2009年11月号
特集2  - 第1回イノベーションコーディネータ表彰
イノベーションコーディネータ大賞・文部科学大臣賞 岡田基幸氏
少スタッフ、低予算で1つ1つ成果
顔写真

岡田 基幸 Profile
(おかだ・もとゆき)

財団法人 上田繊維科学振興会
理事兼AREC事務局長


●受賞理由
長野地域における産学官連携支援施設「AREC」を立ち上げ、産学官のネットワークを構築。ここを拠点として多くの事業化を推進し、若手コーディネータの模範となる抜きんでたリーダーシップを発揮した。

本年創設されたイノベーションコーディネータ表彰において、記念すべき第1回の大賞ならびに文部科学大臣賞を頂き、科学技術振興機構ならびに関係者の皆さまに心より感謝を申し上げます。また、AREC(浅間リサーチエクステンションセンター)の活動を支え、力をお貸しくださったすべての皆さまにお礼を申し上げます。

早いもので、私が上田市の職員としてARECの計画・運営に携わり、コーディネータとなってから13年がたちます。当時は信州大学繊維学部の博士課程に在籍し、学位取得を目指していた時期。ちょうどポスドク問題が取りざたされ始めたころでもあり、新たな生き方を模索する中では、大きな挫折感も味わったものです。しかし、担当教官のご配慮もあり、上田市役所職員1年生とドクター2年生という二足のわらじ生活がスタート。これが、私の原点となりました。

学位取得の過程で培った問題を発見し、課題解決に導く力は、ARECの運営に大いに役立ちました。コーディネータに必要な企画力・情勢分析力・実行力・発表力・資金収集力を養えたことも大きな武器となっています。また、学位を持っていることで研究者や技術者の皆さまが話をしやすい環境であることも私の強みです。「面白い男」という興味と「信頼できる男」という安心が活動を後押ししてくれた気がします。

ゼロを1にできた―地域産業活性化の種

今でこそどこにでもある産学官連携支援施設ですが、ARECができた当初は前例があまりなく、すべてが手探りでした。こうした状態では熱意と信頼がモノを言います。さらに大切なのは、自助独立した組織として永続的に事業を展開していくための体制づくり。そこで、ARECでは少スタッフ・低予算・並事業で1つ1つ成果を上げていくことを心掛けました。「着眼大局、着手小局」の精神です。こうして地域産業を活性化させる種がようやく今、でき始めています。各界から評価を頂ける案件も生まれました。とはいえ、新しい産業となるにはまだこれから。今ようやく、ゼロを1にできた状態であり、全国という土俵に上がったところです。これからが腕の見せどころ。次に何が出てくるのか、1番楽しみにしているのは私かもしれません。

コーディネータの職は、本当にロマンあふれる仕事。上田市のような片田舎であっても、世界に誇る素晴らしい科学技術の種がたくさんあります。こうした種を育てることで、日本を元気にし、地球環境に貢献したり、世界平和に寄与したりもできます。今回の受賞を通じ、若い方にこの職の魅力も同時にお伝えしたいと思います。

歩みを止めず、メッセージを発信し続けることが大きな意味をなす地域振興において、今回の受賞はARECの活動を内外に広め、ブランド力を高めるチャンスを頂けたと感謝しています。私自身、これからも現場にあるヒントを見逃さないよう、地域に密着し、仕事の質を落とすことなく高い志を持ってさらに邁進(まいしん)していきたいと思います。