2009年4月号
特集2  - ものづくり東京・大田区
多様な基盤技術が集積 従業員3人以下の事業所が半分
東京都大田区の製造業は機械金属が中心で、工場の半分は従業員3人以下。多様な基盤技術の集積を活かして多層的な企業間取引を行っている。ほぼすべてのニーズに対応できる、フルセットの基盤技術が集積しているが、工場数が減少する中でこれをどう維持するかが課題である。

東京は幾つもの顔を持っている。23区内を見ると、千代田、港、中央の3区とその周辺は金融ビジネスの中枢であり、世界にその名を知られる製造業の企業の本社が集まるが、そこからJRの電車や地下鉄で15~20分も移動すると、中小・零細の製造業の集積が見られる。東部(墨田、葛飾、足立、江戸川、荒川、台東の各区など)と並んで町工場が多いのが南部の大田区と品川区。中でも大田区の工場・従業員数は、23区内だけでなく都下市町村を含めた中でも最大だ。

サービス産業が東京の主役とはいえ、ものづくり大国日本を支えているのがこれらの町工場である。1990年代以降の、自動車、電機業界の生産拠点の海外移転に伴う国内空洞化や、後継者難という課題は大田区も例外ではない。これに加え今回の経済危機が地域企業を襲っている。

大田区の製造業の輪郭をなぞってみよう。

工場数は20年間で半減

すべての事業所を対象にした工業統計は平成17年のものが最新である。これによると、工場数は4,778。ピークである昭和58年の9,190のおよそ半分に減少している(図1)。

従業員9人以下が8割強
図1

図1 工場数、従業者数の推移

従業員規模別に見ると、3人以下の工場が全体の50%を占める。これに4~9人の工場を加えると、実に82%にも達する(図2)。

区が行った「大田区の産業に関する実態調査」(平成19年12月の報告書)は受注形態で工場を類型化している。従業員1~9人の工場は主にさまざまな基盤技術や技能による「部品加工」を行っている。


図2

図2 従業者規模別工場数の構成比

従業員30人以上の企業では「製品開発型(設計、開発、デザインの機能を持ち自社製品の売上比率50%以上)」が35.5%、「設計・製造型(設計、開発、デザインの機能を持ち設計を含む製品・加工受注が中心の企業)」が12.9%をそれぞれ占めている。このように、比較的規模の大きい開発型企業と、主に部品加工のみを行う1~9人の工場群に二極化しているともいえる。

機械金属関連のほぼすべての業種

大田区製造業の特徴は機械金属加工中心であることだ。工場数を産業別に見ると「一般機械器具製造業」が1,630工場(34.1%)で最も多く、「金属製品製造業」1,014工場(21.2%)、「電気機械器具製造業」350工場(7.3%)と続く。この3業種で60%を超えている。このほか、輸送用機械4.6%、精密機械4.1%などもある。

これらの工場の多くは特定製品の生産技術ではなく、多様な製品を生み出す基礎となる機械加工を中心とした基盤技術に特化している。

基盤技術とは切削、プレス、成形、研磨、鋳造、鍛造、金型製造など、工業製品を造る基本となる加工技術である。

つまり大田区には、機械金属加工関連のほぼすべての業種がみられるのである。今後の区内の産業振興の在り方を議論している大田区産業振興基本戦略検討委員会の報告書(平成20年12月)は次のように記している。

「受注に対して外注先は圧倒的に区内とする事業所が多く、大田区の製造業はそれぞれ広域的に幅広く受注し、区内の多様な基盤技術集積を活かして多層的な企業間取引を行っている」

「(区内に)ほぼフルセットの基盤技術の集積は維持されている」

ここでいう地域の多様な基盤技術集積を活かした多層的な企業間取引とは、縦型の下請け構造でなく、横請けのネットワークのことである。

しかし、廃業や他地区・海外への移転などで工場数の減少は続いている。この減少傾向を放置するとどうなるのだろうか。大田区製造業の特徴とするフルセットの基盤技術の集積バランスが崩れ、相互連関による広域受注等に支障を来す恐れがある。

一部の業種が欠けると影響が大きいのである。地元産業界や行政の対策が急がれる。

(登坂 和洋:本誌編集長)