2009年4月号
特集2  - ものづくり東京・大田区
市場のニーズをにらんで研究者と交流を
顔写真

熊倉 賢一 Profile
(くまくら・けんいち)

株式会社クマクラ
代表取締役会長


聞き手・本文構成:登坂 和洋 Profile

(本誌編集長)


精密機器を中心に産業用ロボットなどの設計、加工、組み立て、制御を行う株式会社クマクラは、20年ほど前から自社製品開発に力を入れてきた。いまやその比率が80%。各種の産学官連携のコンソーシアムにかかわってきた熊倉賢一会長は「産学・産産連携コーディネーター」を自称する異色の経営者だ。産学連携のツボなどを聞いた。

——大学の研究者らとの連携のきっかけは。

熊倉 私は財団法人機械振興協会技術研究所に勤務していたことがあるので大学や研究機関の敷居は高くなかった。砥粒加工学会、精密工学会、日本塑性加工学会などのお手伝いをする中で、研究者らから装置について相談されたり、企業との橋渡しを頼まれ、大学との連携が次々と広がっていった。産学連携とビジネスは一体だ。

——自社製品の開発は下請け依存型経営からの脱皮が目的でしたか。

熊倉 もちろんそうだ。最初の大型製品は平成4年に売り出した海苔(のり)の自動切断機。その後、いろいろなタイプを出し、この分野では4割のシェアを占めている。10年前に開発した「超音波振動テーブル」は超音波を利用して穴あけ、溝加工、切断を行う機械のアプリケーションだ。加工する材料を載せたテーブルを1~6ミクロン縦振動させる仕組みで、工具側を動かす従来の方法に比べ、より微細な加工が可能になる。これを発展させたのが平成18年に市場に出した「超音波加振水槽付きテーブル」。水槽に入れた溶液の中で微細加工を行う装置で、大田区の中小企業を対象にした「第18回新製品・新技術コンクール」(平成19年2月)で最優秀賞を受賞した。超音波により溶液に発生する微小な気泡(キャビテーション)が加工点で破裂する衝撃が工具をドレスする。切れ刃の寿命が延び加工面の面性状を良くするので、品質が向上する。

——大田区では、大学などと連携した開発への取り組みが必ずしも活発とはいえないように感じます。

熊倉 まず零細企業が圧倒的に多い。経営者が若返った企業は一部だ。産学連携の掛け声はあっても、対象となる企業が少ないということだろう。

——経営革新の意欲を持っている経営者はどうすればいいのでしょう。

熊倉 チャレンジしたいけど、先が見えないという経営者が多い。だからこそ、今がチャンスだ。大学の先生は先を見ているが、企業に寄り添う気はない。企業人、研究者ともお互いに1対1では自信がない。ではどうするか。何社かの企業のグループが学会などと連携する形がいいのではないか。その際、目標が明確なこと、言い換えると、連携のストーリーが見えていることが前提だ。学会に専門委員会のようなものをつくり、周辺分野の研究者で「産業が見える」人にも入ってもらい、時代のニーズにあった取り組みをすることが大事だろう。行政がおぜん立てをしてくれる講習会、セミナーは産学連携の入門編としてはありがたいが、企業は技術を学ぶだけでは不十分。次の段階として市場ニーズを見られる研究者との交流へと進みたい。

——ありがとうございました。