2008年3月号
単発記事
立命館大学が松竹、京都府と連携
映像人材の育成、研究開発を通じて京都から文化発信
本年度、本拠地の京都市衣笠キャンパスに映像学部を新設した立命館大学が、松竹、京都府との産学官連携で、「文化の創造」、「京都から世界への日本文化発信」を目指している。その背景は?

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大森康宏 学部長

松竹株式会社、立命館大学(学校法人立命館)、京都府の3者は「映画・映像」による連携を進めている。きっかけは平成19年度、同大学が映像学部を新設し、映画などコンテンツビジネスと直接かかわるようになったこと。映画関連施設が集積する同市・太秦地域との連携を模索するなかで、同地域に撮影所を有する松竹グループ(松竹京都映画株式会社、松竹株式会社)と条件が折り合い、映像人材の育成、映画・映像技術の研究開発を目的に「連携基本合意書」を締結。これを京都府が理解、支援し、産学官連携で京都を中心とした文化の創造・発展、京都から世界への日本文化発信を目指す。立命館大学にとってこの3者連携の意義は何か。京都市・衣笠キャンパスに映像学部を訪ねた。

映像学部の特徴は?

表1 松竹と立命館大学の連携の5つの柱

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同学部の学科は「映像学科」だけで、1学年150人。力点を置いているのは映像分野におけるプロデュース能力。デジタルとネットワークの時代に適応し、アート、技術、ビジネスを総合的にマネジメントできる人材を育成する。学生の進路は[1]映像文化の研究者、教育者、資料保存・管理の専門職 [2]コンテンツプロデューサー、映像産業の実務家 [3]映画、コンピューターグラフィック、アニメーション、ゲームなどのクリエーター [4]放送局の映像系技術者、システムエンジニア、映像技術の開発者—など。


「映像というとビデオを思い浮かべる人が多いかもしれないが、さまざまなものがある。映画、アニメーションをはじめ、多くの技術、さまざまな役割の人を組み合わせてつくりあげるものがほとんどだ。求められているのはプロデュース能力。文理融合の映像教育に当学部の意義がある」
(大森康宏学部長)

学生が現場を知る意義は?
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冨田美香 副学部長


松竹グループと連携して進める主な事業は「デジタル分野の共同研究」や「松竹グループでのインターンシップ実施」など5つ(表1)。学生にとってはいずれも映像ビジネスの現場の空気に触れ、プロの発想を見聞きできる機会である。従来のやり方だとキャンパス内で完結するが、そうした閉じられた大学、教育ではなく、社会、現場の雰囲気を感じながら学べることが、この連携の特徴である。インターンシップではほかに東映株式会社京都撮影所、株式会社如月社(京都シネマ)、株式会社東北新社と提携しており、ゲーム制作会社、映像制作会社などとも検討している。


「プロの施設、設備は学生の実習では使えない場合もある。天井が高いなど安全面の問題があるからだ。松竹京都撮影所内に映像学部学生の実習施設ができるので、プロの人々が動き回る現場の空気を感じながら学ぶことができる。学生の姿勢にも影響するし、将来設計にプラスとなるだろう」
(冨田美香副学部長)

なぜ、京都の地域連携か?

衣笠キャンパスのある京都市はわが国の映画、ゲーム産業を生み出し、高い映像表現技術を蓄積してきた映像文化の発信拠点。同市太秦地域に撮影所を持っている映画会社は松竹と東映。このことは、立命館大学映像学部にとっての地の利。裏を返せば、仮に太秦の映画拠点の勢いが弱くなったり、なくなったりすると困る。それは京都市、京都府にとっても事情は同じ。ここに松竹、立命館、京都府という3者の連携の意義がある。

松竹は京都撮影所をリニューアルする(平成21年2月竣工予定)。対象面積約1,800坪だが、このうち650坪を立命館大学が利用する(実習施設として利用できるステージ2棟、編集施設、教師区など)。


「太秦地域の映画関連施設を活用し、京都の映像文化を活性化できればと考えている。映像学部衣笠キャンパスがある(京都市北区)等持院地域は、今の太秦の映画施設集積の発祥地でもあり、そこをわれわれが利用させていただくことは歴史的、文化的な意義がある」(冨田副学部長)

社会が求める映像人は?

わが国の映像文化は1950年代から80年代、アジアのなかでは先端だったが、90年代以降、映画、アニメなどを中心に韓国、中国、シンガポールなどが急速に台頭してきた。わが国のコンテンツビジネス関係者の危機感は強く、大学への期待も強い。


「社会の隅々まで浸透している音楽文化と比較すると、映像表現にかかわろうという人の裾野はそう広くない。映画にみられる芸術文化、映像メディアに関する技術、映像コンテンツビジネスなどの総合的な知識と体験を持ち、映像の心得を持って創造的な活動をする人材が今の日本に必要とされている」(大森学部長)

(本誌編集長:登坂 和洋)