2009年2月号
単発記事
日本新事業支援機関協議会からイノベーション
ネットへ
顔写真

梶川 義実 Profile
(かじかわ・よしみ)

財団法人日本立地センター
新事業支援部長/日本新事業支援
機関協議会(JANBO)事務局長代理

インキュベーション・マネジャーの養成を行ってきた日本新事業支援機関協議会(JANBO)が10年に及ぶ活動に終止符を打つ。JANBOの事務局を務めた日本立地センターや、科学技術振興機構、産業技術総合研究所、中小企業基盤整備機構などは4月、全国イノベーション推進機関ネットワークを創設する。これを機に、JANBOの果たした役割を振り返り、新組織の機能を展望する。

はじめに

日本新事業支援機関協議会(Japan Association of New Business Incubation Organizations:略称JANBO)は今から10年前、1999年6月に創設された。当時も、そして現在もJANBOという英文略称のほうが多くの方々に認識されていると思う。本稿では、創設以来のJANBOの活動を振り返りつつ、本年4月に創設予定の全国イノベーション推進機関ネットワーク(仮称)の概要について報告したい。

JANBO創設の経緯と果たした役割

創設当時は、バブル経済崩壊後の戦後最悪といわれる景気低迷の中で、地域経済の自立的発展を目指し、わが国経済の再生を図ることが喫緊の課題となっていた。通産省(当時)は、地域が有する技術、人材、産業集積等の地域産業資源を活用した新事業を創出し、もって活力ある経済社会の構築を図るため新事業創出促進法を制定し、各地域において新事業創出支援体制を構築することとした。この体制が、いわゆる地域プラットフォームであり、JANBOはその全国ネットワークとして創設された。

この目的を達成するため、JANBOは地域プラットフォーム事業に関する情報交換や経験の共有を図るためのセミナーや、優れた事業を顕彰するJANBO Awards事業を実施してきた。

新事業創出促進法に基づき、都道府県および政令指定都市に構築された産学官の連携による新事業創出体制は、地域が地域の資源を活かし、地域自らの将来についての発展方向を考え、具体的な政策を展開する基盤となった。地域プラットフォームは、その後の経済産業省の産業クラスター計画や、文部科学省の知的クラスター創成事業においても中核機関等として大きな役割を果たしている。JANBO Awards受賞者の中には、京都で開催されている産学官連携推進会議において、経済産業大臣賞を受賞した事例も出ている。

JANBOでは、新事業創出を図る方法として、米国で大きな成果を挙げていたビジネス・インキュベーション(BI)手法を導入し、この普及とこれを促進する人材であるインキュベーション・マネジャー(IM)の養成を精力的に行った。2000年からIM養成研修事業を開始するとともに、2001年に「ビジネス・インキュベーション将来ビジョン」を策定した。本事業は2002年度からは経済産業省補助事業として実施し、約600人を養成した。

海外とのネットワークも、アジア・ビジネス・インキュベーション協会(AABI)を創設したほか、世界各国のBIネットワークであるGlobal Network for Business Incubationのメンバーとしても活動している。

ビジョンの策定とBI・IMに関する情報発信や多彩なIM養成プログラムの実施により、わが国でほとんど認知されていなかったBIやIMという言葉が地域振興にかかわる多くの産学官の関係者に正しく理解されるようになった。

JANBOの課題と新たな展開

このようにさまざまな成果を挙げたJANBOであるが、新事業創出促進法は2005年に中小企業新事業活動促進法に継承されるとともに、プラットフォーム補助金も廃止されるなど大きな変化があった。IM研修やBI 政策の調査・研究・普及に大きな成果を上げた新事業育成専門家等養成研修事業も2007年度で終了した。一方で、2007年11月、総合科学技術会議において「科学技術による地域活性化」の提案があり、これを受けて政府では具体的な戦略づくりに取り組むこととなった。

このような状況にかんがみ、この際、地域プラットフォームの全国協議会としてのJANBOの活動に区切りを付け、地域活性化を推進することを目的として設立される全国イノベーション推進機関ネットワーク(以下、イノベーションネットと略す)に参画することとした。

イノベーションネットは、地域プラットフォーム、産業クラスター計画関連機関、知的クラスター創成事業関連機関、都市エリア産学官連携促進事業関連機関等、地域発イノベーションの推進を担う支援機関が、共通認識の下で全国的なネットワークを構築し、支援機関相互の情報共有、交流促進および共通課題の解決等に向けた活動を通じて、広域的な産学・産産連携の促進およびクラスター間の連携強化を図り、もって地域を活性化することを目指すネットワークである。

イノベーションネットの機能・役割

イノベーションネットは、その設立目的を達成するため、次の事業を実施することとしている。なお、科学技術振興機構、産業技術総合研究所、日本貿易振興機構、中小企業基盤整備機構、日本立地センターは、本ネットワークの活動を支えるための幹事機関として参画しており、関係機関が横断的なバックアップ体制を取っている。

[1] 地域発イノベーションによる地域経済活性化に関する情報収集・発信事業
[2] 会員間交流促進事業
[3] 海外関連機関等との国際交流事業
[4] 各種支援機関に属するコーディネート人材の連携促進事業
[5] 地域発イノベーションによる地域経済活性化に関する調査・政策提言・顕彰事業
[6] 会員ワンストップ窓口事業(幹事によるワンストップ窓口の設置)
[7] 各種協力事業(コーディネート人材の資質・能力向上、活用促進事業に対する協力、調査研究事業に対する協力等)
[8] その他、地域経済活性化につながる事業

おわりに

イノベーションネットは本年4月の設立に向け、会員募集を開始したところである。3月中旬には東京で設立記念事業を実施する予定であり、現在、事業計画の具体化、実施体制の構築、設立記念事業プログラムの検討を行っているところである。今後、クラスターウェブ(http://www.cluster.gr.jp/)やクラスターメールマガジン等で進捗状況をご報告したい。また、ご意見、ご要望、ご質問等はぜひinnova@jilc.or.jpにお寄せいただきたい。

なお、BI・IMに関するネットワークとして、産学官連携ジャーナル2008年7月号に掲載された星野会長の巻頭言にあるように、日本ビジネス・インキュベーション協会(JBIA)が一足先に発足した。本年2月20~21日には、JBIA創立記念シンポジウムを開催する予定である。詳細はJBIAホームページ(http://jbia.jp/katsudou.html)を参照されたい。

図1

全国イノベーション推進機関ネットワーク(仮称)体制図