2009年10月号
単発記事
鹿児島大学におけるプログラムのライセンス状況 「教員免許更新講習管理システム」が大ヒット
顔写真

小池 保夫 Profile
(こいけ・やすお)

鹿児島大学 産学官連携推進機構
知的財産部門長・教授


鹿児島大学の平成20年度の特許等実施料収入は1,751万円で、プログラム関係がほぼ半分の871万円を占める。事務職員が中心となって創作した「教員免許更新講習管理システム」の販売が好調で、34の大学で利用されている。

鹿児島大学は、法人化に先駆け、2003年12月に知的財産本部を設置し、2006年4月には、産学官連携関係の他部門と連携強化を図り、産学官連携推進機構を構築した。これらの組織体制下で、知的財産ポリシーをはじめとして各種規則を制定するとともに、知的財産戦略、知的財産管理の推進・充実に努めてきた。

知財戦略が十分な広がりと成果に結び付くためには、全学的な知財マインドの涵養(かんよう)が必要である。そのため次の6つの知的財産啓発活動を実施してきた。[1]知的財産ホームページの設置と知財情報発信 [2]毎年1回学内外の関係者を対象とした知的財産シンポジウム開催 [3]毎年、教員、事務職員、学生、学外関係者を対象とした知財セミナーの開催(年5回)、また、事務職員に対する契約についての10回にわたる特別セミナーも別途開催 [4]知財関連のタイムリーな話題について各学部教授会において毎年知的財産の説明会 [5]新任教職員研修における知的財産の講義 [6]広報誌の発行。

また、知的財産部門のオフィスのないキャンパスでは定期的な発明相談会を開催することにより、教職員が気軽に相談できる機会を設け、活用していただいている。

大学の業務システムの知的財産化
図1

図1  鹿児島大学の平成20年度の実施料収入

知的財産の創造、保護、活用という知的創造サイクルにおいて、大学では特に知財の活用を図ることが重要となっている。ここで、鹿児島大学の最近の実施料収入について紹介する。平成20年度における実施料収入を図1に示した。本学の実施料収入は、総計1,751万円であり、内訳は、特許関係600万円、プログラム関係871万円、研究マテリアルほかが280万円である。

平成21年7月末、文部科学省が公表した平成20年度の大学等における産学連携等実施状況によると、本学の特許の実施料収入600万円は、当年度の日本の大学等の特許権実施等収入ランキングにおいて全国第28位である。

事務職員への知的財産啓発活動

平成20年度のプログラムの実施料収入871万円は特許実施料収入を上回り、本学の実施料収入の約50%である。大学等において、一般的にはプログラム実施料収入は特許実施料収入より少ないと思われるので、これは特筆すべきことと考えている。さらに、これらのプログラムには、教員のみならず事務職員が創作したものも数多く含まれている。教員、学生にだけでなく、事務職員に対しても、前述の各種知的財産啓発活動を継続的に行ってきたことの効果が出ているものと考えている。

事務職員を中心にシステム構築

最近、話題を呼んでいるのが「教員免許更新講習管理システム」である。平成19年6月の「教育職員免許法及び教育職員公務員特例法の一部を改正する法律」の成立により、平成21年4月から教員免許更新制*1が導入されることになった。本制度導入に向けて、本学では事務職員が中心となって本システムを構築した。

文部科学省は、本制度本格導入に先駆け、その実施に伴う諸課題の検証を行うため試行事業(教員免許更新講習プログラム開発委託事業)を実施することとした。本学は、その事業に応募し採択され、平成20年度に本学の開発したシステムを使用し、予備講習(試行事業)を行った。

その実績をもとに、文部科学省主催の講習会事例発表にて本学のシステムを紹介。その結果、多くの大学から本学のシステムに対するご意見、改善点などをいただくとともに、本学システムを導入したいとのお話をいただいた。そこで、各種要望に応え、バージョンアップし、ライセンスビジネスとすることとした。

システム運用で重要なアフターフォローを充実させるため、このシステムを鹿児島市内の業者にライセンスし、その業者がクラウドコンピューティングでのシステムを提供する。このため、ご利用いただく各大学内はシステム用サーバーを設置することなくシステムが利用可能であり、教員免許状更新講習の「独立採算制」に貢献できる。こうした点が評価され、本システムは、筑波大学など34大学でご利用いただいている。また、システム強化および改修は、保守契約内での実施を実現させるため、本学とシステム提供の業者とともに連携して行っている。

  このほか、次のようなソフトをライセンスしている。
・財務会計システム

国立大学の法人化に伴い、従前の国の会計制度と異なる企業会計原則にのっとった財務諸表の作成が必要となった。そこで、財務課の職員のノウハウと地元企業とで財務会計システムを共同開発した。このシステムを国立大学に続いて法人化した公立大学の熊本県立大学など6大学でご利用いただいている。

・汎用教務システム

学術情報基盤センターの教員が開発したWeb履修登録、電子シラバス、電子掲示板、ネット連絡、ネット申請、Web成績入力・閲覧、授業評価、学籍管理、成績管理、証明書発行などからなる汎用教務システムである。[1]大学が異なってもカスタマイズが不要で、[2]ユーザーの要望を十分組み込み使い勝手に優れ、[3]パフォーマンスが非常に高く、[4]導入・運用費用が極力抑えられる。本システムは、明治大学など4大学でご利用いただいている。

・学生健康診断システム

学術情報基盤センターの教員および保健管理センターの教員が共同開発した学生定期健康診断に関する検査日予約DBシステムと健康診断DBシステムからなるシステムである。学生による検査日予約、健康診断データ保存、閲覧・診断書発行、各種統計処理の生成・出力が可能。検査日予約DBシステムは、長崎大学でご利用いただいている。

*1
教員免許更新制は、その時々で教員として必要な資質能力が保持されるよう、定期的に最新の知識技能を身に付けることで、教員が自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を得ることを目指すものである。