2008年5月号
編集後記

産官学連携、企業間連携など、経済活性化の切り札的手段として「連携」の重要性が叫ばれている。ただ、連携推進を狙いにした各地の組織やフォーラム、セミナーなどを見ていると、連携を成功させるためには何が不可欠かの本質を問う論議が不十分ではないか、との思いを強くする。肝心なのはメンバー相互の信頼関係の構築であり、一時の利害打算で連携が成功するはずはない。では、どうすれば信頼関係を築くことができるか。単純なことだが、お互い信用できるまで議論を尽くすこと。それに加えて、各自が「自己犠牲」の心構えを持ち、本心から実行することではないかと思うのである。

(編集委員・鈴木 博人)


本誌4 月号に博士人材のインタビュー記事を載せた。また、人材育成の調査で3 月に英、独、米3 カ国の4 大学、2 学会を訪問した。各国とも大学・大学院教育に力を入れていることが印象的であった。もう1つ印象に残ったのは、大学関係の統計数字がしっかりしていることである。化学専攻の応募者数、入学者数、学位取得者数、卒業後の進路等が、学部、修士、Ph.D のすべてについて数字が経年的にポンポンでてくる。日本も化学、物理等の分類はあるが、その他分類が極めて多く部外者には役に立たない。学科の名前が融合的、学際的になったため、その他ばかりになってしまったのである。人材育成の議論のベースとなるさまざまな統計的数字の充実が望まれる。

(編集委員・府川 伊三郎)


特集は太陽光、風、小さな川などを利用した発電。印象的なのは欧州、とりわけドイツがこうした自然エネルギーを機軸に据えており、向こう20~30 年でエネルギー地図が劇的に塗り替わりそうなこと。政策の評価はさておき、産学官民の方向性がそろっていることが企業の研究開発や市場開拓に影響するのは当然だろう。片や、太陽光や風力を補助的なエネルギー源と見るわが国。太陽電池の技術、市場を切り開き世界をリードしてきたわが国メーカーの存在感が後退しつつある。この異変が一時的なものであってほしいが、「頑張れ」とメーカーを激励するだけで成果を期待するのは酷である。「官」や「民」は産業界をどう支援できるのか、その間合いの難しさを思った。

(編集長・登坂 和洋)