2009年8月号
編集後記

先日、第8回産学官連携推進会議においてナノテクノロジーが柱の1つとなっていた。

「ナノテクノロジー」の名称は、35年前に日本人が提唱し、1981年に始まったJSTのERATO「超微粒子」プロジェクトでも既に頻繁に使用していた言葉であるが、2001年に米国のクリントン大統領が国家戦略目標として以来、米国に主導権を取られた形となった。

環境・エネルギー分野においても、オバマ大統領が「グリーン・ニューディール」政策を国家戦略目標に掲げ、積極的に推進しようとしている。しかし、この分野は1974年以降、日本の国家戦略のもと、サンシャイン計画、ムーンライト計画等を推進し成果を挙げてきた分野である。日本が環境・エネルギー分野で世界に貢献できる可能性は大きい。

(編集委員・藤川 昇)

いよいよ議論が始まった第4期科学技術基本計画。大きな論点の1つが研究開発投資の戦略的重点化。ライフ、ナノテク・材料、IT、環境といったこれまでの科学技術「分野」ごとの重点化ではなく、われわれが直面する重要な政策課題の解決に向け科学技術に注力しようという議論もある。これは、産学官連携にとっては単なる技術シーズの分野の入れ替えではない。「科学研究」の段階から産学官、そして社会が取り組む課題を共有し、相互に触発、知識を蓄積しながら解決策を作り出して行く、そういった新たなプロセスが求められることになる。ジャーナルからもそうした新たな動きを発信できれば、と思う。

(編集委員・渡邊 康正)

研究開発成果が企業の事業に進まない—医療・生活支援ロボットのベーダ国際ロボット開発センター理事長の橋爪誠九州大学大学院教授の話を聞きながら、世界の最先端で活躍する研究者のいら立ちに共感できた。研究開発・産業の国際競争力はどうなるのかという不安についてもしかり。この問題を突き詰めていくと、「なぜ、日本は技術で勝るのに、事業で負けるのか」という課題にぶつかる。第8回産学官連携推進会議で妹尾堅一郎東京大学特任教授が投げかけたものだ。無論、研究者が解決できることではない。企業、産業界の役割が大きいとはいえ、責めを負わせるのも酷だ。行政を含め経済・社会システムの歯車がかみ合っていないからなのだろう。まだまだ課題の共有、議論が足りないように思う。

(編集長・登坂 和洋)