2008年6月号
特集  - 科学で地域を元気にする
科学技術による地域活性化戦略

総合科学技術会議
基本政策推進専門委員会
地域科学技術施策ワーキ
ング・グループ事務局


総合科学技術会議の有識者議員は、平成19年11月に「科学技術による地域活性化~地域の自立と共生に向けて~」という政策提言を取りまとめ、同月に開催された総合科学技術会議において「各府省、地方公共団体、独立行政法人などが推進する地域科学技術施策全体を俯瞰(ふかん)しながら、地域イノベーションの創出を強力に推進するための、国としての総合的、戦略的な対応が不可欠である」旨を提起した。

これに対し、総理から、具体的な戦略作りを進めるよう指示があった。これを受けて、総合科学技術会議基本政策推進専門調査会に地域科学技術施策ワーキング・グループを設置し、検討を開始した。今般、戦略とともに、同戦略を実行するための工程表(ロードマップ)を取りまとめた。

まず、第1章で、地域科学技術施策の現状と課題を整理した。ここでは、特色ある地域の取り組み事例を取り上げ、成功要因を明らかにした上で、さらなる発展に向けて解決が必要な課題を抽出した。

第2章では、地域科学技術施策の現状分析・認識を踏まえ、次のような基本的視点を示した。

1. 地域の主体性確保~国の役割は地域の取り組みを支援するための基盤整備~

各地域には、固有の地域資源や歴史的経路を背景として、さまざまな産業、技術、人材などの集積があり、また、その集積の相互作用によって、多様な地域経済や文化をはぐくんできた。国の地域科学技術施策は、それぞれの地域が、それぞれの実情を踏まえて進める、地域主体のイノベーション創出に向けた取り組みを支援するものでなければならない。このことによって、地域の独自性と国全体としての多様性が確保され、ひいてはイノベーティブで強靱(きょうじん)な国家を形成することにつながる。

2. 国の役割 ~グローバル拠点への重点投資~

国には、前述1.に述べた、地域主体の取り組みに対する支援に加えて、国全体の科学技術施策、イノベーション政策等の観点から、グローバル競争に伍してわが国の成長センターになり得るような「グローバル科学技術拠点」候補に対して、政策資源を戦略的に重点投入することにより、強い拠点をより強くする、という国の成長戦略に沿った重要な役割がある。

3. 地域科学施策の目指すビジョン ~地域拠点のエコシステムの形成~

科学技術による地域活性化を図るためには、科学技術の発展と絶えざるイノベーションの創出が、国のさまざまな地域において、自立的、持続的に進展することが必要である。そのためには、地域に存在するさまざまな科学技術拠点が、それぞれの特徴や強みを活かして成長を遂げ、わが国に、多様性のある地域科学技術拠点群が形成されることが、そして、そのような多様性の中から、世界に伍して、わが国の成長センターとなり得るような、いわばグローバル型の科学技術拠点が育ち、発展することが、それぞれ必要である。そして、これらのさまざまな拠点が、互いに競い合い、協調することによって、強靭でダイナミックな「地域拠点のエコシステム」が形成されることを目指すべきである。

第3章では、上記のような基本的視点に立って、「地域拠点のエコシステム」が形成されることを目指すべきである、とのビジョンを実現するための戦略を提案した(図1)。

1. 多様性強化戦略(戦略1)
図1

図1 地域拠点のエコシステム

地域に存在するさまざまな科学技術拠点が、それぞれの特徴や強みを活かして、さらなる成長を遂げ、わが国に、多様性のある地域科学技術拠点群が形成されることを目指すためには、国は、地域主体の自律的発展を後押しするよう、地域科学技術施策を抜本的に、強化するとともに、地域が地域の実情に応じて自由に選択できるよう改める必要がある。

また、地域において科学技術によるイノベーションの好循環を創出し地域を持続的に活性化するという政策目標(アウトカム)に焦点を当てた、地域マネジメントを確立することが必要である。

このような、国の施策の見直しと、地域のマネジメント力の強化が相まって、はじめて、多様性のある地域拠点群の形成が可能となる。このような視点に立って、国が展開する各種の地域科学技術施策の強化策を整理した。

1. 人材育成および人材循環の強化
(コーディネーターや技能人材の育成、ポスドクの活用、奨学金)
2. 地域の多様性強化
(柔軟な地域科学技術施策、地方の大学等を支援する競争的研究資金)
3. 大学等の産学官連携機能の強化
(産学官連携体制の強化、大学等の研究施設の開放・利用促進)
4. 事業化支援機能の強化
(産学官・金融連携の強化、エンジェル税制の利用拡大、中小企業と大手企業の連携)
5. 国の制度改革
(受注機会の拡大、交付金措置、大学発ベンチャーに対する出資、試験研究設備の共同利用、補助金で整備した施設の地域活性化事業への転用)
6. 情報システムの利活用促進
(地域科学技術ポータルサイトの充実、府省共通研究開発管理システムの活用)
7. 地域マネジメントの強化
(地域ビジョンの策定、コアとなる機関がPDCAサイクルを回す、地域のコアとなる機関への支援)

2. グローバル拠点強化戦略(戦略2)

国は、研究機関、教育機関、企業、産業支援機関などの、世界水準の集積が形成されつつあり、当該先端産業分野におけるイノベーション創出の苗床として高いポテンシャルを有する拠点の中から、国際ベンチマーキングを行った上で、比較優位性が認められる拠点に対して、戦略的に、重点的・重層的な技術開発支援、産学連携施設支援、コーディネーター・特許流通アドバイザー等の人的支援等を行い、これらの拠点が、わが国の成長センターに発展するよう、地域と一体となって育てていく。