2009年11月号
特集2  - 第1回イノベーションコーディネータ表彰
功労者賞 山口光彦氏
社会問題解決型のコーディネート活動へ
顔写真

山口 光彦 Profile
(やまぐち・みつひこ)

須坂市産業振興部
須坂市産業コーディネータ


●受賞理由
豊富な行政経験とその広範囲なネットワークを生かし長野県の産学官連携ネットワークを構築した。ナノカーボン分野では知的クラスターと産業クラスターをつなぐなど大型研究プロジェクトでも先導的役割は特筆される。

須坂市は、かつて製糸の町として、戦後は電子産業の町として隆盛を誇ってきたが、平成14年に至りリーディングカンパニーであるF社須坂工場の大幅縮小によって、製造品出荷額は半分以下に、従業者数も20%減少するなど地域経済に深刻な影響を及ぼした。大手企業を頂点とする産業構造の地域経済のけん引力が大きく失われたのである。

こうした事態から須坂市は、既存産業の革新による内発的な活性化を基軸に、持続的発展可能な産業の創出を目指し、平成16年に「須坂市産業活性化戦略会議」を設置し産業界が自主的に取り組むべきプロジェクトの推進を図るとともに、産学官連携の重要性に着目し、コーディネータ等5名からなる支援体制を整備した。また、外部からの知的刺激によって革新意欲の高進を図るとともに活性化の方途を探るため「須坂蔵の町並み元気スクール」を開催してきた。

関連セクターの連携が効果的

当初のコーディネート活動は、産学のニーズとシーズのマッチングなど新商品や技術開発に重点が置かれたが、進展する社会的構造問題に対応すべく、その活動領域や展開方向を拡大、進化させてきた。経済のグローバル化等によって在来産業の衰退は一段と激しく、加えて地球温暖化等の環境問題の進展、少子高齢化・人口減少等は既に顕在化し、これら構造的社会問題への対応は企業存続の条件になっている。そのような中、関連するセクターが連携した取り組みは効果的であり、また、その取り組みは個別企業の新商品やサービスなどの新たな事業を生み出す機会ともなる。

さらに、大学との知的連携により、地域の文化や産業資源を教育の場に活用しつつ中心市街地の新たな機能の創出を図る「蔵の町並みキャンパス事業」、組み込みソフトや金型等の基盤技術にかかる「人材育成事業」、農商工に観光、大学、行政、市民も加わった地域文化創造型の「フルーツスイーツ産業育成事業」などを行ってきた。

2期目を迎えた「産業活性化戦略会議」では、Safety and Ecologyを指向した農業、環境都市、生涯現役健康都市等の社会問題解決型プロジェクトの一層の推進が必要であるとしている。従って、今後の社会的課題にかかるコーディネート活動には、従来の工学的アプローチに加え社会科学的アプローチによるプロデュース能力や縦割り政策の複合的活用能力等ソーシャルソリューションコーディネートとも言うべき機能のさらなる強化が重要であり、同時にコーディネートパワーを十分発揮するための支援組織における位置付け等の検討も必要と考えられる。