2009年11月号
巻頭言
顔写真

宮本 洋一 Profile
(みやもと・よういち)

清水建設株式会社 社長




低炭素社会に向け積極的な技術貢献を

来月コペンハーゲンで開催されるCOP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)では、京都議定書で目標を定めた期間(2008~2012年)以降の地球温暖化対策の枠組みの決定へ向けた議論がなされます。それに先駆けて、わが国は先般の政権交代により、2020年のCO2排出量を1990年比で25%削減するという極めて高い中期目標に軌道修正し、それを世界に宣言するとともに、CO2削減に向けた積極的な途上国支援に乗り出すことも提唱しています。

地球規模でのCO2排出総量を削減するためには、米国や中国をはじめ途上国をも含めた大胆な削減目標が必要となります。現在、日本の排出量は世界全体の約4%に過ぎませんが、わが国は、国内でのCO2削減に加えて、これらの国々に対して優れた省エネ技術を提供することで、経済を減速させずにCO2の削減を目指す取り組みに、大きな貢献ができると考えます。

日本国内を見てみると、全CO2排出量の内、建設関連の排出量(間接排出量を含む)の占める割合は約3分の1あると言われています(内、建造物運用時の排出量が半分強)。その意味では、建設業はCO2排出量の削減に対して大きな役割を担っていると言うことができます。わが国の中期削減目標の実現に向けて、これまでも当社は空調や照明の省エネ化、日射や自然換気の効率的な取り込み、設備機器の省エネ化などの技術開発に取り組んでおり、その結果、先進的な建物では運用時のCO2排出量を、従来よりも50%以上削減できるレベルにまで達しています。また、太陽光発電などの自然エネルギーや種々の蓄電装置を有効に活用したマイクログリッドやスマートグリッドなど、個々の建物や住宅のみならず、地域や都市全体のCO2削減を実現するための技術開発にも注力しています。

また、より長期を見据えたCO2削減には、さらなる革新的な技術開発が求められます。例えば、CO2の排出がゼロとなる建物を実現させるためには、省エネや自然エネルギー利用を大幅に拡大させることに加えて、CO2の吸収や固定に関する画期的な技術開発・実用化が必要です。さらに当社は、こうした“カーボンゼロ”の先にある“カーボンマイナス”の都市構想をも提唱しています。そこでは、宇宙太陽光発電や海洋温度差発電などの先進的なエネルギー利用、廃棄物の完全再資源化、海水中のマグネシウムなどを成分とした構造材の開発、CO2の地中貯蔵や海洋隔離など、建設会社ならではのエンジニアリング機能を発揮して、各方面の最先端の環境保全技術を組み合わせ、活用することを想定しています。

こうした飛躍的なCO2削減を実現するためには、業界の垣根を越えた高度な技術の結集が必要です。そのためには産学官連携に加えて、政治が共に連携し、戦略的かつ計画的に人材・施設・予算等の手当てを行い、スピード感を持って技術開発を推進していくことが重要となります。低炭素社会に向けて世界をリードできる革新的な技術を生み出し展開できるかどうか。それが次世代のために今われわれが挑戦すべき大きな課題の1つであると考えています。