2009年7月号
特集  - 多芸多才 繊維の素顔
信州大学 ナノテク高機能ファイバー連携・融合拠点
顔写真

大口 正勝 Profile
(おおぐち・まさかつ)

信州大学 繊維学部 特任教授、
ナノテク高機能ファイバー
イノベーション連携センター
副センター長

信州大学が現在取り組んでいる「ナノテク高機能ファイバー連携・融合拠点」という大型プロジェクトは、超微細加工技術、機能性材料設計技術を用いて、産学連携でイノベーションを創出することを目指している。照準とする領域は健康とエネルギーである。

信州大学の「ナノテク高機能ファイバー連携・融合拠点」プロジェクト(科学技術振興調整費「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成」プログラム)は、本学が追究している先進ファイバー工学、特に超微細加工技術および機能性材料設計技術と、協働企業12 社*1の「匠(たくみ)の技術」を融合させて「True Nano」によるナノテク高機能ファイバーを開発し、健康革命とエネルギー革新に資するイノベーションを創出することを目的にしている。

繊維学部に拠点の実務機関「ナノテク高機能ファイバーイノベーション連携センター」を置き、10 ~15 年先をにらんで以下の重点課題の下に研究開発を進めている(図1)。

(1) 社会的・経済的インパクトの大きな成果を目指し「快適・安全空間の創出」「健康生活実現」「革新的ナノファイバー製造・評価技術」などを出口として生活イノベーションを達成する。

図1

図1 「ナノテク高機能ファイバーイノベーション連携センター」の組織体制

(2) インフラを整備して試作製造機能をさらに充実させ、先進繊維開発の拠点(プラットホーム)を構築する。
(3) プラットホームの構築に連動させ、融合領域で幅広く活躍できる人材の育成と技術の伝承を実施する。
(4) 国際産学連携を推進する。

また、このプロジェクトには次の特徴がある。

1. 繊維を中心とする長い研究の歴史と実績のある信州大学と企業12社の連携

協働企業は12 社*1で、それぞれ独自の経営戦略の下に育成深化してきた「匠の技術」を有している。それらは高機能あるいは高性能高分子の設計・製造技術、スーパー繊維の製造技術、繊維製品の精密加工技術などであり、人々の生活密着分野だけでなく、時代のフロンティア分野にも生かされ活躍している。

2. 人事・財務・知的財産で学内特区扱い

学内特区とすることで迅速な拠点活動を実現し、協働企業の合意の下に知的財産バンク機構を構築して、知的財産の有効利用と協働企業間の無用な競争を回避している。

3. 研究機能は共通基盤研究とインスティテュートで行う開発との2本立て

ブレークスルー技術を大学研究者を中心にした共通基盤技術に設定し、研究を事業につなぐバトンゾーンとしてインスティテュートを構築している。インスティテュートでは、将来想定されるニーズや市場に対応できる多様な企業とのコンソーシアムを形成し、イノベーションにつながる事業形成を目指している。

4. 多様な研究者を採用し人材育成を推進

外国人や女性など多様な研究者を積極的に採用し「ナノテク高機能ファイバー特論」「スタディーツアー」などの融合領域人材育成の諸施策を実施している。

5. 試作品製造設備を保有し、順次拡充

拠点内に先進ファイバー紡糸棟を建設し、多目的溶融複合紡糸機を導入した。わが国の大学にこれだけ大型の製糸設備は類を見ない。ほかに多目的湿式紡糸機、電界紡糸機や各種の分析評価機器をそろえ、世界の先進繊維開発拠点を目指している。

*1
協働企業12社については図1を参照。