2009年1月号
単発記事
小学生、高校生の起業家体験プログラム

山本 満 Profile
(やまもと・みたす)

株式会社さがみはら産業創造センター
専務取締役


ビジネス・インキュベーション施設のさがみはら産業創造センターは、夏休みに小学生、高校生を対象とした体験型の起業家育成プログラムを実施している。2008年は定員48名の小学生部門に271名の応募があった。大学生がインターンシップでその運営を行っているのが特徴だ。

「お店で売られている商品は誰かがつくってくれたものだから、大切にしよう」

「自分の力でお金を稼ぐのってこんなに大変なの? お父さんお母さんってすごい」

これは当センター(さがみはら産業創造センター)の起業家育成事業である「さがみはら子どもアントレプレナー体験事業」に参加した小学生の言葉である。このプログラムを通じて「失敗を恐れずに挑戦する心」を養い、「自分の考えで行動できる力」を身に付け、「チームワークの大切さ」「お金の大切さ」を学ぶ。

小学生部門に271人の応募

毎年8月、この趣旨に賛同する地元企業や大学生たちの協力を得て小学生、高校生を対象とした体験型の起業家育成プログラムを実施している。年々応募者が増え、2008年は定員48名の小学生部門に271名の応募者が集まるなど広く地域に定着している。

このプログラムは会社設立、マーケティング、事業計画の策定、融資、仕入れ、製造、販売、決算という経営の一連の流れを疑似体験するというもの。小学生部門のプログラムを具体的に紹介しよう。

1日目は会社づくり、商品決定、マーケティング。6名のグループごとに社名と役職を決める。役職は社長、経理マネージャー、仕入れマネージャー、製造マネージャー、マーケティングマネージャー、広報・販売マネージャー。「モノをつくるのが得意だから製造マネージャーをやりたい」「社長は責任が重くて大変そうだな…」と、初対面の仲間の様子をうかがいながら徐々に打ち解け会社づくりをスタートさせる。次が商品決定。あらかじめ用意してある商品モデルの中から会社ごと1つの商品を選ぶ。そしてマーケティング。近隣の店舗を回り「商品デザイン」「販売価格」「ディスプレー」などを学ぶ。

写真1

       写真1 緊張した面持ちで融資交渉に
            臨む子供たち



写真2

     写真2
          初めは恥ずかしそうにしているが、徐々に
          声を出して商品を販売

2日目は事業計画の策定と融資交渉。想定顧客、商品デザイン、製造方法、製造原価、販売価格などを考え、最終的にどのくらいの利益を得られるか、どのくらいの資金が必要か検討する。休み時間も惜しんで事業計画の策定に取り組む。事業計画が完成すると、本物の銀行員が窓口に座る「アントレ銀行」での融資交渉に臨む(写真1)。それまで大きな声で話し合っていた参加者も銀行員の前に立つときには緊張感いっぱい、少し「社会人の顔」になる。1回で資金調達できる会社はほとんどなく、多い会社は融資交渉が5回、6回に及ぶ。「時間内に製造できるのか」「販売価格は適正か」と銀行から厳しい指摘を受けるが、参加者は何度も再チャレンジし、最後は融資のOKが出て、資金を獲得する。融資額は平均で1万円位。

3日目は仕入れと商品製造。大学生スタッフが設営した商材屋や道具屋で前日アントレ銀行から融資を受けた資金を使って仕入れを行う。そして、商品の製造。チームそろって一心不乱に取り組むが、製造が間に合わず助っ人を雇う会社も続出する。

そして、4日目は販売と決算。地元のデパートやホームセンターの一角を借りて商品を販売する(写真2)。初めは緊張している参加者も完売を目指して声を張り上げる。商品の売れ行きが伸び悩む会社では悔しさで涙を流す参加者もいる。決算では会社として利益が出ればメンバーで分配する。自分の力で稼いだ「給料」を持ち帰ることができる。赤字を出す会社もあれば1人1,000円の給料を受け取る会社もある。

大学生がインターンシップで運営

この事業の特徴は2つ。

1つ目は大学生によるプログラム運営。この起業家育成プログラムを運営するのは募集で集まった約20名の大学生。インストラクター、ビックブラザー(BB)と呼ぶ子どもたちのお世話係、商材屋、道具屋、監督、裏方すべて大学生が担う。4月ごろから毎週のように集まり、教材や講義の開発、商材や道具の準備、スケジュールの作成などに取り組む。一般的なインターンシップと違い約5カ月間という長期にわたる活動のため、大学生の苦労は並大抵ではないが最終日には感極まり涙する大学生も多く、得がたい体験となっているようだ。

2つ目は地域企業の協力。この事業の財源は参加費、地方自治体からの補助金、地元企業からの寄付金の3つ。参加費をなるべく低く抑えるため実行委員会を組織し地元企業の寄付金を幅広く募っている。毎年100社を超える企業から200万円近い寄付金をいただいている。

当センターの創業者や若手社員の熱い思いから生まれたこの事業も地元企業、大学、地方自治体の協力を得て規模を拡大し8年目を迎えている。今後もこの連携をさらに深め息の長い活動を続けていきたいと思う。