2009年8月号
産学官エッセイ
医学と産業との接点をつくる仕事

小野 洋一 Profile
(おの・よういち)

独立行政法人中小企業基盤整備機構
チーフインキュベーションマネジャー
(千葉大亥鼻イノベーションプラザ)


写真1

写真1 千葉大亥鼻イノベーションプラザ



写真2

写真2 花粉暴露試験施設

千葉大学の亥鼻キャンパス(医学部、大学病院、薬学部、看護学部)に設置された独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)のビジネスインキュベーション施設「千葉大亥鼻イノベーションプラザ」(写真1)は、平成19年7月に運用を開始した。医薬系キャンパス内にこうした施設が置かれるのは珍しいという。立地の特性からバイオベンチャーが多く入居している。バイオ分野は研究開発に多くの資金が必要で、かつ実用化までの期間が長い。特に昨今の経済情勢で投資が活性化されていないので、体力に余裕の少ないベンチャー企業には厳しい状況が続いている。このような企業を支援するために、当プラザには設置主体である中小機構と千葉市産業振興財団からインキュベーションマネジャーが常駐して、地域と一体になったバックアップを実現している。

当プラザには、元気な企業が数多く入居している。その代表としてウェザー・サービス株式会社を紹介したい。社名の通り、本業は天気予報だが、当プラザには花粉症を治療する医薬品等の開発に必要な治験施設を設置するために入居した。すでにテレビなどで何度か紹介されているが、一種の密閉空間で、中に花粉症の患者さんが入りスギ花粉などを飛散させる花粉暴露試験施設(写真2)である。花粉症患者が花粉を吸うわけだから、当然くしゃみや鼻水などの症状が出るが、その際に花粉症に有効とされる医薬品やマスクなどの効果を実証する試験を行うことができる。

これまでは花粉が舞う季節に野外でしか実施できなかった試験が、1年中しかも安定した環境で実施できるという画期的な施設である。50名の患者が同時に入れる規模は、世界でも3カ所しかないとのことで、すでに医薬品企業からの依頼が殺到しているようだ。もちろん大学病院や医学部のしっかりした支援があって成立する、安全な試験である。

このほかにも、千葉大学の齋藤康学長の技術を実用化した脂肪細胞を用いた遺伝子治療に取り組むセルジェンテック株式会社や、元薬学部長の五十嵐一衛社長が脳梗塞(こうそく)の早期発見を実用化しようと起業した株式会社アミンファーマ研究所など、個性豊かな企業が入居している。医学と産業との接点で、どのような未来を創出できるのか、多くの方々と議論し、交流を深めていきたいと思う。