2009年8月号
単発記事
地域産学官共同研究拠点整備事業について
~事業の科学的推進に向けて技術経営手法の導入を~
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藤井 堅 Profile
(ふじい・つよし)

東京農工大学大学院
技術経営研究科
非常勤講師


平成21年度の補正予算において、日本政府は、地域産学官共同研究拠点整備事業として695億円の予算を配分し施行する計画である。巨額の予算であるだけにその成果の顕在化と成功が期待されている。そして、科学技術創造立国を標榜(ひょうぼう)する政策の中で重点的に展開されることから、本事業の推進と進捗(しんちょく)過程の説明が科学的に実践されることが求められている。

これまで、政府は、資源に乏しい日本が人類社会の中で名誉ある地位を占め、日本の未来を切り拓(ひら)く道は、独自の優れた科学技術を築くことにかかっているとして、20世紀末より科学技術を政策として活用している。すなわち、平成8年度からの第1期科学技術基本計画、平成13年度からの第2期計画、そして平成18年度からの第3期計画と「科学技術創造立国」を国家戦略として掲げ、数十兆円の予算を費やして展開してきている。

このたびの整備事業は、その中にあって科学技術システム改革の推進、いわば「地域における科学技術の振興は、地域イノベーション・システムの構築や活力ある地域づくりに貢献するものであり、ひいては、わが国全体の科学技術の高度化・多様化やイノベーション・システムの競争力を強化するものであるので、国として積極的に推進する」政策の一環である。

地域内外との連携などで課題

これまでの地域科学技術政策の成果は、人材の育成、産学官連携活動および地域内のマネジメント、地域内外との連携などの面で課題が多く、納税者、住民の目からすれば満足できるものではなかった。また、その進捗状況の説明も十分とはいえないとの声が多いことから、それを払拭(ふっしょく)することが求められている。

一方、経済産業省は、わが国の産業技術力を強化するために、平成19年5月に産業技術力強化法を改正した。すなわち、イノベーション・スーパーハイウェイ構想を法として明確にし施行するために、科学的な手法として技術経営手法を導入した。基本的な要素は [1]将来を展望して研究を行う [2]科学にさかのぼった研究を行う [3]異分野の知識を融合する [4]研究開発の成果を事業活動に生かす、などで、主として産業界向けの政策の施行と諸事業の進捗状況の説明責任を果たす科学的な手法として導入されたものである。そして、その普及に向けて、産総研法やNEDO法の改正までをも行って、技術経営力の強化に寄与する人材の育成と産学官連携活動への普及を実践している。対象が産業界であることから、このたびの地域イノベーションとはやや異なるものの、求められている本質的な内容は同じであることから、本手法を地域イノベーションの現場活動として展開される本事業に導入することを提案致したい。

昨今の世界的な金融危機、経済不況の下で、イノベーションの加速が叫ばれ、今やプロパテント戦略からプロイノベーション戦略への転換を余儀なくされる中にあって、本事業がかかる科学的手法によって経営され、関係者が満足する成果の創出と説明責任を果たすなど、あくまでも科学技術駆動型で展開されることを期待する。