2008年7月号
イベント・レポート
産学連携学会 第6回大会
議論の深化から領域のさらなる拡大へ

産学連携学会第6 回大会が6 月26・27 日に大分県大分市で開催された。今回、100 件の口頭発表、15 件のポスター発表がなされ、当学会の地方大会としては過去最高の規模となった。

本大会の冒頭で、大分県由布市にある亀の井別荘社主の中谷健太郎氏の招待講演があった。湯布院がひなびた田舎の温泉地から全国的に著名な観光地になる過程で、そこで活動する人たちの葛藤と努力、地方行政あるいは外から流入する大資本等、周囲との摩擦を克服するさまを生き生きと描写した講演は、聴衆にとって極めて貴重なものであったろう。なぜなら、そこにいる聴衆は産学連携という、もともと目的も文化も異なるセクター同士を融合させ、時と場合によっては、それぞれの同床異夢の状態をマネージすることに苦悩し、産学連携という手段によって地域の振興を夢見ている人たちが大半だからである。

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主催者挨拶をする羽野忠大会長(大分大学長)



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招待講演

また、シンポジウムでは、プロジェクト型産学官連携の現在・過去・未来と題して、函館、浜松、大分の3つのプロジェクトに関する事例紹介があり、それぞれのプロジェクトでの事業化に至るまでの問題点や、これのシステム化をどう進めるか等の議論がなされた。本学会は、産学連携の事例の蓄積からその体系化により、産学連携の方法論の確立を目指している。今回の産学連携学会の一般発表で議論された主たるテーマは、プロジェクト構築手法、産学官連携プロジェクト、学金連携、人材育成、産学連携のしくみ、地域連携、知的財産、利益相反、インターンシップ、海外事例等であった。設立当初は地方の中小企業の研究開発を対象とした産学連携に関連した問題を取り扱うことを主眼としていたが、現在の産学連携学会が取り扱うテーマは、これに限定されず広範な領域をカバーしている。

本学会は、産学連携の事例の蓄積からその体系化により、産学連携の方法論の確立を目指している。今回の産学連携学会の一般発表で議論された主たるテーマは、プロジェクト構築手法、産学官連携プロジェクト、学金連携、人材育成、産学連携のしくみ、地域連携、知的財産、利益相反、インターンシップ、海外事例等であった。設立当初は地方の中小企業の研究開発を対象とした産学連携に関連した問題を取り扱うことを主眼としていたが、現在の産学連携学会が取り扱うテーマは、これに限定されず広範な領域をカバーしている。

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一般講演

また、地域の事例と言っても、"地域ITコミュニティ創生における大学の役割"(島根大学 丹生晃隆氏)での、松江在住の世界的に通じるプログラミング言語の開発者を軸にした産業振興施策に大学が連携した事例のように、必ずしもその波及効果が地域内に限定されない事例も発表されている。また、"地域クラスター形成の要素と発展方向"(北海道大学 荒磯恒久氏)など、地域の産学官連携プロジェクトの包括的な分析がなされている発表もいくつかあった。このような全国に通用する特色ある事例や、プロジェクトの包括的な解析に関する発表が増えていることは、発表内容の質的向上を示している。

金融機関と大学の連携は実質を問う時代へ
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全体シンポジウム

学金連携に関するセッションでは、"金融機関からみた産学連携の現状とコーディネータの役割"(豊和銀行都留裕文氏)等、産学連携にかかわる仲介者としての金融機関の在り方に関する議論が多数あり、この分野の議論の深化が認められた。

大学知財の焦点は管理・創出から活用へ

その一方で知的財産に関するセッションでは、大学知財の管理システムや知的財産権の法的側面における考察が中心であったが、"大学特許の活用の成功例分析"(長崎大学 安田英且氏)等、具体的な活用に関する事例発表が出つつあり、大学知財の取り扱いに関する問題は、管理・創出から活用の在り方にシフトしつつある。

インターンシップによる新しい教育モデル

"産学連携型の新たな教育プログラムを目指して-知的資産経営報告書の教育ツールへの応用-"(京都工芸繊維大学 中森孝文氏)では、派遣先の企業の知的資産経営報告書の作成作業から教育効果を狙ったインターンシップの取り組みの発表がなされる等、インターンシップに関連したセッションでは、従前の企業実習の概念を超えた事例がいくつか紹介された。こういった事例を関係者で共有することは日本全体のインターンシップの質的向上につながるであろう。

まとめ -産学連携は肥沃-

今回の大会では、事例の発表だけでなく、産学連携プロジェクトの事例解析に基づく理論の発表も多数なされており、さらに、この理論の"実践"へのフィードバックをどう進めるかというところに議論がシフトしつつある。その一方で、産学連携は大学と企業が共同研究・開発するという概念に留まるものではなく、その意味するところは肥沃(ひよく)である。今回の大会では、理工系に関連した連携だけでなく、人文・社会科学系の専門分野における連携活動についての発表も多数なされている。この"肥沃" な領域をどう体系知化していくか、今後の産学連携学会の活動に期待していきたい。

(伊藤 正実:産学連携学会 第6回大会 実行委員長)

産学連携学会 第6回大会
日時:2008年6月26日(木)~27日(金)
会場:コンパルホール(大分県・大分市)
主催:特定非営利活動法人 産学連携学会