベルのプロタイプづくりまでを目標にした研究開発を行う。プラザ・サテライトの研究施設が利用でき、館長(プログラムオフィサー)やコーディネータのサポートが受けられる。

研究開発資源活用型(平成20年4月募集開始予定:1課題あたり3,000万円~1億円/年(同額の負担あり)、2~3年)

地域における研究成果、設備、人材等の研究開発資源を活用し、育成研究に続くフェーズとして、1~3年間の研究開発で実験室レベルのプロトタイプを実機レベルのプロトタイプまで仕上げることを目標にする。

地域結集型研究開発プログラム(平成20年4月募集開始予定:1課題あたり2.1~2.4億円/年(同額の地域負担あり)、5年間)

地域(都道府県あるいは政令指定都市)が主体となって、企業化の必要性が高いと考える研究開発課題について産学官が文字通り結集して取り組む。平成9年度に始まった「地域結集型共同研究事業」のスキームを変えたものだが、それ以前に比べてテーマがぐんと絞り込まれていること、目的が基盤作りではなく企業化であることなどが特徴である。企業化に必要な要素(ものづくりであれば材料、加工、計測、制御など)を全て含んだ大型のプロジェクトになる。

おわりに

平成20年度はJSTの地域事業の開始から20年、元祖コーディネータ事業と言われる(自負する)地域研究開発促進拠点支援事業(RSP事業)からは12年だ。JSTの最初の技術移転事業である委託開発が今年50周年を迎えることと比べると、地域事業はまだまだ歴史の浅い事業である。言い換えると、成熟・飽和しておらず、改善・改良の余地が残されているということだ。JSTの地域事業はこれからも進化し続けなければならないし、プラザ・サテライトはその拠点として、地域の科学技術振興にかかわる全ての方々にとって頼れる存在となることを目指している。