2009年9月号
特集  - 「起業」の心得
株式会社音力発電 代表取締役 速水 浩平 氏
最先端研究の3世代前のものしか事業化しない
顔写真

速水 浩平 Profile
(はやみず・こうへい)

株式会社音力発電 代表取締役



聞き手・本文構成:登坂 和洋 Profile

(本誌編集長)


株式会社音力発電は慶應義塾大学発のベンチャー企業。音や振動のエネルギーを発電に利用した商品の開発などを行っている。主力の音力発電分野では、現在取り組んでいる最先端の研究の3世代前のものしか事業化しない。そうすることによって、競合技術、競合企業に対する技術的優位を維持する作戦だ。

―音や振動のエネルギーを効果的に発電に利用しようというのは、実に面白い取り組みですね。どうビジネスに展開しているのですか。

写真1

写真1 パネルを踏むと電気が生じる「発電床R」
     システム

速水  技術は私の研究成果です。弊社は研究開発型の企業で、「音力発電TM」や「振動力発電TM」を中心としたエコ発電技術に関しての受託開発を行います。いろいろな業種の企業、官庁などからさまざまな依頼があります。コクヨオフィスシステム株式会社には、廊下のLED誘導灯や非常階段の避難誘導灯などに応用する目的で、足踏みをすると電気を生じる「発電床R」を使ったシステム(写真1)を納入。藤沢市役所の庁舎出入口には、「発電床R」で発電しLED が光り、電子ペーパーに発電量が表示される「ふじさわ発電ゲート」(写真2)を設置しました。

受託開発のほか、「発電床R」「振力電池R」「音力発電機TM」などの企業向けレンタル、さらにこうした電力を利用したイルミネーションの企画提案を行っています。イルミネーションのレンタルも受けています。

―会社設立から3年ですね。順調と聞きました。

写真2

写真2  藤沢市役所の庁舎出入口に設置した
     「ふじさわ発電ゲート」

速水  私が大学の修士1年の時に会社をつくりました。年間売上高は約5,000万円で、過去2年間は黒字です。ベンチャーキャピタルからの出資は受けていません。受託研究開発の事業では、現在、20弱のプロジェクトが進んでいます。

―収益構造の理由は?

速水  ものづくりを手掛けない研究開発、という事業内容による面は確かにあります。

―会社設立時に「売るもの」はあったのですか。

速水  会社をつくる前から、個人事業ですが、企業からの研究委託を受けていました。

―それも資金繰り、収益の理由なのですね。企業としての「事業ステージ」という視点であらためて見るとどうでしょう。

速水  2つあるでしょう。1つはコア技術の研究開発。いまひとつは実用化が見えている段階です。一部は実用化していますが。当社は「音力発電」については、現在取り組んでいる最先端の研究の3世代前のものしか事業化しないことにしています。

―競合技術、競合企業に対して技術的優位を維持するためですね。リードタイムはどれくらいですか。

速水  1世代ざっと1年として、3年くらいです。

―欧州諸国を中心に海外は自然エネルギーに力を入れています。音、振動のエネルギーは海外のほうが関心を持ちそうな技術ですね。

速水  メディアで報道された場合、海外のほうが反応が早いです。米、欧、中東、中国、韓国などです。しかも、行政機関などからの問い合わせ、相談が多い。海外展開は商社を通じても行っています。

―3年間でいろいろな人にかかわったと思いますが、どんな支援が良かったですか。

速水  メンター三田会をはじめ、会社の規模の割にいい人に支援していただいています。法務、財務はもちろんのこと、経営についても、また、個別の事業案件についても相談できます。

―ありがとうございました。

株式会社音力発電の概要
本社:神奈川県藤沢市
設立:2006年9月
代表者:代表取締役 速水浩平
資本金:100万円(2009年8月現在)
事業内容:[1]音力発電や振動力発電を使用した商品の開発、製造および販売 [2]化石燃料を使用しない高性能発電システムの研究開発および商品化 [3]省エネルギー技術の研究開発および商品の開発・販売 [4]利用者と自然環境にやさしいエコロジー技術開発およびシステム開発 [5]便利で使いやすいプロダクトデザインの開発